線路好きが高じてきています(27)('18/5)

    Ogden, UT 〜 Portland, OR

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今回もずっとやっている「線路が好き」という私の全てネットから得た情報のヨタ話で、アメリカの鉄道のいわば「紙上旅行」
(というか、google map/google earth/YouTube画像での机上鉄道旅)です。
線路と地図好きの私は未だに飽きもせず、google earth/mapで線路を眺めています。
勿論、独りよがりですので、自分のメモ代わりの記事でしかありません(^^;

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アメリカ最大の鉄道会社の一つUP(Union Pacific)は150年以上の歴史があり、かつて走らせていたSLを今も動態保存し
ていて、時々、SL牽引の特別列車をアメリカ各地に走らせているようです。YouTubeにおいて、UP#844で検索しますと、
沢山の映像が出てきます。UP#844はUPが最後に建造したSLだそうです。

         図1 UP#844 heritage train(Wikipediaより)

線路好きの私は、これらのYouTube映像を見て、その撮影場所同定を楽しんでいますが、関連で調べたりして色々雑学も
得ています。今回、たまたま、2017年の四月に走った"UP844 Boise Turn Special"という映像を目にしました。Boiseと
いう街はIdaho州にあり、Idaho州内でファンにお披露目した特別列車だったようです。

で、線路好きの私には、新たにgoogle mapで辿る路線ができ、楽しめました(^^♪。その上、思わぬオマケ迄知ることでそ
こからOregon州まで伸びている路線まで辿ってしまいました。

参考にしたYouTube映像は下記などです。

Union Pacific 844 to Boise, Idaho
Union Pacific Steam in Idaho - 844 Boise-Nampa 24 April 2017
Union Pacific's Living Legend Steam Locomotive No. 844 comes to Pocatello
など

Boise Turnとありますが、正確には折り返しはBoiseの西にあるNampaという街でだったようです。

さて、UPのSL基地は、Wyoming州の州都であるCheyenneの大きなヤードの中にあり、#844牽引のheritage trainはここか
らの出発となります。
で、このIdaho州を走った"Boise Turn Special"ですが、Idaho州の南隣のUtah州の街Ogdenから北に延びている鉄路を使
用してIdaho州に入りました。Ogden, UTは、前にここで紹介したCheyenne, WYも通る"Overland Route"が通っていますの
で、SL基地Cheyenne, WYからOverland routeでOgden, UTに行き、そこから北上してIdhao州に入り、Nampa, IDで折り返
えし、同じルートでCheyenne, WYのSL基地まで戻るものでした。

UP#844は特急列車牽引に使われていた大型の高速蒸気機関車で、上記YouTubeにある追っかけ映像を見ているとほれ
ぼれしてしまう走行雄姿です(^^♪上で示した映像の一つは、時が異なる他の場所でもこのUP#844の撮影映像をいくつも
アップされています(Colorado州では、運転席に便乗しての撮影映像さえあります)。

さて、私のような線路好き人間にとって、興味深いのは、機関車牽引の列車運用です。方向転換するには、機関車を機回
しするか、どこかで全体の方向転換が必須であり、そのための線路が必要だからです。往復とも機関車headであるAMTRAK
(AMTRAK全てではありません。最後尾の客車に運転台がついているCab drive方式のものもありますし、両端機関車付の
ものもあります)がそうであるように、この"Boise Turn Special"も機関車機回しではなく、全体を反対方向にするやり方でし
たが、それが可能な場所のため、興味深い運転をしたようです。YouTube映像と補足説明でそれがわかりました。そして、
方向を反転した場所も同定できました。本稿はその面白さと、もう一つ、この路線に関して知ったことがあり、それらを中心
にしてのものです。実際に直接見ているものではありませんけど、線路好きの私にとっては自己満足的興味が湧いた路線
/運行でしたので。

で、もう一つ知ったことというのは、今回この列車が走ったうちのOgden, UT〜Nampa, ID間の鉄路は、1977年〜1997年の
間、AMTRAK "Pioneer"号というのが走っていた路線の一部であったということでした。現在は完全に貨物列車(freight
train)オンリーの路線ですが、鉄道の斜陽化に伴い、鉄道会社独自が消えて客車列車専用のAMTRAKが運行されるよう
になってからも20世紀後半には客車列車(Passenger train)が走っていたのでした。20世紀中のことで短命ゆえからか、
YouTUbeにはほんの少ししか映像はありませんでしたが。で、この"Pioneer"が開設された1977年の運行図がWikipedia
(英語版)にありました。Salt Lake City, UT〜Seattle, WAで運行が開始されたものです(どうやら、晩年はChicago〜Denver
〜Salt Lake Cityが追加されたみたい?です)。

         図2 1997年に廃止されたAMTRAK"Pioneer"の開設の1977年当時のルート(〜英語版Wikipedia)

で、最後のPortland, OR〜Seattle, WA間は、既に運行されていたCalifornia州Los AngelesとカナダのVancouverを現在
も毎日結んでいるAMTRAK "Coast Starlight"の路線の一部ですし、間に特に大都市もないので、存在したことの理
由に興味がありましたが、Wikipedia記事でわかりました。上の図2でOgden, UTの所に連絡用としてAMTRAKの列車
"San Francisico Zephyr"が記載されています。この列車は、かつてはChicago, IL〜San Francisco, CA(San Francisco
の地理的位置の関連で、実際には連絡駅としてのSan Francisco Bay Cityの一つのOakland迄。San Franciscoとの間
はAMTRAKのリムジンバスでの連絡)のAMTRAKでしたが、今はもうありません。現在のChicago, IL〜San Francisco,
CA(実際には連絡駅としてOaklandの北隣のEmeryville迄)間はロッキー越え人気が高いというAMTRAK "California
Zephyr
"に取って代わられています。"San Francisco Zephyr"はColordo州のDenverとかUtah州のsalt lake Cityなどの
需要の多いルートではなく、鉄道全盛時代には三つの鉄道会社を結ぶ大陸横断列車があったOverland Route(→ここ
で紹介しました。現在はUPの主要貨物列車路線となっています。Wyoming州を通っています)を通るものでした。この
ルートは当時、AMTRAKとしてはやむおえない処置だったのでした。というのは、当時、Colorado州内とDenver, CO〜
Salt Lake City間の鉄道網は、"D&RGW"という鉄道会社が支配していて、AMTRAKという旅客専用列車グループができ
たとき、この"D&RGW"は1971年、それへの旅客列車部門の参加を拒否したため、AMTRAKはDenver〜Salt Lake City
間のルートを走らせることができなかったからだったそうです。で、AMTRAKは当初、Salt Lake City〜Ogden間をバ
ス連絡して顧客の弁を図っていたようですが、1977年にUPの同意を経て、AMTRAK"Pioneer"を開設し、連絡の便をよ
りよくしたということだったそうです。その後、1981年になって、D&RGWが折れてきて旅客列車部門のAMTRAK参入を
決めたため、Chicago〜San Francisico間が現在の南のルートに変更され、列車名も"California Zephyr"と変更されたと
いうわけで、Pioneerを開設した最大の理由が不要となり、結局は1997年に廃止されたのでした。先にOverland route
についてもD&RGW社.についても知っていましたので、よくわかりました。

さて、線路を中心にして該当ルートのポイントについて述べます。
Ogden, UTでOverland Routeと下記のように北方に分岐します。

         図3 Ogden, UTからの分岐

尚、図3では図示していませんが、北方への当該線路の東側にもう1本線路があります。それは、"FrontRunner"とい
う名前の近郊passenger trainの線路であり、Ogden駅の次の終点のPleasant Viewまでの路線です。途中で当該線路に
合流してPleasant Viewまで行っています。

この鉄道はWillard Bay貯水池の東岸を通り、図2のBringham Cityを通りますと、州境までの間に、googole mapで北から
鉄道路線を辿ってくると勘違いしやすい(というか私は勘違いしてしまいました(^^;)分岐があります。
南側から進むと、ベア川という川が西から近づいてくるのですが、やがて、この川が大きく北から南方向にヘアピンカーブ
するとことがあり、鉄道もそれにそって、北向きからぐるっと南向きにカーブしているところがあります。そして南向きに
なったところにWye形の分岐があります。

         図4 Cache, UT付近の分岐

ちなみに図4の黒線を辿りますと、すぐに東方向になり、やがて北方向になって、最後は行き止まりの支線です。

図2でIdaho州内で一番Utah州に近い駅のあったPocatelloは人口約5万人の街です。前述の2017年のUL#844 Boise
Turn specialはこの街で往復とも停車したようです。YouTube映像によると、往路では、この街で一泊したようです。
その停車場所同定ができました。Pocatello市内北部で、南北の路線が西方向に大きくカーブする手前近くです。

         図5 2017年UP#844 Boise Turn Specialの往路Pocatello, IDでの停車場所

この停車した線路はgoogle mapには記載されていませんが、google earthで見ると図5のようになっていて、北の方で
分岐している南側の線路とは図の南東側で合流しますが、その先で行き止まりのようです。図5に示しますように、渡
り線がありますので、そこまでは南から進んできて、この渡り線を通ってバックで入線しています(バック入線の映像
もありましたので間違いないでしょう)。
前述で、ここで一泊したようだと書きましたのは、もう日が西から指している時間帯に、ここで#844のSLと後ろの列車
間にDL(6961)を連結している映像があり、別の方の映像でこのPocatelloを朝に出発する映像があったことからの推
察です。いずれにしろ、映像では沢山の人々が見学に訪れていました。やはりSLはアメリカでも一大人気のようです。

鉄路はPocatelloからはおおむね延々とMoutain Homeの南方まで西方向に進んでいます。

         図6 Pocatello〜Nampa間概略

途中、mapで興味深い所は、American Fallsという街の西側にあるSnake Riverが湖のように広くなっている北側から急に
細くなるところを鉄橋で渡っているところです。Boise Turn Specialがこの鉄橋を渡っている映像がありました。

図2にはMoutain Homeという駅が示されていますが、その後この駅は廃止されたようです。

さて、実はこの先、UPの貨物列車路線はBoiseを通らず、直接Nampa, IDにほぼ北西方向で一直線に走っています。で、
Boiseを通る路線(Boise Cutt off)は、以前はUPの所有路線だったらしいですが、現在はUPが売り払って"INPR"(Idaho
Northern & Pacific Railroad)の所有するローカル貨物路線となっているようです。
で、前の方で、UP#844 Boise Turn Specialの興味深い運転と書きましたのは、往路では、UP main lineとBoise cut off
との分岐のあるOrchardで、分岐部の南部にあるWyeで列車全体を方向転換し、Boise Cut offをNampaまでバック運転
していたことです。Nampaでは方向転換できないための処置のようです。

         図7 Orchardの分岐、Wye
  図8 往路時、OrchardのWyeでのUP#844 Boise Turn Special方向転換

Boise cut off(現INPR路線)は下記となっています。

         図8 Boise cut off

図8のBoise DepotはUPがpassage trainを走らせていた頃建造した歴史遺産となっているそうです。UP#844 Boise Turn
Special(2017)は往復ともここで停止して一般見学公開させています。YouTube映像では多くの人々が見学に来ていました。

         図9 Boise Depot付近でのUP#844 Boise Turn Special

旧AMTRAK "Pioneer"のBoise駅も、このBoise Depotを使用していました。現在は最早、Passengertrainは運行していません
ので、鉄道駅としての役目は終わっていて、他の用途での歴史遺産になっています。アメリカには、このような今は無き
pasennger trainのために作られたDepotが歴史遺産として残されている所が多々あります。

2017年のUP#844 Boise Turn Specialの折り返し点Nampaでは下記の付近で停車しています。恐らくここで一泊したものと
思われます。

         図9 NampaでのUP#844 Boise Turn Special

2017年のUP#844 Boise Turn Specialはここから機関車Headで、同じルートの復路となり、Boise,ShoShone,Pocatello(以上
Idaho州)、Bringham City,Ogden(以上Utah州)で停車し、Overland routeに入ってSL基地のWyoming州Cheienne迄戻ったよ
うです。

ところで、旧AMTRAKの"Pioneer"のNampaのルート先を少し紹介しておきます。図2のように次の駅Ontarioは西隣のOregon州
の街ですが、鉄道はすぐにまたSnake川を渡って一旦、Idaho州内に戻ります。やがて、Snake川は西にカーブし、鉄路も西
(Idaho州側)を走り、再びSnake川を渡ってOregon州内に入ります。

 図10 旧AMTRAK "Pioneer"が走った路線、Sanake川を渡ってIdahaからOregonに入る

この後、概して、北西方向となって、途中、Balers City,La Grandeの駅付近を除き、基本、山岳地帯を通り、やがて、東西
に流れるUmatilla川南側に達してからしばらく、川に沿う形でPendieton駅を過ぎ西方向に進みます。そして、その後、北
側に大河のColumbia川が近づいてきて、この後、このColumbia川の南岸沿いを延々とPortland付近まで西方向に進んで
います。

 図11 旧AMTRAK "Pioneer"が走った路線、Columbia川南岸に達して南岸沿いに西方向に。

図2のHinkel, The Dalles,Hood Riverはその路線上の街です。
図11ではColumbia川北岸にも線路が見えていますが、こちらは、Portlandからの現行AMTRAKの"Empire Builder"(
Seattle/Portland〜Chicago、Sporkan, WAで切り離し/合流)が走っている路線です。図2のVancouver(ややこしいですが
Washington州の街であり、Los Angeles, CAからのAMTRAKの"Coast Starlight"の終点であるカナダの大都市ではありま
せん)でAMTRAKの"Coast Starlight", "Amtrak Cascade"が走る路線と合流しています。

最後、Portlandでの推定経路を示しておきます。Portland Union駅位置と線路からの推定です。

 図12 旧AMTRAK "Pioneer"が走った路線、Portland

上り下りとも機関車headだったようですから、多分、復路では下記のように方向転換したと推定されます。

 図13 旧AMTRAK "Pioneer"が走った路線、Portland駅への発着(推定)

Wikipediaに1977年当時のPortland Union StationにおけるAMTRAKの列車表示写真がありました。1977年当時は、
 Coast Starlight(上り、下り)、Empire Builder(Chicago行)そしてこのPioneer(上り、下り)
が表示されていました。まだ、AMTRAK Cascadeは存在していなかったようです。

オマケですが、UP#844 Boise Turn Specialが復路にOgden, UTで停車したところについて示しておきます。
停車したのは、現在は鉄道博物館になっている旧Ogden Union Stationのプラットフォームのところでした。

 図14 2017年のUP#844 Boise TUrn Specialが復路で停止した旧Ogden Union Station

図13の左側(西側)の2本の線路はFront Runner専用線です。FrontRunnerのOgden駅は図の北方にあります。
YouTube映像によりますと、UP#844 Boise Turn Specialはback推進運転でこの旧Ogden Union Stationに入線して
いました(図12のプラットフォームの右側(東側)線路に入線)。線路は駅の北方に続いているようですが、Front
Runner専用線に合流する形になっていて、またstreet viewを見ると廃線化されているようですので、このような
ルートで入線したものと思われます。

しかしながら、線路をgoogle earthで眺めたのですが、旧AMTRAK "Pioneer"号はどこで停車したのかわかりませ
んでした。というのは、線路を辿る限り、このUP#844 Boise Turn SpecialがBack推進に入った地点というのは、
Salt Lake Cityへ行く分岐より南の方にあるからです。現在、渡り線がその間ありません。Back推進に入れる地点
は下図のように31street(線路群を高架で跨ぐ)の南側です。

 図15 2017年のUP#844 Boise TUrn Special旧Ogden Union Stationにback推進開始地点

この31streetの北側は、下図となっています。

 図16 図15の北側

 図17 図16の北側

じっくりgoogle earthを見て、ややこしいですが下記とすれば、Ogden Union Stationが利用できることがわかり
ました。無論、そんなことをしたかどうかは不明です。
Salt Lake Cityから来た列車はまず図17のB線路(C線路?)に入り、そして#1線路に北向きで入ります。列車
全体がポイントの北側に入ったら、そこから#1線路をBack推進で南下していきます。そして、図15に示す渡り
線aで#2線路にそのままBackで渡り、更に#2線路を南下して渡り線bで#3線路にそのままBackで渡ります。
その後、#3線路をBackで南下して、機関車がOgden Union stationへ行く線路(図の青線)とのポイントを南に
過ぎてから一旦停止し、そこから機関車headで青色で示した線をOgden Union Stationまで進みます。
これで、とにかくSalt lake Cityから来た列車はOgden Union Stationに入ることができました。
出発はBackで図15の#3線路との合流点まで進み、そこから#3線路を機関車headで進みばOKです。
では、北からやってきた列車はどうでしょうか?Ogden Union stationへはUP#844 Boise Turn Specialと同様
にBack推進で入線します。今度は出発は機関車Headになります。そこで、#3線路→渡り線b→#2線路→渡り
線a→#1線路へとBack推進で進みます。機関車が線路Bのポイントを過ぎてから、今度は機関車headで線路
Bに入ればSalt Lake City方面に進むことができます。以上が物理的に可能な私の推察でした。
とにかくOgdenからそのまま南下していく線路は、Overland routeであり、Sal Lake City方面には繋がらず、途
中から東の方にカーブして行ってしまいます。UL#844 Boise Turn Specialの復路はそのルートで帰っていっ
たのでした。

とにかく貨物列車(freight train)しか走っていない路線は情報が少ないため、こうやって特別列車が走ると
YouTubeにいくつもの映像がアップされ、そこから線路好きの私には興味深くgoogle mapで路線を辿ることが
できますのでありがたいです。アメリカの場合は、日本や欧州とは違い、鉄道の衰退に伴い、各鉄道会社が
独自のPassenger trainを廃止して主としてfreight trainのみの運用になってしまっていますから。


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