思い込みvs「正しい『論理の輪』」(STAP騒動)


別のコーナーで、海外ミステリー作品についてガストン・ルルー「黄色い部屋の秘密」
というarticleをしたためましたが、その中で、探偵役の推理力の鋭い青年新聞記者が
述べている言葉、「正しい『論理の輪』(※1)」というのが気に入りました。というか、
これこそ真実を見極めるのに大切なものだと強く感じた次第です。

作者のガストン・ルルーは弁護士となってからも「レコードパリ」で裁判記事などを担当
され、その後、大手新聞社「ル・マタン」に入社され、日露戦争の担当など、海外ジャー
ナリストとして活躍された方だそうです(本の著者紹介による)。


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(尚、以下は本項を起こすためにどうしても必要で、ネタバレになってしまいますので、
この本を読んでいないミステリーファンの方は読まない方がいいと思います。)

恐らく(私の勝手な推測ですけど)、そういう経歴の中で磨かれた感性が、この作品の
中の探偵役の青年新聞記者ルールタービュに(※1)を言わせたものだろうと思います。
小説の中で、ルールタービュは「目に見える『証拠』」であっても『論理の輪』に入らな
いものを『証拠』としてしまうと事件の本筋を誤ってしまうというような(そのままの
言葉ではなく、私が勝手に要約しましたが)ことを鋭く言及し(小説の中では警察側が
それに惑わされてしまっていた)、また、「正しい『論理の輪』」だけの追及で、裁判に
かけられた無実の人(ある事情で自分の無実に繋がる真実を話せなかった)の無罪
と「人情的には信じられない」と言う風にルールタービュも悩んだけれども、「正しい
『論理の輪』」に導かれた驚くべき真犯人の名を裁判の場で明かしています。
人々に「思い込み」がなければ、容易に論理的に彼しかいないことがわかるわけです
が普通は「誰一人、疑いすら浮かばない」事件だったという事です。
ネタバレついでに言ってしまいますが、真犯人は、数々の難事件を解決したとして、
「名刑事」の誉れが高く、この事件の捜査にロンドンから呼び戻された刑事だった−
実は、偽名で警察にもぐりこんでいた、小説の中では警察が捕まえきれなかった有名
な大悪党だった−というお話でした。尚、なぜ被害者女性(幸い殺されず命は助かっ
ていますが−これは実は「殺人未遂事件」ではないのですが)と無実の罪で裁かれよ
うとしていた婚約者が真相を語ろうとしなかったかというのも後から種明かしされま
す(それが、裁判でルールタービュがすぐに犯人の名前を語らず、その間に逃亡した
−真実を知ったルールタービュがその真相を被害女性の名誉のために隠し、犯人と
取引きして逃がした−理由でしたが)。

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なぜ、こんな小説の内容をネタバレ的に紹介したかといいますと、つい最近の事件で、
まさに、タイトルの「思い込み」vs「正しい『論理の輪』」ということにぴったりくるも
のを現在進行形で目にしていたからです。

それは、本コーナーでは事実だから反論できないのか<「あの日」で、そして、もう一
つのコーナーでは、「科学も主観の世界であった」ことを示したSTAP騒動の項と
「私が思うSTAP騒動の問題点(’16/4)の項で扱ったSTAP細胞騒動でf触れました
STAP細胞事件です。

今年1月末に発売された小保方さんの私記「あの日」が、当初の悪意に満ちたどうや
ら読みもしないでの酷評が沢山出てきたにも係らず爆発的売れ行きで(私もやっと手
に入れましたが、既に第四刷でした)あったということは、マスコミ・メディアにより一方
的に報道され、ネットで拡散されてきた事の成り行きや、その決着自体に不自然さと
割り切れなさを感じていた一般国民が多かったことを如実に示しているものと思いま
す。そして、既に書いたように私自身もその一人でした。小保方さん擁護というより、
拡散されていたことが真実と言うのには明確に提供されてきた材料が乏しいと推理力
の劣る私でさえ感じたのでした。

きちんと事件の履歴(関係者の発言、発表など)を整理し、「正しい『論理の輪』」を基
に不偏不党で冷静に分析したとき(そのような分析をされている方達の主張を目にし
ています)、未だ、「STAP細胞は捏造だった」とか、「ES細胞が混在していたものだ」と
か「小保方さんが捏造した」とか「小保方さんがES細胞を盗んで混在させたのだ」と
かいう証拠・根拠は出てこないのですが、事件当初から、既に「反小保方」感情の渦
が渦巻いていて、日本人がすぐに巻き込まれやすいそういう風な「風」がいかにも「真
実」であるかのようにされてしまったことは冷静に考えてみれば明白ですね。
そして、一方的に隠されてきた小保方さん側の情報は、確かに小保方さんの一方的
主張かもしれませんが、それでも、私にとっては意外なほど冷静に書かれている感が
しているこの本は、彼女自身に関する恥も含めての事象と、彼女自身の感じた疑念か
らある程度、私の中にあった、不自然さの欠けていたパズルの破片を補ってくれたも
のでした。

私が抱いた「不自然さ」というのは、既に書いたように、単純な感想でして、本件につ
いてネットで始まった当初のネット民の言説が、最初の論文のコピペ暴露だけで、
「STAP細胞などない。小保方が捏造したのだ」という論調一色だったことへの不信感・
不快感(なぜそこまで決めつけられるのか)と、もし彼女が確信的捏造科学者だった
らどうしてもおかしい(信じられない)「自ら再現実験に参画することを希望された」とい
うことでした。世界三大捏造事件だという決めつけがなされていますけど、既に書いた
ように、世界を揺るがせた二つのねつ造事件では、捏造した科学者(一方は大学院生
でしたが)は共にすぐに逃走していましましたよね。
そして、それよりもなによりも、ぐ〜の音も言えない、捏造したことの明白な証拠が出
ていたのです。

しかるに、本騒動は、彼女自身が先に気が付いてnatureに修正を申し知れていたコピ
ペミスまで「論文捏造」だという印象操作がなされ、早いうちに「小保方は論文捏造を
したとんでもない科学者だ」という決めつけ・思い込みが広がってしまいました。
一旦、そういう風に作り出されてしまった人間像というのはそれに疑念など持たない
人々の心からはなかなかから抜けられなくて、その後は記者会見にしろ、全てそうい
う「思い込み」の中で報道され、皆がそういう風にいわば誘導されてしまったわけです。

そういう「風」が一旦できてしまうと、もう「正しい『論理の輪』」での冷静な判断などで
きず、イケイケどんどんで行くところまで行ってしまうというのが実情ですなぁ。
だからこそ、冷静にきちんと分析していくと矛盾が出てくる理研の公式発表もあまり問
題にされないで、「STAP細胞は小保方単独捏造のもの」とういうきちんとした絶対的証
拠の無いまま決めつけ査定がなされてしまったのです。

まだ、インターネットがブロードバンドになって定着以前に起きて、ちょろっとテレビから
の情報だけで間違った判断をしてしまって亡妻にこっぴどく非難されたのでしたが、「松
本サリン事件」もまさに当初、当時の警察の思い込みとそれに乗っかったマスコミ・メ
ディアの印象報道でなんと事件の被害者の夫の河野さんが犯人みたいに騒がれまし
たよね。あれ以来、私は深く反省して、簡単にそういうマスコミ・メディアが作りだす風
潮を信じないようになっていました。
これが、私がマスコミ・メディアに最初に不信感を抱き始めた発端だったんです。

で、とても不思議だったのは、「科学ジャーナリスト」の態度でした。
私は、改めてがっかりしてしまいました。「科学」と名がついていても、(私がずっと感
じて来た)「ゆがんだ正義感と自己のイデオロギーで歪曲してためにするような報道を
し、自分たちの行動は『正義のため』だという錦の御旗の元、法を越えて全て許される
のだ」というとんでもない勘違いをしている一般のジャーナリストと思考も行動も全く変
わらない」ことを思い知らされました。
むしろ、それを「科学」という「錦の御旗」を掲げてやってましたから、私に言わせても
らえば、科学と言えば一目置いてしまう一般下々を誑かしている点で、卑怯かつ、「よ
り悪質」だということです。

そもそも、日本「科学コミュニティ」は最初から、ネットサーフィンしていればしがらみの
ない人なら誰に目にも明らかなように、

 権威及び権威側の科学者には殊更甘く、権威の後ろ盾の
 ない科学者には殊更厳しく、場合によってライバルや不都
 合な科学者を落とし込める武器に使ったりしているすなわ
 ち極めて、『恣意的』に運用・適用されてきた「日本科学コ
 ミュニティの『むらの掟』」


でしかないものを、錦の御旗のことく掲げ、「一般下々は御存じないが、彼女は、そう
いう「科学における一番重要なこと」への違反をしたとんでもない科学者なのだという
ような印象攻撃をその筋の「大学キョージュ」もメディアに颯爽と出てきてやりまくった
そうですね。で、科学ジャーナリストも右倣えでした。

結局、そういう「思い込み」で、何も後ろ盾もなく権力もない一介の若手の女性科学者
が、絶対的証拠もないまま、描かれたストーリに都合がよい事象発言だけを繋ぎ合わ
せた形で「捏造科学者」だと断罪され、合わせてSTAP細胞も葬りさってしまった事件
だったと言えましょう。

ただ、この事件は「小保方さん同情論」では真相は見えてきません。私も間違いなく、
一部でささやかれているように組織防衛のために明らかに迷走した理研だけでなく、
「日本科学コミュニティ」の反小保方派・反笹井派・反STAP細胞派がマスコミ・メディア・
科学ジャーナリストを躍らせての研究結果潰しだろうと推測しています(これも証拠な
どありませんので断定しているわけではなく推測でしかないのですが)、それは不思議
な動きを目にしていて、また、繋がりなどが少し表面化しているからです。

ま、恐らく、かなりが闇の中に消えてしまうだろうと思うのですが、少なくとも、「正しい
『論理の輪』」で解明していくべきだと思います。もし、私が考えているように、彼女は冤
罪で組織防衛のためのエスケープゴートにされたのなら、少なくともそれだけは晴らし
てあげるのがそれこそ正義ではないかと思うのです。
「あの日」の中では、自分のしてしまったミスや、知らないまましてしまった「日本科学村
の掟」破りが多くの方達に多大な迷惑を与えてしまったことを深く謝罪しています。
しかし、ご本人自身は納得されていませんけど、理研からだけでなく、博士号もはく奪
されて「日本科学コミュニティ」から追放され、「科学研究者」という地位を無くされたの
は疑いようのない事実ですよね。

今年になって、私記「あの日」の出版とそれに対する評価増加、並びに3月の終わりに
アップされた全文英語のホームページ以降、明らかに目立った科学ジャーナリストの
反論・個人攻撃等は激減している感がしています。「あの日」の中で名指しされた方々
(4人の弁護士さんがついておられるゆえ、大丈夫という判断があったのでしょうね)
がだんまりを決め込んでいることも一つの要因だろうと思うのです。
本人でない連中が、いくらその「だんまり」を弁護しても、世間から見れば、もし嘘であ
れば強烈な名誉棄損なのに、だんまりを続けているというのは事実であって、反論も
できないのだろうと判断されてしまうのです。うがった見方をするなら、下手に法に訴
えるなら逆に自分自身に更に隠されている不都合が出てきてしまう恐れがあるからか
もしれませんけどね。

ま、小保方さんの反撃による反対向きの風の中で分の悪さを悟ってだんまり(モノ言え
ば唇さむし)を決め込んでいるのかもしれませんね。
相手に権力の後ろ盾がないことをいいことにして、人権無視の言いたい放題のいけい
けどんどんをやっていたわけですから。

私はあの全文英文の"STAP HOPE PAGE"は考える以上に衝撃を与えたのではない
かと思います。科学ジャーナリストも含んだ、一体で猛攻撃をしていた「日本科学村」
への痛烈なパンチではないかと思いますね。「私は泣き寝入りなどしない」という。
「あの日」の最後の方に書かれていた、

 こうして私の研究者の道は閉ざされた幕を閉じた

と言う言葉と、この全文英文ホームページの開設は繋がっていると思っています。
あの全文英文ホームページというのは、国内ではなく海外の科学者に対してなされた
発信だと思います。したがって、「日本科学コミュニティ」の目には、多分に「許しがたき
行為」と映っているでしょう(特に同分野のコミュニティを完全に敵に回した形になってい
る感もしますからね)からね。単なる推測でしかないのですが。

ま、このままうやむやにしようというなら、もしあのホームページに一部公開されているレ
シピを参考にして海外で再現がなされたりするなら(それは不明ですが)中部大学の武
田特任教授が批判されているように、


 同じ日本人が見出した「新規性」のある研究を、論文ミスや、
 恣意的適用している「日本科学むらの掟」をかざして潰した


として評価が低下するだけでしょうね。科学の発展にとって何が一番重要なのかという
ことがわかっていないとしか思えませんね。
ま、ネット上にぽつぽつみられる悪口は私も多分その通りだろうと思っていますけどね。

ところで、気になっているのですが、「贔屓の引き倒し」に走られている方がちらほら見
られます。私は、「贔屓の引き倒し」は「利敵行為」にしかならないと思っています。
20世紀物理学の真の歴史は伝えられているものとかなり違うことは海外サイトを当た
ればわかります。その中で、浅はかな「贔屓の引き倒し」が決定的な「利敵行為」になっ
てしまった例を目にしています。
真相と言うのは、焦らずに「正しい『論理の輪』」でじっくりと解明していかないと見いだ
せませんし、勝利もできないということです。

「思い込み」「思い入れ」だけでは必ずどこかで歪・不自然さが出てきてしまうのです。
私は、既に、この世界はどういう世界なのかに感づいてしまっていたゆえ、この騒動の
しょっぱなから「不自然さ」を強く感じていましたのでこの話題にはあまりのめりこまな
かったのでした。何か、「一般下々は知らない世界なのだから口など出さずに見ておれ
ばいいのだ」というような極めて不愉快な雰囲気も強く感じましたからね。
今更、古いのもネットサーフィンしました(^^;


おっと、何か大上段に掲げたのに、尻切れトンボ・竜頭蛇尾になってしまいました(^^;

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(おまけ追記'16/5)
再現実験が不成功に終わったとき、気の毒であまりニュース(ネットでも)見なくなっ
ていたため、不案内だったのですが、「あの日」の中で小保方さんが感謝の意を表
した筆頭の相澤リーダがあのとき、以下のようなことをおっしゃっていたんですねぇ。

 「研究者を犯罪人扱いしての検証は、科学の検証としてあっては
  ならないこと。この場でおわびをさせていただく」


厳しい目で見られてきた「理研」という組織の中でリーダの地位におられる方として、
言える精一杯のことをおっしゃったと思いますが、都合が悪くなると自己防衛のため
に逃げる人(長いこと会社生活を送りましたので、そういう人がいることは経験して
きました)、殊更悪く言う人などがいる中で、こういうことをおっしゃったということは、
(口は悪い方のようですが−その人の優しさは口の聞き方では判断できないことも
長年生きてきて十分わかっています−)それだけ経験あるシニア科学者として、真
の科学者としての極めて重い言葉だと思いますね。

この騒動は、うまく表現しきれないのですが、ものすごい科学コミュニティ内の悪意
をずっと感じてきました。人間ってそこまでやれるのかと・・・
ネットサーフィンしていましたら、私が感じたことずばりの表現がありました。

 対岸の安全な場所で 自己の心の安寧のために 溜飲を下げるために 
 悪口を言ってるやつら


 (..)最初から「すべてが捏造の産物」と決め付け、盛んに実験阻止という
 アサッテの方向に圧力をかける理事長声明などを連発していた日本分
 子生物学界ですが、日本の科学者のレベルはこんなものかと悲しくなり
 ます。


もう一つのコーナーで、再三書いて来ましたが、「勝者の書いた科学史」ではなく、
真の科学史(インターネットの定着のおかげで、海外サイトでそういうものは沢山、
暴露紹介されています)を調べた中で、世界的に「科学世界」というのは、決して
「合理的・論理的」な理想像みたいな所ではなく、何か、私が長年経験してきたも
のよりもずっとずっとどろどろしたおどろおどろしい世界だということを知りました。
子供の頃から科学好きの私にとっては本当に衝撃的でした。
そして、それをまさに現在進行形で目にするとは・・・

刑務所に入る犯罪者でもない一人の人間を、どこまで憎悪し、勝手な妄想まで
して「地獄の底まで叩き落としてやる」みたいな言動ができるのでしょうか?
見ていると、粘着的にそれをしている人達って、言葉の端々から間違いなく、一
般人でなく、科学コミュニティ属性の連中でしょう。「科学者をなめるなよ」などと
罵倒する方もおられるますしね。匿名をいいことに、そうやって自分の心の安寧
をはかっている寂しい人だなとしか思えませんね。

そういうことをやるから、私のような、しがらみのない、それでいて論理的に筋
が通らないものには同意しない輩にとっては、彼らの言動への信頼性が減退
していくだけですから、結局、そう思う人が出てくるということは、自分で墓穴を
掘っていることになるのにね。そんなのは、お仲間以外、誰も「正義」だなんて
認めてくれませんよ。逆にしか思われない(ま、恐らく、「正義」なんて殊勝なも
のではないことはもろばれですけどね。自分で蒔いた種でしょう。)。

私から見れば、頭でっかちの「がきの論理」を振りかざして、陰湿ないじめをし
ているだけにしか見えません。彼らの言動には、まったく知性のかけらもない、
正当性などというのはこれっぽっちも見えませんなぁ。そして、それをしつこく
やっているということはよほど暇なんでしょうね。

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