「懐疑主義(Skepticism)」に関する海外サイトから

海外の英語サイトで検索していますと、「科学の発祥の地は西洋である」ことを改めて痛感
しています。日本では知られていないのか、ほとんど話題になっていないようなものが多々
議論されたり、意見主張されたりしていて、関心があって見つけたものを本コーナーで多数
引用紹介してきました。

確かに、私自身は、60才を前にしたとき、"Special Relativity"への疑念が芽生え、そこか
らネット上に溢れる、「アカデミズム正統科学と科学常識を絶対視」して、反対論やそれに
抵触する異端説への嘲笑罵倒攻撃に極めて不快感を覚え、調べて、逆に"Relativity"のみ
ならずいくつかの「科学の基本パラダイム」への疑念が募り、それまで疑ったことなど全然
なかった科学のあり方にまで興味の範囲が広がって、そういうキーワードで検索するように
なったのは事実ですが、それでも国内サイトではお目にかからない・あっても本の少しだけ
というものが英語サイトでは沢山ヒットするので驚いてきました。何か、世界がかなり違うこ
とに気が付いたわけです。

例えば、海外サイトをあたるまで、私は「エーテル(Ather/ether)」などとっくの昔に「死語」
みたいになっていたと思っていましたのに、海外では復活したかのように大いに語られて
いるのを見てすごく驚いてしまいましたし、発端は、たまたま、日本サイトにあったWeb論
文でさわりを知ったのですが(ま、それで海外サイトをあたったわけです)「マックスウェル
の方程式」の真実についても英語サイトに多数のarticleがあって初めて色々と知ったの
でした。
日本サイトでは点の情報でしかないもの又はほとんど皆無なものが面の広がりを見せて
いるわけです。

さて、本項の話題は、ちょっと前の項病理学的懐疑論(pathological skepticism)の話題の
続きです。まずは、下記を読んでください。

 I am attacked by two very opposite sects - the scientists
 and the know-nothings. Both laugh at me - calling me
 “the frogs’ dancing-master.” Yet I know that I have
 discovered one of the greatest forces in nature.

 (私は二つの大変な反対勢力によって攻撃された−科学者と何も知
 らない連中に。両方とも、私の事を笑った−私の事を「カエル踊りの
 マスター」と呼んだ。けれども、私は自然の中の最大の力の一つを
 発見したことを知っている)
 - Luigi Galvani, Italian physicist (1737-1798)

医者で物理学者であったGalvaniが電気を発見して電気の研究が盛んにされるようになっ
たことは御存じの方も多いでしょうが、そんな功績大のGalvaniも最初はこんな仕打ちを受
けられたようです。そして、このことは、決して「昔のことだから」ではないのです。
上記の項でも例を上げましたが、ライト兄弟は科学雑誌と言う言わば公器を使って嘲笑
攻撃を受けました。その攻撃は当時の科学者も支持しました。何度も触れましたが、あの
ファラデーは電磁誘導の法則を発見して発表したとき、「ペテン師」だとののしられたそう
です。決してたまたまの例などではなく、そして、現在もそういうのは綿々と続いているの
です。「人間が人間であるための性」なのでしょうか?

で、"Skeptic""Skepticism"というものをわざわざ調べていたわけではないのですが、よく
覗いている海外の物理フォーラムにちょろっと引用サイト付で触れられていたものを目に
し、何気なくリンクを辿りまして、そこにあった不案内な"term"に興味を抱き、少しだけ調
べた中で、病理学的懐疑論(pathological skepticism)の項をしたためたのでした。
この和訳が正しいかどうか不案内の私にはわかりませんが、少なくともこの日本語は国
内サイトにはないようで、再度検索してみましたけど、私のこの項がほとんどトップに出て
きてしまうくらいですから、それらしい話題もないのではないかと思いました。

で、また、気になって海外サイトを当たりました。で、前項の中でも少し触れたのですが、
"Pseudoskepticism"、"Pseudoskeptic"という方で沢山ヒットしました。
日本語にするなら、さしずめ、「疑似懐疑主義」「疑似懐疑主義者」でしょうか。
そしてそれは、"True skepticism/True skeptic"「真の懐疑主義/真の懐疑主義者」と
の対比で批判的に使われているようです。なぜ、そういうのが話題になって多くのarticle
がヒットするかですが、西洋でも、"Skepticism"の多くが本来の"True skepticism"で
はなく、"Pseudoskepticism"に陥っているのに、高名な科学者の支持を得ているから
のようです。

私が着目したのは、それに関するarticleをしたためている方は、どうやら、特定の異端論
の"believers"ではなく、"True skepticism"から離れてしまっていることへの批判をして
いる感があったからです。
ここでいう、"True skepticism"というのは、所謂「なんでも疑え」というのと違います。
どんどん英単語が記憶の彼方になり、元々国語力に乏しいこともあって英文読解もまま
ならない情けない私ゆえ、あれもこれもとどんどん読み進めることができないので、決め
打ちで特定のarticle (⇒Examining Skeptics, Some Notes on Skepticism) を読んでみた
のですが、そこには、

 (本来の)懐疑主義者(Skeptic)は"nonbeliever"であり、決定的
 でない証拠に基づく結論にジャンプすることを拒否する人
(※1)

とありました。そして、まず"True skeptic"はそちらの人であり、そのarticleの主張では
更に、どんなものでもまずしっかりと読み、主張をしっかりと理解した上で、その主張にお
ける証拠、論理など不十分・不合理・不適当な点を厳しく指摘することを信条としている方
を指すようです。そして、間違いなく、そのような方も西洋ではおられたようで、彼らは、前
述の"Pseudoskeptic"にも厳しい目を向けられているようです。

このarticleには、

 あるideaは間違っていて、ある程度の経験的証拠によっては反対
 側に動くことはないだろうというアプリオリな(先駆的な)信念で性
 格づけられる
(※2)
 (あまりよい訳ではなくてすいませんm(__)m)

方達を"disbeliever"と称されていました。そして、前述の、"Pseudoskeptic"はこの
"disbeliever"であると。何かうまい日本語訳ないかと思ったのですが、ネット辞書では、
共に「信じない人」としかなく、頭をひねっていてふと思いついたのは、

 nonbeliever=非信者 disbeliever=反信者

ここでいう、"believer"(信者)は、アカデミア正統派から認められていない超常現象とかの
異端説、疑似科学とされているものを正しいと信じている方達と言う意味です。
ちなみに、そのarticle文責者は(※2)の方々はご自分を"Skeptic"であると声高に主張され
ていると指摘されています。要するに、彼らは本来は"Skeptic"などではなく"Pseudoskeptic"
でしかない
と批判されているわけで、私はこの意見に大いに賛成します。
既に指摘しましたように、"self-appointed 'skeptics'"(自称懐疑主義者)は私が気が付
いたように、そのarticleでも"Pseudoskeptic"であると指摘されているわけです。

しかしながら、どうも日本では、「懐疑主義(Skepticism)」というのは、下記で言及している
Truzziという方が復活させた用語である"Pseudosketicism"でしかないものをそれだという
風に思われている感を強くしています。ま、それゆえにしつこくこんな項をしたためている
のですけどね。

さて、知らなかったのですが、興味深いことに、ドイツやアメリカには"Skeptic"の公的に認
知されているらしい組織(organization)があるのだそうです。
で、アメリカのものは、"Committee for the Scientific Investigation of Claims of
the Paranormal
"略称"CSICOP"というもので、雑誌も発行しているそうです。
で、前述のサイトの主張によれば、今は完全に"Pseudoskeptic"に牛耳られているそうです。
実は、その名前は、「そのミッションが、人間の知識を誤ったまたは詐欺的なものから真の
例外の発見を探索することによって進化させる、まじめで、バイアスのかかっていない組織
またはシンクタンクを暗示している」ように、実際、それは、CSICOPのオリジナルメンバの何
人かが、1976年にその組織を築いた時、思い描いていたものだったそうです。参照した前
述のarticleの文責者はそれを"True Skeptic"(真の懐疑主義者)とされていますが。

しかるに、最初から所謂「同床異夢」、"True Skeptic"と"Pseudoskeptic"の寄り合い所帯で
両者間での勢力争いがあったそうです。
で、創立当時の議長だったMarcello Truzziという方は、"True Skeptic"の方。一方、そもそ
も彼を招いたPaul Kurtzという方は、"Pseudoskeptic"の方だったようです。そして、勢力争
いは"Pseudoskeptic"派が優勢になり、Truzziの立場への批判が大きく、彼は突き上げをく
いある問題を境に、Truzziは、とうとう見切りをつけて辞職し組織を去られたそうです。
そして他の多くの"True Skeotic"派は締め出されたような形で脱会されてしまったそうです。
Truzziはこう書いているそうです:

  I found myself attacked by the Committee members and board,
  who considered me to be too soft on the paranormalists.
  My position was not to treat protoscientists as adversaries,
  but to look to the best of them and ask them for their best
  scientific evidence. I found that the Committee was much
  more interested in attacking the most publicly visible claimants
  such as the "National Enquirer". The major interest of the
  Committee was not inquiry but to serve as an advocacy body,
  a public relations group for scientific orthodoxy.

  (私は自身が、私を、超常現象者にソフトすぎると考えた委員会メンバー
  と役員会により攻撃されていることに気付いた。
  私の位置は敵対者のように未科学者を扱うことはないが、それらの最
  もよい所を見て、彼らにそれらの最も良い科学的証拠を尋ねることで
  あった。私は、委員会が、"National Enquirer"のような最も公然と目に
  する主張者を攻撃することにより興味を持っていることに気付いた。
  委員会の主要な興味は、調査ではなく、科学権威に対する公的関係
  グループに弁護体として奉仕することであった。)

"Patho-skepticism"と"Pseudoskepticism"はこのTruzziが復活させた用語だそうです。
Truzziという方は、前述のように、このCSICOPの初代議長として、定款を作り、雑誌の編集
をされていたそうで、間違いなく、彼の理念は、このarticle文責者が述べている上記のよう
に、

 そのミッションは、人間の知識を誤ったまたは詐欺的なものから
 真の例外の発見を探索することによって科学を進化させること
(※3)

だったのでしょう。私も、本来、"skepticism"の真の意義はここにあると思っています。
しかしながら、そういう「良識派」="True Skeptic"を追放してしまったCSICOPは、その後、
"Pseudoskeptic"である新議長で人本主義哲学者のPaul Kurtz、科学ライターで奇術師の
Martin Gardnerと奇術師のJames Randiのような原理主義疑似懐疑論者の小さいが高度に
攻撃的なグループにより率いられ、CSICOPと雑誌、the Skeptical Inquirerは、「何か慣習
的でないものを系統的に嘲笑するためのプロパガンダはけ口にすぎないものに堕落した」
とこのarticle文責者は批判されています。そして、一番の問題は、そういうCSICOPの今の
活動が、有名な科学リーダー(晩年の有名なCarl Saganもその一人)らに支持され、この
支持はメディアや大衆において、科学権威のイメージを意見作りに反映することを可能に
したということです。
大変失礼ながら、多分に、高名な科学リーダーたちは、科学界において功なり遂げた方
達であり、ご自分の名声に瑕疵が出てくるようなものは「困る」わけで、自らやらなくても、
自発的にこういうことをやってくれる組織はありがたいものゆえ支持を与えているのでは
ないかと思います。

更に、articleの文責者は、
 「本物の科学研究は望まれる結果が保証されない危険性があるので、CSICOPは賢く、
 最早それ自身(このようなものは既に全部答えを持つ存在に対して時間と金の浪費であ
 ろう)の科学研究を行わず、代わりに、大声で、存在する研究の虚偽または意図的な切
 り捨て、人身攻撃−中傷、悪口、嘲りに信頼をおいている。」(※4)
と批判されています。

どうですか?これほどの組織ではないですけど、私が再三批判の目を向けている国内に
ある「疑似科学批判」グループは全く同じ感がしますがいかがでしょうか?
そのリーダさんの言説を見てますと、とても(※3)などではなく、明らかに(※4)であり、その
心は、上記Truzzi氏の言説の中にあるように、

 主要な興味は、調査ではなく、科学権威に対する公的関係
 グループに弁護体として奉仕すること
 (The major interest of the Committee was not inquiry
  but to serve as an advocacy body, a public relations
  group for scientific orthodoxy)
(※5)

であることが明白に伺えてなりません。

前に、New Inquisition(新しい異端審問)で触れた元・MITのチーフ科学ライターで、現在
異端的な科学雑誌Infinite Energy Magazineの編集者のEugene Malloveという方("Cold
Fusion"の支持者)がCSICOPの編集者に対して、彼が「cold fusionについてどんな研究又
は文献調査をしたか」と尋ねたところ、編集者は逃げ腰で、最後には、「私は研究者でな
い、編集者だ」と逃げ、そこで会話は終わってしまったそうです。

CSICOPがとりわけ目に敵にしているのが、"Psi"だそうで、CSICOPの総会において、"Psi"
研究グループのいくつかを消滅させたことが誇りをもって紹介され、拍手喝さいされたそ
うです。この話を聞いて、どう思われますか?
実に恐るべきことです。科学者の純粋な科学をすることへの言語同断の抑圧ではないで
はないでしょうか?前述の国内のものも、「批判」などというものではなく「撲滅」を目的と
している感がしています。まさに、「同じ心」なんです。
間違いなく、社会の法律としての「学問の自由」を、科学界自体が愚弄しているわけです。
中世の「魔女狩り」と何にも違いはないじゃないですか?

大変失礼ながら、いびつな"Pseudoskeptic"でしかないのに、自分は"Skeptic"だと胸張っ
て強弁し、正義の使者みたいに異端的研究の撲滅活動に勢を出している・・・

あなたたちは一体全体なんなんですか?(怒)

 ('16/6)

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