愛知県の鉄道事情と背景の独断的考察(’13/4)
下図は名古屋市地下鉄・あおなみ線・リニモ・城北線及び豊橋市の市内電車(
豊橋鉄道線)を除く愛知県内の鉄道網です(一部、隣接の岐阜県・三重県含む)。
併記のない灰色の鉄道線は名鉄線です。
愛知県は人口約740万人で全国第4位の県ですが、この鉄道網地図を見てどの
よう(多い、普通、少ないのいずれか)も見えるでしょうか?
恐らく、東京圏・大阪圏と一緒に中京圏と称せられている割にはあまりに貧弱だ
という印象を持たれるのではないでしょうか?
東部はJR飯田線を除き、北部に空白部があります。そして現在、愛知県人口第
2位の豊田市にはJRは通じていません。
JR関西線、飯田線は大半が単線ですし、武豊線は単線非電化(2015年に電化
予定)です。愛知環状鉄道は単線区間が大半です。
愛知県内の名鉄線で全線複線なのは名鉄本線(豊橋〜名古屋〜岐阜)、犬山
線(名古屋〜鵜沼)、瀬戸線(栄町〜尾張瀬戸)、常滑・中部国際空港線・津島
線、豊田線くらいで、名古屋に乗り入れている小牧線は小牧〜犬山間は単線で
すし、河和線は最後のところが単線です。そして、西尾線、三河線、知多新線、
尾西線、豊川線、蒲郡線は大半が単線です。
単線ということは自ずと本数制約がありますし、その上、2〜4両編成が多く、ワン
マン運転線もあります。蒲郡線は廃線の危機に瀕していますし、三河線は知立
以北の山線と呼称されている区間の末端部、知立以南の海線と呼称されている
区間の同じく末端部は数年前に既に廃線化されました。
東京圏・大阪圏に比べ鉄道網自体の路線が少ないうえに実情は更に貧弱という
わけです。
その要因として、いつも言われていることに『愛知県は車社会だから』というのが
あります。しかし、元をただして考えたような考察をあまり目にしていません。
すなわち、そもそもなぜ車社会化してしまったかということです。
前述で愛知県は人口第4位と述べました。で、その面積は第27位であり、人口
密度は第5位と人口第5位、面積39位の埼玉県と逆転して一つ下がっています。
まず、東北部の鉄道空白地帯は山林地域です。また、愛知県内の市の人口を見
ますと県の約1/3弱の約226万人が集中している名古屋を除くと30万人以上は5
市しかなく第2位の豊田市でも平成の大合併でやっと40万ちょっとです。
(以上はここ参照)
実は愛知県は中京工業地帯の中核をなす工業県で全国規模の本社工場や大企
業の工場が沢山ありますが、一方で有数の農業県なのです。安城市は『日本の
デンマーク』と称せられてきた街です。政令指定都市名古屋市でさえ西部地域に
広大な田園地帯を有しています。
結局、前述の工場は都市部に集中して存在しているのではなく、田園地帯・山林
地帯にばらばらに散在しており、また、都市にける集中市街地部分は比較的狭い
というわけです。
したがって、どうしても居住地から会社・工場まで鉄道でうまく往復できる人は
限られてしまう訳で、市街化地区にない工場は従業員用駐車場が人集めのための
必須事項となり、勤務で日常的に車通勤されている方は、時間的制約がなく荷物
運びも楽な車をレジャーにも使い続けてしまうのは必然的なんですね。
これが愛知県の特異な事情なわけで、鉄道が弱体化している根本要因なんです。
乗る人が少ない⇒本数が少ない⇒ますます乗る人が減るという悪循環であり、ほん
の限られた一部の比較的利用者の多い地区の少ないパイをJRと私鉄で奪い合うと
いう図式にさえなってしまっています。名鉄が弱体化してきた要因はまさにそこにあ
るんですね。私から見れば何かちぐはぐな投資してしまっている気がしているんです
けどね。知多新線とか羽島線の失敗などはまさにそんな気がしています。
世界的企業の自動車会社であるトヨタ自動車があるからでは決してないのです。
トヨタ自動車はむしろ公共交通機関利用を社員に推奨しているとか。愛知環状鉄道
は平日、豊田市駅から工場そばの駅までシャトル電車を走らせているくらいですし、
東北地方の工場への部品輸送には専用コンテナで鉄道輸送をしています。
それに、愛知県はトヨタ車ばかりではなく色々なメーカの車が走っていますし、県内
にはトヨタだけでなく三菱自動車の工場などもあるのです。
車も使いますが、鉄道が好きな私にとっては市内線のあおなみ線さえ苦戦しているこ
とを思うと寂しい限りなんですが・・・
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