「自然数(Natural number)」の定義の問題(’18/3)

素数の本を読んでいるのですが、素数の定義として「1と自分自身以外に約数を持たない自然数」とありました。
当初、自分が知っている当たり前の定義で何も気にもしなかったのですが、ふと、「そういえば、『自然数』って、{1,2,3,・・・}か
{0,1,2,3,・・・}(すなわち、0を含まないか含んでいるか)のどちらだったっけ?」について私の中で曖昧になってしまいました。
この本の著者が素数の定義に使っている「自然数」は明らかに「0を含まない正の整数{1,2,3,・・・}」の意味で使われています。
それで、内外サイトを検索してみました。そして、興味深いというか、私的には「なんだかなぁ」という思いをしてしまいました。

日本の中学の教科書では、文部省検定要領に従って、

 自然数 : 1,2,3、・・・  @

と書かれていて、0を含まない定義になっているそうで、これに従えば、

 自然数=正の整数

となります。

しかしながら、やはり、0を含めて

 自然数 : 0,1,2,3、・・・  A

とする数学者もおられるとWikipediaに書かれていて、

 @の定義は主に「数論」で使われ、Aの定義は「集合論、論理」で使われている

とありました。

しかし、これって、「それでいいのだ」で済ませてしまうような話ではないと私は思うのですが。どちらの定義かで誤解を招く
恐れが絶対あります。調べていたら、センター試験で、どちらで見るかで答えが異なる問題が出て物議を醸したという話も目
にしました。それで、きちんとされていらっしゃる数学者の方は、{1,2,3,・・・}は「正の整数」、{0,1,2,3,・・・}は、「負でない(非負)
整数」
という言葉を用いて混同を避けておられるようなことも目にしました。
日本語サイトには、初等教育では「簡単のために」@と教えていて大学になったらAなのだというのならはそれこそ不自然
だというような批判がありましたが、全く持って同意します。むしろ、それで何も疑問を感じない方がおかしいですよね。学徒
からは、高校までに習ってきたのと違うという当然な指摘質問が出るそうです。

で、海外サイトを調べてみて、またまた驚きました。どうやら、イギリスとかフランスなど欧州の初等教育では、Aと教えてい
るそうですが、アメリカでは日本と同じく@と教えているそうです。で、国内サイトで、このことを知っている方が、帰国子女
は混乱するのではないかと・・・全国学校能力検定試験か何かで、次の中から自然数を選べという問題がでて、その中に0
があったそうで、正答とされたものには、文部省検定要領通り、0は含まれていなかったそうで、確認してみたら、出題側は
どうやら、そういう海外での教育を受けた帰国生徒のことまで気をまわしていなかったそうです。これはまずいですよね?

数学者はそういうことをどう捉えられているのでしょうか?どうやら、先にされていた定義は、@で、1930年代にある数学者
がAと定義し、そちらが便利だと感じている方たちがAとしているようですが、数学界全体の合意を得ているわけではなく、
伝統的な@とする意見も多々あって、二つもの定義が存在してしまっているようです。

ただ、海外サイトあったていて、知ったのですが、アメリカでは、

 Natural Number :positive integer(正の整数) 1,2,3,・・・
 Whole Number :non-negative integer(負でない整数) 0,1,2,3,・・・
 Integer:(整数) ・・・,-2,-1,0,1,2,・・・


と教えているそうです。Whole Numberという私には初耳の言葉が出てきて調べてみましたら、日本語訳はWhole Numberも
Integerも共に「整数」と訳されていました。で、日本語サイトでは、それを示されている方もおられましたが、Integerと同じ意
味で説明されているQ&Aがベストアンサーになっていてぽか〜んとしてしまいました。だから私はQ&Aには信頼を置いて
ません。また、日本語Wikipediaで「整数」を調べてみてください。英語としてInteger Whole numberと併記されています。
ま、大変失礼ながらWikipediaってそんな程度だくらいにしか私は信用していませんけどね。

このWhole Numberという用語については、英語版Wiki-Talkで沢山議論がなされています。確かに、Whole Number=Integer
という意見もあります−数学者はWhole Numberなど使っていないとも−が、上のアメリカの初等教科書定義は同意者がい
ますので事実のようです。

これって、どう思われますでしょうか?大学という所は、学者が自分の信じるところを授業で述べたり本で書いたりします。
ですから、それを聞いた・習った学徒はそうなのだと思うわけです。要するに、学者の派閥に学徒も自然に巻き込まれている
わけで、それがこういうところで異なる意見として争点になるわけです。いくつもの教科書や本を調べるというのはよほどモチ
ベを持っていないとまずやられません。
何かと本コーナーでは物理学批判をしているのですが、数学でさえ、こんなエレメンタリーなところで曖昧さがあるとは思いも
せずがっかりしてしまいました。あと、そもそも科学は欧米発、日本語に訳するときにも、最初の訳でそれを紹介した学者の
主観が入っていることはちょくちょく伺えますので気になっています。ネイティブでないと余計に誤解したりしないかと。

 ('18/4)

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