Maxwellという人
前の方の項でMaxwellのオリジナルの方程式について調べたこと、考えたこと
等について書いていますが、今、私はすごくこの方に興味を抱いています。
検索の下手な私ですので、ネットからはあまり情報を得られていないのですが、
Wikipediaによれば正式の名前はJames Clerk Maxwellで、スコットランド生まれ
の英国人、1831年生まれ、1879年没とありましたから、なんと48歳の若さで亡く
なられたようですね。1879年没ということはHertzによる電磁波発見はもとより
Heavisideにより書き替えられた式が現在まで「Maxwellの方程式」として流通し
ているなどというのは知らずに亡くなられたということですね。
Maxwellは「数学が得意なうえ、物理的イメージを描くのに優れていた人」という
話を目にしていたのですが、私がもう一つ注目しましたのは、1871年にケンブリ
ッジ大学の初代の実験物理学教授に就任にしたということです。
世間との接触を極端に嫌った、今の言葉でいうならば「閉じこもり」貴族のキャベ
ンディッシュ(クーロンよりずっと前に既にクーロンの法則を実験で確認していた
とのこと)の隠された実験ノートを入手、キャベンディッシュ研究所を設立して、
初代所長になったこと、その実験ノートに記載されていた様々な実験を自ら再現
し確認したという話を目にしていましたので、「なるほどなぁ」と思うとともに、
数学に秀でているのに、理論オンリーではなかった人とわかり、これこそ真の科
学者だと私は高く買いたいですね。
さて、私は当時の時代背景に不案内のまま、ここなどでネットで調べたmaxwellの
オリジナル式の事を論じたのですが、Maxwellが一連のマックスウェルの方程式を
発表したのは1860〜1865年頃に渡るということ、そして、どうやらベクトル解析の
方法が確立したのは1880年頃ということから、元々のオリジナル式は各軸成分で
の表現されたものだったということが理解できました。
マックスウェルは更に四元数(クオータニアン)での「拡張」もしていたそうですが、
そもそも、この四元数というのは1843年にハミルトンが創設し、学校まで作って広
めたそうですけど、前述のベクトル解析が確立して以降、廃れ忘れされた形にな
っていたのが20世紀になってから回転を簡便に表現できるとして衛星の姿勢制
御などへの適用で復活したとのことです。
ま、いずれにしろ、マックスウェルの生存中はMaxwellの方程式も彼が示唆した電
磁波の存在も当時の科学界からは無視された形になっていたんですね。
ベクトル解析法が確立し、研究が進んだ今でこそ、電磁気学の教科書では、それ
でヘビサイドが書き替えたマックウェルの方程式が導出できるような風になって
(勿論、変位電流の考え方はMaxwell功績としての明記されてはいますが)います。
皆、「マックスウェルの方程式は『ファラデーらの電磁誘導の一連の実験』をまと
めたもの」というような説明をされていますから、Maxwellの功績として重視されて
いるのは変位電流が追加された式
だけで、他は一連のベクトル解析で求められたように思えてしまうのですけど、前
述のようにマックスウェルが生きていた時代にはまだベクトル解析法が確立して
おらず、実際、Maxwellは前述の項で示したように、全く異なる思考でオリジナル
の方程式を導出していたわけですから、こうやって時代背景を含めて考えてみれ
ば、私はMaxwellという方のすごさは単に変位電流の考え方の導入だけに留まる
ものではないと思うのです。すなわち、ちょっと不当に
低く評価されているのではないかと。
なにせ、1985年にやっとこさ故・外村博士の素晴らしい実験で証明されるまで綿々
と仮想的なものと考えられてきたベクトルポテンシャルを電磁気学自体がまだ発展
途上にあった19世紀に既に実在するものとして物理的イメージまで描いておられた
ということはすごいことじゃないかと思うのですがどうでしょうか?
ところで、実は、私の教科書にもあったのですが、上記の変位電流を入れた式は、
元々、コンデンサ放電回路などの「導線」のある電気回路で考えられたものですけ
ど、Maxwellはそれを「天才的ひらめき」で導線回路でなく真空自体に成立するもの
と考えたそうです。
実はもう一つ、次式で与えられる「Maxwellの応力テンソル」というのがあります。
元々は誘電体に関する一連の研究からもののですが、Maxwellはこれが「真空中」
で成立すると主張したようです。
しかしながら、我々現代の凡人がちょっと考えると、「真空中に応力?なにそれ?」
ではないでしょうか?「応力テンソル」というのは物体に関する「材料力学」で出てく
る概念ですよね。内容は不案内ですが、WikipediaによればMaxwellは「偏光による
弾性ひずみの研究」で学位を受けているそうですから、材料力学の素養は確かな
ものだった感がしますけど。
教科書にはちらっと触れてはいましたが、よくよく考えてみたら、Maxwellの時代って
まだ、科学界で『静止エーテル』の存在が信じられていた時代ですよね?
そういう時代背景があったからこそ、「変位電流の入った式が真空に対しても成立
する」とか「真空に対して応力」などという発想が出来たのではないかと思うのです。
ただ、マイケルソン=モーリーの実験で『静止エーテル』の存在が否定された(こと
になっている)現在でも、このMaxwellの業績結果はそのまま生きていますね。科学
者はどのように自分でつじつまわせして御理解されているのか不案内なんですが・・・。
ひょっとすると、19世紀の「光の伝達媒体」としての「静止エーテル」とは異なる概念
(その実は科学者により千差万別のイメージの「曖昧」な存在のものではあるが)エー
テルを考えているのかもしれません。ま、現代物理を象徴している「何なのか」は問
わず「現象のつじつまわせ」が主流である現在、科学者にとっては「そんなことはどう
でもいいこと」なのかもしれませんが、私はそれでいいのかなぁ、そういうスタンスは
どこかで極めて重要なことを見落とす結果になるのではないかなぁと思います。
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