Maxwellの方程式(6)〜訂正・新たな追記〜(’15/9)

1年前、多分、電磁波について調べている中で元のMaxwellの方程式で検索してい
て発見したのだろうと思いますが、偶然、ネット上にあった井口さんという方のpdf論
文(⇒スカラー波は存在するか?第一篇既知のさまざまな電磁理論・・@)を目にし
初めて、我々が習って来た「マックスウェルの方程式」がオリジナルのものでは
なくHeavisideによって書き替えられた"Maxwell-Heaviside equations"であること
を知り、(1)(5) まで書き連ねましたが、ふと思いついて久しぶりに再度検索して
みました。というのは、当時もちらちらとは覗いたりしたのですけど、最近、色々と調
べている中で、やはり、こういうことは日本語サイトより海外サイトにより情報がある
こと(理論発祥の地が全て西欧にあるゆえからだろうと思いますが)を知ったためで
す(外国語は英語さえも得意でないのですけど、興味の追求するためにはそんなこ
とは構っておられません(^_^;))。

やはり、最近気にしている正確な科学史は海外サイトの方が詳しいですね。
また、極めて興味深いウェブ論文も発見しましたし、ありがたいことに、1865年のオ
リジナル論文のpdfもありました。最近、そういう原論文などがあれば読むようにしつ
つありますので助かります。また聞きというのはどうしてもフィルターがかかりますの
で。

しかし久しぶりに検索してみましたが、日本語サイトでは1年前と同じ状況で不案内
なのか、同じわずか3〜4件のヒットのままでした。ま、日本では多くの方が、そんな
事実を御存知ない(私がそうでした)か、御存知でも全く気にも留めておられないか
のいずれかでしょうね。1年前でも、海外サイトでは"Maxwell-Heaviside equations"
という"term"が沢山ヒットしたものでしたが・・・

さて、"Maxwell's equations"に関する歴史についてはBeardenという方のウェブサイ
ト(⇒The Tom Berden Website・・A)に記載がありました。
すっかり思い違いしてことを知りました(^_^;)。以下に概要を示しておきます。

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 1865年  "primary theory"が出版される
       "A Dynamical Theory of the Electromagnetic Field," Royal Society
       Transactions, Vol. CLV, 1865, p 459

       (論文は1864/12/8にRoyal Societyの前で読まれている)
 1868年 理論を以前の力学からの導出の代わりに電気的導出を使用
       "On a Method of Making a Direct Comparison of Electrostatic with
       Electromagnetic Force; with a Note on the Electromagnetic Theory
       of Light," Philosophical Magazine, Vol. CLVIII, 1868.

 1873年 "quaternion"で拡張した論文出版
       Treatise on Electricity and Magnetism, Oxford University Press,
       Oxford, 1873

 1879年 Maxwell胃がんで(40代の若さで)死亡
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1873年の"quaternion"で拡張した論文は「its "considered too difficult" mathematics
and the residues of the "terrible quaternions"
」 ゆえに当時の科学界はもとより出
版者からも批判を受けてしまったためか、自も簡略化に取り組み、最終的には80%
も切り詰めたそうです。そして彼の死後・・・

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 1881年 修正版第二版(最初の9章分書き替え)が発行された
 1882年 修正版第三版がJ. J. Thomsonにより編集発行された
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しかしながら、彼の死後、80年代、Heaviside、Hertz、Gibbsらによって、更に大幅な
「切り詰め」が行われ、それが今では「マックスウェル方程式」の名で習っているもの
その実は"Maxwell-Heaviside equation"というわけです。結局、1873年の論文は完
全に無視されてしまったようです。ちなみに、HeavisideとHertzは元々は別々に取り
組んでいたようで、今の「Maxwellの方程式」は、"Heaviside-Hertz equation"とい
う呼称さえあったようです。
尚、Einsteinは"Special Relativity"の原論文(⇒ここで言及しました)の中で、
"Maxwell-Hertz Equation"と表記しています。そういう呼称もあったのかEinstein
独自の呼称だったのかはわかりませんが、どうやら、それ以後、Maxwellの名前が
「復権」したようですね。
Gibbsはベクトル解析法の確立(1880年代になされた)に尽力した方だそうで、この
"Maxwell-Heaviside equations"はその初期の適用理論(だから支持・支援したんで
すねぇ・・・)のようです。


というわけで、前にも一部は紹介しましたが、今回、1865年のオリジナル論文を入手
しました(残念ながら、1873年の方は入手できていませんが)ので、以下に、1865年
と1873年のオリジナル版、そして、現在の"maxwell-heaviside equations"を揚げてお
きます。

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1865年のprimary theory


は電流は電気変位は磁界*1
はベクトルポテンシャル*2は電界*3のそれぞれ
成分です。
オリジナル論文では、*1は"Magnetic Force"、*2は"Electromagnetic Momentum"、
*3は"Electromotive Force"とされています。また、
は透磁率(オリジナル論文:"Coeffcient of Magnetic Induction")
及びは電気ポテンシャル、は電界と電気変位の比(誘電率
及びは単位体積当たりの固有抵抗、
及びは電荷密度、は速度です。

ベクトル解析は1880年代に確立されたため、1865年はまだその表記法はありませ
んでした。ですから、オリジナル論文では20個の方程式になっていますが、ベクトル
表記法によれば、8個になります。
尚、(4)式右辺第一項は「ローレンツ力」であり、(6)式は「オームの法則」の一
般形です。
留意すべきは、ベクトルポテンシャルとスカラーポテンシャルが入っ
ていることです。

1873年の"quaternion"による拡張論文

こちらは手元に原論文がありませんので、上記サイト@と海外サイト
(⇒On the Notation of MAXWELL’sField Equations・・B)からの転載ですm(__)m


なんと、12個も方程式があります。
尚、前述の井口さんのpdf論文では、(10)、(16)、(18)、(19)式は
(10)⇒
(16)⇒
(18)⇒
(19)⇒
と異なっています。原論文が手元にないので、どちらがオリジナルのままなのかわ
かりませんが、多分、単位系の相違でしょう。
というような表記は、時間微分を表します。
mは磁気質量、Ωは磁気ポテンシャル場だそうです。要するに、mは現在の磁気単
極子(magnetic monopole)の持つ磁荷密度のことで、磁気ポテンシャル場はその磁
気単極子に作用するものということだそうです。なんと、Maxwellはモノポールの存
在を想定していたようです。

私は、この"quaternion"(クォターニアン)については不案内ですが、上記サイト
@Bに簡単に紹介がありましたので触れておきます。
"quaternion"は2次元である複素数を3次元に拡張したもので、1840年代にハミルト
ンにより創設されたものですが、その煩雑ゆえ、1880年代にベクトル解析法が確立
した後、廃れてしまった(但し、近年、衛星の姿勢制御等で回転を表すにはベクトル
法より計算が早いという事情から復活しているそうです)とのことです。日本語では
四元数」と称せられているそうです。

quaternionは
という形で表されるもので上式(21)のベクトル部(虚数部)については、
となります。(23)は「交換則は成立しない」ということで、ベクトル解析とは大きく異な
る点です。そして、「スカラー部」があることも特徴です。

Maxwellの1873年の論文内では、この"quaternion"を使って、三次元空間内の任意
のベクトルを例えばフィールドに対しては、
とおいています。そして、
(24)
(25)
とし、また、
(26)
としています(本来は、下記のような偏微分形式のものですが、当時は区別がなされ
ていなかったようですね)。
ちなみに、(26)式の左辺のですが、井口さんのpdfでとありましたのでこ
のように表記しましたが、上記の参考サイトではただ単に、と表記されています。

う〜ん、式だけ見ていても素養がないのでよくわかりません(^_^;)。

現在の"Maxwell-Heaviside equations"

わずか、4式です!
これが現在、「マックスウェルの方程式」と称せられているものです。ちなみに、
(29)、(30)式は条件にすぎず、ポイントは(27)、(28)式です。
留意すべきは、電磁ポテンシャル(ベクトルポテンシャルとスカラーポテンシャル)が
消えてしまっていることです。
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ところで、上記サイトAは"original maxwell equation"等で検索している中で見つけ
たサイト(⇒Hyperdimensional Physics・・C) でその名と主張が紹介されていたこと
から再検索して見つけたものです(以下、茶色で示した引用文のアンダーラインは
私がつけたものです。下手な和訳をつけておきます(^_^;))

サイトCに、

 ・・has been perhaps the most vocal recent proponent for
 restoring integrity to the scientific and historical record
 regarding James Clerk Maxwell -- by widely promulgating
 his original equations;

 (・・恐らく、最近、James Clerk Maxwellに関する科学的・歴史的記録
 を元のまま復元することを--彼のオリジナル方程式を広く喧伝する
 ことにより--最も声高に提唱してきた)

として、Lt. Col Thomas E. Bearden博士という退役軍人で科学者の方の紹介と語録
の引用がありました。彼はMaxwellのオリジナル論文を長年苦心して研究した結果、

 Maxwell’s original theory is, in fact, the true, so-called
 "Holy Grail" of physics ... the first successful unified
 field theory in the history of Science ... a fact apparently
 completely unknown to the current proponents of
 "Kaluza-Klein," "Supergravity," and "Superstring" ideas ..

 (Maxwellのオリジナル理論は、実際、真実で、所謂、「物理学の
 "Holy Grail"である・・・科学史上、最初の成功した統一場理論
 ・・・この事実は、現在の、"Kaluza-Klein," "Supergravity,"
 "Superstring"ideasの賛同者には明白に、完全に知られていない・・)

と結論付けたとあります。驚くべき主張です。

私は全然知らなかったのですが、ネット検索すると、その筋ではちょっと有名人なん
ですね。異端派ゆえ、やはりというか、「とんでもさん」「オカルティスト」扱いですね
("Free enregy"の分野というわけで・・・)。「電気重力理論」を提唱し続けて来られた
そうです。

CにはいくつかのBearden博士の語録が記載されており、ピックアップ転載しておき
ます。

 ... In discarding the scalar component of the quaternion,
 Heaviside and Gibbs unwittingly discarded the unified EM/G
  [electromagnetic/ gravitational] portion of Maxwell’s theory ...

 (quaternionのスカラー成分を破棄することで、HeavisideとGibbsは
  気づかないまま、Maxwell理論の統一EM/G[電磁力/重力]部分・・・
  を破棄してしまった)

これは、Maxwellの1873年の"quaternion"により「拡張」した論文に関する話です。
特にBearden博士が重要視しているのは、

  In the infolding of EM energy inside a scalar potential,
  a structured scalar potential results,

  (EMエネルギ−をスカラーポテンシャル内に包み込むことで、
   結果として構造化されたスカラーポテンシャルが得られる)

というように、「スカラーポテンシャル」です。それが、元々のオリジナル方程式に
はあったのに、今の「マックスウェル方程式」すなわち"Maxwell-Heaviside equation"
では「破棄されてしまっている」と批判しておられ、だからこそ、「オリジナル式の復
」を強く主張されておられるようです。

そして、Bearden博士はたびたび、Aのサイトで

 almost precisely as later shown by Whittaker but unnoticed
 by the scientific community.


と紹介されている英国の20世紀前半の有名な数学者であったE.T Whittakerという
方(⇒Wikipedia参照) が1903/1904年に出した論文

 ・the first was titled "On the partial differential equations of
  mathematical physics" (Mathematische Annalen, Vol. 57, 1903, p.333-335)

 ・the second, "On an Expression of the Electromagnetic Field due to
  Electrons by means of two Scalar Potential Functions"
  (Proceedings of the London Mathematical Society, Vol.1, 1904, p. 367-372)


に言及されているそうです。これらの論文は共にネット上にありました。
以下、ちらちらと読んだところでの簡単な内容紹介をしておきます。

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"the first"は、電荷がない所でのスカラーポテンシャルに関するLaplace方程式
   (31)
論文の中では、
   (32)
としていますが、これと一般形の波動方程式
   (33)
の数学的解を求めています。(31)式のφ及び(32)、(33)式のVはスカラーポテン
シャル
です。そして、(32)の一般解として、
   (34)
 ここで、
 の二つの関数引数の任意関数
(33)の一般解として、
   (35)
 ここで、
 
 の三つの関数引数の任意関数
を導出しています。尚(35)は単一の平面波に分解できることを述べています。
そして、距離の逆二乗に比例する重力や静電力のような力を考える時、(32)式を満
足し、したがって、(33)式を満足することになり、任意の点の揺動は時間に無関係
で距離だけに関与することになります。
すなわち、任意の点における全揺動はpoint-to-pointで変化し、時間的には変化し
ないということになります。

このことから、 Whittakerは

 "the field of force due to a gravitating body can be analyzed,
 by a spectrum analysis’ as it were, into an infinite number
 of constituent fields; and although the whole field of force
 does not vary with time, yet each of the constituent fields
 is an undulatory character, consisting of a simple-disturbance
 propagated with uniform velocity
... [and] the waves will be
 longitudinal (top) ... These results assimilate the propagation
 of gravity to that of light ... [and] would require that gravity
 be propagated with a finite velocity, which however need not
 be the same as that of light [emphasis added], and may be
 enormously greater ..."

 (重力体による力場は構成する無限の数の場のスペクトル分析により
  解析できる。全力場は時間とともに変化しないけれども一定場の各々
  は均一速度で伝搬する単一振動からなる波動性である。・・・
  波は縦波である・・・これらの結果は重力の伝搬を均一速度の光の
  伝搬と同じくしている・・・重力は有限の速度−しかしながら、光のそ
  れと同じである必要はなくより非情に大であろう−で伝搬することを
  要求している)

と結論づけています。重力も含めて見ている点が驚きです。

一方、"the second"は任意の数の電子が運動しているとき、結果として現れる電気
力学を定義する関数、すなわち、三つの電気変位成分と三つの磁界の強さ成分は
二つの「スカラーポテンシャル」(電子の電荷と位置で値が求められる)で表す事が
出来ることを示したもので、参考までに示しますと、二つのスカラーポテンシャルの
関数をF、G、光速をcとしますと、

スカラーポテンシャル
    (36)
    (37)
波動方程式
    (38)
    (39)
電気変位
    (40)
    (41)
    (42)
磁界の強さ
    (43)
    (44)
    (45)
となると述べています。(36)〜(39)は"the first"が参照されています。
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上記サイトCによりますと、これらの論文からBearden博士は、

"the first"⇒
 Whittaker theoretically explored the existence of a
 "hidden" set of electromagnetic waves traveling in
 two simultaneous directions in the scalar potential
 of the vacuum ...
 This key Whittaker paper thus lays the direct
 mathematical foundation for an electrogravitic
 theory/technology of gravity control.

 (Whittakerは理論的に真空中のスカラーポテンシャルの二
 つの同時方向に進行する「隠れた」電磁波の存在を説明し
 ている・・・
 このキーになるWhittakerの論文は、このように重力制御
 の電磁重力理論/技術の直接的な数学的基礎をお膳立て
 している)

"the second"⇒
 Whittaker demonstrated how two "Maxwellian scalar
 potentials of the vacuum" -- gravitationally curving
 spacetime -- could be turned back into a detectable
 "ordinary" electromagnetic field by two interfering
 "scalar EM waves"... even at a distance.

 (Whittakerは二つの「Maxwellの真空中のスカラーポテンシャ
 ル」−重力的な時空の曲り−がどのようにして、二つの「スカ
 ラーEM波」の相関関係により、検出可能な「普通の」電磁界に
 戻すかを論証した)

と主張しているそうです。

さて、折角、Bearden博士のウェブサイトがありますので、直接、主張を読んでみまし
た。記事タイトルは

 “Maxwell’s” vector equations taught in university are actually
 Heaviside’s truncated equations, and are only a simplified
 version of what Maxwell originally wrote.

 (大学で習うMaxwellのベクトル方程式は実際はHeavisideが切り詰めた
 方程式であり、Maxwellが元々書いたものの唯一の簡素化バージョンである)

ですが、比喩的表現が多く、英語力・国語力の乏しい私は詳細は点までは理解でき
ていませんけど、Berden博士は、現在の"Maxwell-Heaviside equation"に対して、
厳しく、

 It was not done by “sweet science”, but by sheer dogma and
 individual preference for “simplicity”.

 (それは“sweet science”によってなされたものでなく、ただのドグマと
 それぞれの「簡単化」の嗜好によってなされた)

と批判しています。それは、決して"Maxwell's original theory"ではなく、"Heaviside's
theory"だと断定しています。Heavisideは特にベクトルポテンシャルを毛嫌いし、式か
ら長年、計算の簡単化のための「仮想的なもの」とされてきたベクトルポテンシャルや
直接観測にかからないスカラーポテンシャルなどを消し去って、観測にかかるものだ
けで式を構成することに情熱を傾け、出てきたのが現在の式だという話を他のサイト
で目にしましたが、そういう意味では「ドグマ」であり「嗜好」かもしれません。
ただ、他のサイトで目にしたのですが、この式の簡略化の過程で、quaternionのスカ
ラー項も消してしまったという批判があり、私には詳細まではわかりません。
しかしながら、複数のサイトで、

 Maxwellのオリジナル式はNon-linearであるが、現在のマックスウェル
 方程式(すなわち"Maxwell-Heaviside equations")はlinearである


と述べられていて、これは明白に、両者は等価ではなく、「切り詰め」がなされてい
ますよね?現在の科学界ではHeavisideの仕事を称賛している向きが見られますが
(そういう意見がネットにありますから)「真実を見落とす悪しき改ざん」になった
恐れは十分ありえます。しかも、その「改ざん」は肝心のMaxwellの死後に、Maxwell
の意向・意見も聞かないままになされたのですから・・
当然ながら、Maxwell自身の真の概念・思いがうっちゃられてしまっている可能性が
ある気がします。Maxwellはファラデーの講義を聴いた後、6年かけて研究し、あの
1865年の"primary theory"を発表したようです。

Maxwellと言う人はここで紹介しましたように数学は得意でしたけど、単なる「理論屋」
ではなく、実験物理学の教授で、創設されたキャベンディッシュ研究所の初代所長
について、隠れていたキャベンディッシュの数々の先駆的実験(クーロンの法則や
オームの法則などもずっと以前に発見していた)の再現実験を行った方ですし、物
理的イメージの描写にも優れ、なんと、19世紀に既に、ベクトルポテンシャルの実在
性を信じ、その物理的イメージまで描いていた方です。その上、あの変位電流は彼
の天才的側面が現れたことだと考えますから、きちんとした概念の元に導出したも
のだと思うのです。また、気がついておられる科学者も多いようですけど、Maxwell
は明確に"ether"を理論構築の背景にしています


渦流の理論を参考にして出したという理論の導出もそうですし、Maxwellの応力テン
ソルもそうですし、「変位電流が真空中も流れる」としたのもそれが一つの根拠では
ないでしょうか?大半の人は、"ether"(近年は"Aether"と書かれたりするそうです)
というと1887年の「マイケルソン=モーリー実検」と1905年に発表されたEinsteinの
"Special Relativity"で否定されたものとして拒否反応を示されると思いますけど、あ
んなものは、19世紀にLorentzらが信じたところの「単に光を伝達するだけの役割が
与えられた静止エーテル(フレネルの静止エーテル説)」概念が否定されただけに
過ぎず、未だに、「真空はempty」などと信じているなら完全に「時代遅れ」です。
物理学者は変な拘りからか"ether"という語彙を使いたがらないようですが。

ま、上記サイトBではこの1873年のものは、元々のものの(23)式が抜け落ちている
と批判的ですが・・・確かになさそうですけど、浅学非才の私にはよくわかりません(^_^;)。
また、Beardenはこの1873年のTreatiseを「有名な」と言っていますけど、海外掲示板
みたいなところでは「有名じゃない」とけなす意見もありました。ま、日本ではほとんど
知られていないのは確かですけど、海外でもそうなのかと・・・

後、もう一つBearden博士らが問題にされているのは、Lorentz guage
です。思うに、ベクトルポテンシャルが仮想的なものと考えられてきた時代の遺物で
はないかという気がしてなりません。とにかく、式を簡単化して解こうというためのも
のですから。今や、存在が実証されましたから、考え直す必要性はないでしょうか?


ただ、Maxwellと時代が重なるNichora TeslaはMaxwellの論文又は概念を知っていた
のか、"longitudinal stress"の大掛かりな観測実験をやったそうで(コロラドの山の頂
上に大掛かりな送受信装置を置き、西部の寒冷前線の雷雨の中での実験でそれを
観測し、"standing columnar wave" と名付けたそうですけど、この主張も「何かの間
違いだろう」と科学界権威筋から一蹴され無視されたようですね。

ネット見ていると、科学者は「観測にかからない物は否定的」と言われますが、じゃぁ、
「スーパーストリング」はどうなの?と言いたいですね。極めてダブルスタンダードな
んです。要するに、「権威が理解できないもの」を否定するだけじゃないかと思います。
19世紀の科学界は「天才」Maxwellが理解できなかっただけじゃないでしょうか?
そういうのがそのまま綿々と続いているのです。「天動説」時代から一貫して変わらな
い状況ですね。
どうやら、前述のE.T Whittakerの論文も無視されたままのようですね。


検索している中で、つい最近、2011年に海外で出されたウェブサイト論文とパワーポ
イントのpdfを発見しました。
longitudinal dielectric waves in a tesla coil and wuaternionic maxwell's equations
teslasociety.ch
というものです。
内容は、「『テスラコイル』を用いてスカラ波を検出した」という実験結果論文です。
著者はイタリアのRoberto Handwerker(工学博士)という方で、肩書きは
 DELTA Ingegneria of engineer/a consulting proffesional in advanced
 electrotechnics,thermodynamics & energetics,also techinical advisor
 to italian Judges
だそうです。
パワーポイントpdfの方に"Teslasociety"とありましたので、ちょっと調べてみました。
Teslaが活躍した米国、故郷のユーゴスラビアそしてスイスにあるTeslaの業績をたた
え、意思を受け継いで彼がやっていた研究を発展させようという組織のようです。
アカデミズムは頑なに認めようとせず無視を決め込んできていますけど、彼の後年
の「無送電線送電」は一部で「テスラ波」と称せられている"longitudinal wave"による
ものとTeslaが主張していたものです。前述のコロラドでの実験はその実証観測試み
だったのですが・・・

ところで、本論文に注目すべき論文引用がありました。
そのまま引用しますと、

 For the complete calculation reference is made to Arbab A.
 & Satti Z., and it will be readily shown that according to
 their work, Maxwell' equation could be simply expressed in
 the quanternonic form by the following two equations:
 


    (46)
    (47)
この"Maxwell's equations"は現在のいわば"Maxwell-Heaviside equations"のことの
ようです。ベクトル解析はquaternionから記号を流用したりしていますので注意が必
要です。EBJはベクトルでなくquaternionということです。
この引用論文は、

 Arbab I.A. & Satti Z.A. "On the generalaized Maxwell equations and their
 prediction of electroscalar waves
",Omdurman University ,April 2009.


とのことですが、なんと"electroscalar waves"という語彙が・・・。
以下、書かれている理論の続きを示します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一般的な「スカラー場」"Σ"を導入すると、その結果としての電流密度は
と書くことができ、次の新しいゲージ変換を考えることができる:
    (48)
    (49)
そのとき、スカラΣは次の波動方程式を満足する:
    (50)
これより、電荷密度ρと電流強度は光速で伝達する。
Maxwellの法則は(46)、(47)式の特別の場合である。
それで、このことは、スカラー波分布は、たとえ、電荷や電流が粒子域になくても
電荷密度   (51)
電流強度   (52)
を誘導することを示している。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どうやら、やはり、Maxwellがやった"quaternion"による拡張というのは意義があった
すなわち、Heavisideがやった「ベクトル解析法」では重要なものが抜けてしまってい
るということなのでしょうか?折角、数学の大家のハミルトンが創設したのに、わず
か40年くらいで後から確立された「よりわかりやすい」ベクトル解析法の前に廃れて
しまったかのようですけど、近年の姿勢制御での復活などを考えると、その重要性が
気がつかれていない気もしますね。

尚、本論では、「通常の電磁波とは異なる」ことを明確にしながらの実験であり、実
証観測を絶対条件と考えている私には極めて説得力がある論文です。

結論で、

 Not suprisingly these empirical results could,according to
 other Authors,be supportted from a physics and mathematical
 point of view by the introduction, instead of today's
 (Heaviside) vector form, of the (original) quaternionic form
 of Maxwell's EM equations which, as could be clearly seen,
 do predict the possibility of the exsistence of scalar
 dielectric fields and of longitudinal dielectric waves besides
 the well-known transverse EM waves.


と書かれています。そして、その前の方で・・・

 In any case it is useful to remember that any scientific theory
 is valid as long as it will not be contraducted by empirical
 obsevation, experimental or reaeach....


全くその通りです。(’14/4)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
MaxwellがMaxwellの方程式を作るきっかけになったのはFaradayの講演を聞いた
ことによりますが、そのとき、磁気と電気の関係を実験的に見出したFaradayが、
両者の元になるものがあるはずという示唆をし、それを受けて、Maxwellはベクト
ルポテンシャルの存在を信じたそうです。 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(追記 ’14/5)
1865年の最初のオリジナル論文を読んでいます。ちょっと「くどい」ような文章の
気がしますが・・・(英語力の劣る私だけの思いかも(^_^;))。

1865年の論文はそのtitleからも伺えますが、電磁現象を"Dynamics"とのアナロ
ジーで論じていて、"elasticity"とか"the motion of medium"という概念が出てき
ます。
で、やはり、Maxwellはvaccumをemptyではなく一種の"medidum"と考えたようで、
"aether"を想定していましたなぁ。"aetheric medium"などと明記しています。
そういう意味から、「変位電流が真空中も流れる」としたのはひらめきなどでは
なく、Maxwellにとっては、当然の論理的帰結だったわけですね。
むしろ、私はvaccumをemptyとした上での今の「電磁気学」の説明はおかしいの
ではないかと思います。なぜなら、なぜ「emptyなvaccum」に場(field)が形成
されるのかについての明確な理由が説明できていないからです。「空間の歪」な
どというのは「脳内概念」でしかなく、本当にわかっている説明とは到底思えませ
ん。要するに『言葉』でごまかしているだけに過ぎないと思うのです。
Maxwellの論文に出てきた"transparent medium"なら説明がつきますが・・・
(Maxwellは"aetheric medium"を単なる"light and heat"を伝えるだけのものとは
考えていなかったようですが、賛同を得られなかったらしいですね。
                            (’14/4)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(’14/6)(追記)
調べてみたらMaxwell自身は横波電磁波しか考えていなかったようですね。
Bearden博士はどこから"lonngitudinal wave"導出したのでしょうか?

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