Nikola Tesla〜哲学と目指したこと@

Nikola Tesla〜なぜ不当な扱い?(3)の最後のところで「少しずつTeslaの考えがわかってき
ました。長くなりましたし、もう少し調べたいと思います」と書いたのでしたが、英語サイトに
Teslaが1900年に出したpaper(というよりscience essay)"The Problem of Increasing Human
Energy
"(人間エネルギー増大化の問題)というのが転がっていました。当時、結構売れて
増刷を重ねたものだそうです。まだ、1900年当時は彼はちゃんと評価されたした名士だっ
たんですねぇ。
[⇒The Problem of Increasing Human Energy]
長文の文章主体のscience essayゆえ、英語読解力が乏しい(それは国語読解力が劣るゆ
えだと自覚していますが)私ですから、読みこなすのに難儀して実はまだ完読できていま
せん(^^;。それでも、いくつか彼のphilosophyそして何をし、何をしようとしていたかは少し
理解できましたので、本コーナーの趣旨とはずれていますが紹介しておきたいと思います。

ただ、これだけは強調しておきたいと思います。
やはり、ちょこちょこと色々なところで紹介されていた通り、Nikola Teslaという方は、私が考
えている(お前のようなド素人がどう考えるかなどへでもないわと言われてしまうかもしれま
せんが)「ほんとうの科学者」すなわち、「科学者と言うステータスだけをidentitiyにして、
自己知識が万能だと思い、そこからの発想だけで権威でございというような不遜性を持ち、
名誉・金銭に拘る科学者」(大変失礼ながらそういう方が多いことは、中部大学の武田邦
彦教授が批判的に暴露されています)ではなく、「そういう名誉・金銭・自己知識に拘
らず、素直な目でどこまでも科学の真相の追及を行うことを自己のidentityと
している科学者
」であり、更には、Teslaにおいては、その研究はあくまで「人類の幸福
のため
」(低コストで人類に役に立つ技術開発をする)ということを目的としてなされたこと
はこのPaper読んでいてよくわかり、私はそれを高く評価したいと思います。ともすると、ご
自分たちは一般大衆を超越した「知識階級」だと思い、鼻持ちならない「特権階級」意識を
強く感じられるような発言をされる科学者達、自らの科学的興味だけで「パンドラの箱」を
あけてしまい、挙句に悪用は使う輩が悪く、発見した科学者には一切責任はないなどと責
任逃れ的弁明をした・している連中とは完全に一線を画した科学者であったことがよく現
れています。

ま、そういう方だったからこそ、既に、触れましたように物理界を含め一般にはMad Scientist
扱いされ、Nikola Tesla〜なぜ不当な扱い?(1)で指摘したようにスミソニアン博物館から完
全無視されています(けしからんことにNikola Teslaの発明までいかにもEdithonの発明み
たく誤解するような展示の仕方をしているようです)が、米国内では次第に見直す運動が
進んでいることは蓋し自然なことだろうと思います。日本では知られていないみたいですが、
最近検索してみたら、偶然"Tesla Society"という組織の存在を知って初めて検索したとき
より、この組織、何か米国内の各City支部が増えているみたいですね。どうやら、上層部
も含めSicentist/Engineerも多く参加されているみたいです。物理界の権威筋が無視して
いても、Teslaがやろうとした「人類の幸福のため」の科学研究は、こういう方々が復活させ
引き継いで行こうとされていることは前にも述べました。


さて、本題に入る前に・・・Teslaは幼少期から「幻影」に悩まされたという話を聞いていまし
たが、事実だったようで、このPaperの中でそれについて言及しています。

 "A long time ago, when I was a boy, I was afflicted with a singular
 trouble, which seems to have been due to an extraordinary
 excitability of the retina.
"
 「ずっと昔、私が少年の時、私は一つのトラブルに苦しんだ、それは、
 網膜の過度の興奮性によると思われる。


具体的には、

 "When a word was said to me, the image of the object which it
 designated would appear vividly before my eyes, and many times
 it was impossible for me to tell whether the object I saw was
 real or not.
"
 「一つの言葉が私に言われるとき、それが指定する物のイメージが
 私の目の前に生き生きと現れ、多くの時間、私にとっては私が見た
 物が現実かそうでないかをいう事ができなかった。


ようです。そのため、自分自身をその不思議な力から自由にしようと一生懸命努力した結
果克服していたようですが、20歳過ぎに再発してしまったようです。ただ、今度はそれを
むしろ利用する?ことを考えたようです。

 "Here it was that the observations to which I refer began. I
 noted, namely, that whenever the image of an object appeared
 before my eyes I had seen something that reminded me of it.
 (..) A visual impression, consciously or unconsciously received,
 invariably preceded the appearance of the image. Gradually the
 desire arose in me to find out, every time, what caused the
 toimages appear, and the satisfaction of this desire soon
 became a necessity. The next observation I made was that,
 just as these images followed as a result of something I had
 seen, so also the thoughts which I conceived were suggested
 in like manner. Again, I experienced the same desire to locate
 the image which caused the thought, and this search for the
 original visual impression soon grew to be a second nature.
"
 「ここに私が引用する観察が始まったのであった。すなわち、
 もののイメージが私の目の前に現れるときはいつでも、私は
 それについて私に思い出させる何かを見ることに留意した。
 (中略)意識的または無意識に受けた、ビジュアルな印象は、
 常にそのイメージの出現に先行した。次第に、毎回、現れる
 イメージを生ずるものを発見しようという要求が私の中に生
 じて来た。そして、すぐにこの望みを成功させることが必要
 になった。私がした次の観察は、これらのイメージが私の見
 て来た何かの結果にしたがうように、私が考えた思考が同様
 に暗示したということであった。また、私は思考を生ずるイ
 メージを定着させようという同じ要望を経験した、そして、
 その元々のイメージはすぐに、第二の性質に成長した。


Teslaの発明の才能はこのような少年時代に彼を苦しめた自分の異常体質が再現したとき、
活かすことを考えたことにあったようですね。

前置きが長くなりすぎました。本題に入ろうと思います。

冒頭で、

 "Of all the endless variety of phenomena which nature presents to our
 senses, there is none that fills our minds with greater wonder than that
 inconceivably complex movement which, in its entirety, we designate
 as human life;(..)
 Whence does it come? What is it? Whither does it tend? are the great
 questions which the sages of all times have endeavored to answer.
"
 「自然が我々の感覚に提供する終わりのない様々な現象について、そっ
 くりそのまま、我々が人間の生命と呼ぶ、想像もつかない程複雑な動き
 にまさる驚きでもって我々の心を占めるものは他になにもない)
 (中略)それはどこからくるのか?それは何か?それはどこに向かってい
 るのか?は、全ての時代の賢人が答えようと努めて来た大きな疑問で
 ある


と書いています。この論文の全てのスタートをなしている思考です。
Teslaは続けて、"The sun is the past, the earth is the present, the moon is the future."
(「太陽は過去、地球は現在、月は未来」)という当時の科学が言っていたことに関連し、ケ
ルビン卿の「生命を与えている太陽からの熱は、今後衰え600万年後までには地球が果
てしない夜を通して急速に氷の塊になるだろう」という予測(「月は未来」に対応するもの
か?)を紹介した上で

 "Meanwhile the cheering lights of science and art, ever increasing
 in intensity, illuminate our path, and marvels they disclose, and
 the enjoyments they offer, make us measurably forgetful of the
 gloomy future.
"
 「その間、科学と技術の元気づける光は、強さを増加しさえして
 我々の道を照らし、それらがあらわにする驚異とそれらが提供
 する楽しみは我々をして、陰鬱な未来をある程度まで忘れさせ
 てくれる


と科学者らしい感想(というより彼の意気込みか?)を述べています。

彼の「人間の生命」に関する着眼点ですが、ちょっと長めの引用ですが

 "Though we may never be able to comprehend human life, we
 know certainly that it is a movement, of whatever nature it be.
 All mass possesses inertia, all force tends to persist.
 Owing to this universal property and condition, a body, be it
 at rest or in motion, tends to remain in the same state, and
 a force, manifesting itself anywhere and through whatever cause,
 produces an equivalent opposing force, and as an absolute
 necessity of this it follows that every movement in nature must
 be rhythmical.
 (..)All life-manifestation, then, even in its most intricate form,
 as exemplified in man, however involved and inscrutable, is only
 a movement, to which the same general laws of movement which
 govern throughout the physical universe must be applicable.
"
 「我々は決して、人間の生命を理解することができないけれども、
 我々は確かに、それがどんなものの性質でも、それは運動である
 ことを知っている。全ての質量は慣性を持ち、全ての力は持続す
 る傾向にある。この普遍的な特性と条件に応じて、静止している
 か運動している物体は同じ状態で存続する傾向にある。そして、
 どこでも、もたらすなんでも通して現れる力は等価的な逆の力を
 生じ、これの絶対的な必要なこととして、自然に置ける全ての運
 動は律動的であらねばならない
ということになる。(中略)
 全ての生命の出現は、そのとき、例え、人間において示されてい
 るが、含まれていて不可解であるその最も複雑な形においてさえ、
 物理的宇宙を通して支配している同じ運動の一般法則が適用さ
 れるに違いない唯一の運動である。


と書いています。そして、これに関して、

 "The existence of movement unavoidably implies a body
 which is being moved and a force which is moving it. Hence,
 wherever there is life, there is a mass moved by a force.
"
 「運動の存在は不可避的に、動かされる物体とそれを動かす
 力を含んでいる。これより、生命があるところはどこでも、力
 により動かされる質量がある


と述べています。ここで、表題の"human energy"に結びつきます。

 "we may conceive of human energy being measured by half
 the human mass multiplied with the square of the velocity
 which we are not yet able to compute.
"
 「我々は人間のエネルギーを人間の質量の半分に我々がまだ
 計算できない速度の二乗を掛けて測定できると想定してよい


とのべています。尚、「我々がまだ計算できない速度」に対しては、

 "our deficiency in this knowledge will not vitiate the
 truth of the deductions I shall draw, which rest on the
 firm basis that the same laws of mass and force govern
 throughout nature.
"
 「我々のこの知識の困難さは、自然を通して支配している
 質量と力の同じ法則の堅固な基礎の上にある、私が導こ
 うとしている推論の真実性をそこなうことはないだろう


と述べています。そして、更に、

 "Man, however, is not an ordinary mass, consisting of
 spinning atoms and molecules, and containing merely
 heat-energy. He is a mass possessed of certain higher
 qualities by reason of the creative principle of life
 with which he is endowed. (..)thus altering his mass
 independently, both in bulk and density.
 (..)But in any given moment we may ignore these slow
 changes and assume that human energy is measured
 by half the product of man's mass with the square
 of a certain hypothetical velocity. However we may
 compute this velocity, and whatever we may take as
 the standard of its measure, we must, in harmony
 with this conception, come to the conclusion that
 the great problem of science is, and always will be,
 to increase the energy thus defined.
"
 「しかしながら、人間はスピンする原子と分子からなり、
 単なる熱エネルギーを含む普通の質量ではない。
 彼は彼が授けられた生命の創造原理によるある、より
 高度な資質を持つ質量である。(中略)彼の質量は、
 容積と密度において独立的に変化する。
 (中略)しかし、任意の瞬間において、我々はこれらの
 ゆっくりした変化を無視し、人間エネルギーは人間の
 質量とある仮説的速度の二乗との積の1/2と仮定して
 もよい。しかしながら、我々はこの速度を計算するかも
 しれない、そして、我々がその測定基準を取るものに
 関する限り、我々はこの概念と調和して、科学の大き
 な問題は、そしていつもそうであろうが、このように定
 義されたエネルギーを増大することである
と言う結論
 に至るべきである。


と述べています。そして、彼は、Draperの「欧州の知的発見の歴史」という本に触発さ
れて、

 "I recognized that
   to solve this eternal problem must
  ever be the chief task of the man
  of science.
"
 「私は、
  この永遠の問題を解くことは、永遠
 に、科学についての人間の主要な
 仕事にちがいない

 ことを悟った。


と述べています。長々と引用しましたが、これを特筆したくてのことです。
要するにTesalaが科学研究に取り組んだ目的・Philosophyがここに示されています。

長くなりますので、ここで一旦区切ります。
(続く)
 ('16/9)

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