ガストン・ルルー「黄色い部屋の秘密」(’16/4)
2015年発行の早川書房「黄色い部屋の秘密」という文庫本を読みました。
これって、実に驚くべき内容ですねぇ。犯人と言い、状況と言い・・・
事件を解決するのは、18歳の若き新聞記者ルールタービュです。場所はフランス。
ネタバレになってしまうので詳しく書きませんが、「密室事件」の変型版と言うべきか。
ま、一つだけネタバレしておきますと、題名が「密室殺人事件」となっていない・・・
この小説の中で語るルールタービュの言葉は傾聴に値しますね。
犯人にされるように企てられた無実の人が裁かれようとしている法廷で、ルールタービュ
が裁判官に説明するときに使った・・・「正しい『論理の輪』」という言葉です。
「目に見える『証拠』」なるものでも、「正しい『論理の輪』」に入らないものを証拠だ
と考えてはいけないというように。
実に素晴らしい。もしこういう人間が実在するなら、難事件も冤罪も防ぐことができるか
も。もう一つだけネタバレしておきますと、犯人は「まさか?!」という人物でした。
そして、ルールタービュは「正しい『論理の輪』」で熟考して、早くに気が付いていたの
ですが、最初は人情としては信じたくない・・・しかしながら、その「正しい『論理の輪』」
に入る証拠を早くに見つけていたのですね。なぜ、それなら早くに警察に知らせなかっ
たのか。ま、そこは読んでもらえば・・・事件のキーポイントですので書きません。
もう一つ、最後のところではっきり書かれていませんでしたが、ルールタービュという
青年が皆に隠していた(いつ知ったのか明記されていませんが、長期間、アメリカに
調査に出向いた時に知ったのかも)秘密に気が付きました。裁判から二か月たった後、
元気のない彼を、この物語の語り部たる友人の弁護士が目にしたこと、そして、ルール
タービュが彼に騙った言葉から。
(’16/4)
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