エーテルに関する興味深いアカデミア物理学者の記事紹介(’17/7)


海外サイトを当たっていましたら、The concept of ether from the standpoint of modern science
という記事を発見しました。St. Petersburg State Polytechnical Universityの理論力学部門の女
性の教授であるElena A. Ivanova博士の書かれた記事です。「アカデミア物理学部門」の教授が
既にアカデミア科学界でも一般社会でも死語扱いされ、タブー視されている「エーテル(Aether)」
を取り上げ「現代物理学の見地からのエーテルの概念」というタイトル記事を書かれてい
ることに驚きを感じました。

私もご多分に漏れず、長い間「エーテルは否定された昔の概念だ」と思っていたのですが、海外
サイトにあった「プラズマ宇宙論」のサイトで触れられ、そこからリンクされていた「反相対論サイ
ト」(⇒ANTI-RELATIVITY)などで「エーテル(現在は"Aether"と呼称 されている)」に肯定的に言
及されていたため、それを目にした時驚いて海外サイトを検索して2014年にエーテルの復権?
という記事を書いたことがありました。タイトルに「?」を付けたくらいでしたからそのときは「へ〜
え、海外ではそういうこともタブー視されないで話題になってるんだ」くらいで、それ以上追及も
しませんでしたし何を書いたかもかなり忘れてしまっていました(^_^;)

しかるに、偶々ネット上にあったweb論文から、現在「マックスウェルの方程式」と称せられている
ものはMaxwellが作った「電磁場の一般方程式」としてのオリジナルのものではなく、Maxwellの死
後にHeavisideによって書き換えられたものであることを知り、その最初のオリジナル式を示した
1865年の論文やその研究を開始した頃の1855年の論文を入手して読んだ結果と複数の海外サ
イトの主張を読んでいた結果を勘案して、「死語になってしまってタブー扱い」されている現在、
こんなことを言うのは端から「とんでも」扱いされてしまいそうですが、"Ather"の存在が私の中で
は復権し、最近また新たに検索しなおしました。で、この頃物忘れが激しいのですが、短い記事
ですけど驚くべき前述の記事をコピーして和訳をしかけていたファイルをホルダーの中に発見し
てきちんと読んだ次第です。

まず、前書きで、

 エーテル理論に関するideaにおける興味は科学史家の中だけで継続している
 のではない。この事実は、過去の偉大な科学者の原稿の再公開を示す本の出
 版、インターネットにおける異なるサイトでの原稿、インターネットフォーラムに
 おけるこの課題についての議論、そして現代エーテル理論の発展に捧げた調
 査によって、証拠づけられている。
(※1)

とし、

 What is the reason for the interest in scientific ideas which were rather
 convincingly refuted a century ago? Do these ideas a grain of truth that
 will allow them to be reborn in a new capacity?If these ideas are assumed
 to have prospects for development in the framework of rational science
 then in what direction they can be developed?

 (一世紀前にかなりもっともらしく拒絶された科学ideaに興味がもたれる理由は何か?
 これらのideaは新しい立場においてそれらが復活されることが許されるであろうこと
 の真実の一粒か?もし、これらのideaが合理的な枠組みの中での発展に対して展
 望を有していると仮定するなら、どの方向でそれらは発展できるか?
)

と述べ、

 Now we try to answer these questions.
 (今、我々はこれらの質問に答えようと試みている)

と書いています。

どうですか?日本人が如何に「井の中の蛙」であるかを(※1)が示しています。この(※1)のサイト、
インターネットフォーラムというのは見れ ば明らかですが、「海外サイト」のことです。日本人の大
半は、「一世紀前にかなりもっともらしく拒絶された科学idea」と思い込んでいるでしょう。話題に
出すことさえ思い浮かばず、もし肯定的に話題にしようものならたちまちのうちに「科学を知らな
いとんでもさん」扱いにされるでしょう。そういう私も以前はそうでしたから偉そうなことは言えま
せんが(^_^;)。しかしながら、しがらみもタブーもない我々一般下々ではなく、「アカデミア物理学
者」がそれに触れた記事をネット上で書いているという海外の現状をまずは認識していただきた
く存じます。

本論から引用します。
まず、"What is the reason for popularity of the ether theories?(エーテル理論の人
気の理由は何か?)
"というタイトルが示されています。
冒頭で、

 The concreteness of ideas and clarity of their statement as well as
 visualization of models based on analogies with the environment are
 the qualities inherent in most of works on the ether theory

 (ideaの具現化と彼らのステートメントの明確化は、環境とのアナロジーに基づく
 モデルのビジアル化と同様、エーテル理論に関する大部分の仕事において固
 有の質である。
)

和訳が下手で申し訳ありませんが、

 これがエーテルについての仕事をアピールする理由である。そして、これが
 エーテル理論に基づく仕事と現代物理学の概念を描く仕事との間の主要な
 相違である


と述べています。そして、こんなことも言っています。

 現代の「場」の概念と昔からの「エーテル」の概念との差は何か?
 数学によれば、場とエーテルは偏微分方程式で記述されるので
 差はない


とし、

 我々はエーテルの存在を、我々が質量のある物体の存在を意味するよう
 には感知できないが、容易にエーテルを想定することができる。場は抽象
 的概念である。


とその基本的な相違点を示しています。

その上で、核心に触れることが書かれています。

 量子力学の発展は現代物理学を純粋な抽象の道に導いた。しかしながら、
 この出来事の状態を望んでいる物理学者は誰もいない。例えば、量子力学
 についての論文は次の言葉で始まっている。「知られているように、力学的
 エーテルの排除は電磁波の伝搬に必要な媒質を捨てることを意味してい
 ない。多くの研究者の注目はこの媒質、物理的真空の媒質に惹かれたの
 は合理的である」


こんなことが書かれているなんて、全く私には初耳で驚きました。更に、

 しかし、もし物理的真空が媒質であると主張されるなら、それとエーテルと
 の間にどんな差があるか?実際、何も差はない


と述べ、

 量子力学の発展は空の空間(真空)は物質のそれに類似したある
 いくつかの性質が与えられていることを導き出している。


とした上で、E. Whittakerと言う方が"A history of the theories of ether and electricity(エーテル
と電気の理論の歴史)"という本の中で述べている次の言葉を引用されています。

 " it seems absurd to retain the name of the "vacuum" for the category
 having so many physical properties and that the term "ether" is quite
 appropriate

 「多くの物理的性質をもつカテゴリーに対して『真空』の名前を維持することは不合
 理に見え、『エーテル』という用語が全く適切である


     
      E.Whittaker
  [イギリスの有名数学者(1873-1956),英国の科学で最も権威のある
   名誉賞Copley Medalを受賞、数学で多くの業績を残したばかりで
   なく、天体力学と物理学の歴史にも取り組んだ(from Wikipedia in English)]

驚きましたので、ほとんど和訳して引用してしまいました。

勿論、著者の言及するところは昔の理論をそのまま復活させる意図ではありません。
次の"The failure of models based on the translational degrees of freedom(並進自由
度に基づくモデルの失敗)
"という節の先頭で、

 並進自由度に基づく種々のエーテル理論(液体エーテル理論、実際はこれまた液体
 エーテル理論である渦流理論、ずっと複雑なレオロジー(流体学)に類似したエーテ
 ル理論)が18〜19世紀に多くの科学者によって暗示された。これらの理論は彼らの
 失敗が明らかなように十分に発展した。これらのモデルに戻ったり、既に過去の科
 学者によってなされたことを繰り返すのは無意味である。


と述べています。そして、この記事の核心につながるのですが、

 18〜19世紀の力学の発展のレベルは、当時の科学者に全ての既知の非力学的プ
 ロセスと現象を適切に記述できるモデルの発展を許さなかった。しかし、この
 ことは、このようなモデルが存在しないことを意味していない


と述べています。

そして、次の"Models based on the rotational degrees of freedom and prospects for
development of the ether theory(回転自由度に基づくモデルとエーテル理論の発展
の展望)
"という節で著者らの新しい取り組みについて述べています。

まず、冒頭で、最近私が言及した19世紀時代のMaxwellやKelvin卿に言及があり、

 連続的保持される回転自由度によりモデル化されたエーテルのideaはMaxwll,Kelvin,
 FitzGeraldによって表現された。しかし、これらのideaは当時の科学者によって十分
 には遂行されなかった。


そして、これこそ私が既に指摘してきたように、

 相対性理論の創設以後、エーテル理論に関する全ての研究は止まった。

と書いています。エーテルはギリシャ時代の昔から科学界では、その存在が信じられていたもの
の、ビジュアルなものでもなく、その性状は不明のままでしたが、19世紀の初頭になって1世紀に
も及ぶNewtonの光微粒子説が、それに反する決定的実験実証結果から否定され、光波動説が
定説になり、「光学エーテル」という考えが出て来たこと、そして、Faradayの電磁誘導関連の数々
の電磁気に関する画期的発見と先験的概念の提示がMaxwellの理論化に繋がり、ようやくエー
テルの具体的研究が進捗し始めていたときに、1905年のEinsteinのSRTの発表とエーテル不要
発言がそういう研究を全てストップさせてしまったのは史的事実です。

しかしながら、著者は続けて、

 多くの年月の後、20世紀の終わりに、それらへの興味が再開した。

という驚くべきことを述べています。特に日本の我々一般下々はまるで知らない話です。

まず、

 Now the development of models of ether based on the rotational
 degrees of freedom represents very promising line of investigation.

 (今や回転自由度に基づくエーテルモデルの発展は非常に有望な研究の進路
 を示している。
)

と書いています。そして
一方ではとして

 この十年間の回転自由度と共の連続性力学で、本質的な発展とハイレベルの
 数学公式化が達成された(Cosserat continuum)


が一方では

 真空(エーテル中と同じ)で起きている種々の物理学的プロセスを述べるために
 これらのモデルの適用を試みたのを知っているのはほんのわずかだけである


と述べています。そして、著者の師であるP.A.Zhilin博士の本の中に言及し、そこでは

 ・回転自由度のみに基づくエーテルモデル(電磁場)が構築されていること
 ・回転自由度のみに基づく媒質モデルが構築されていること
 ・特別なケースとして、媒質の数学的詳述がシュレディンガー方程式や
  クラインゴルドン方程式に還元されることが証明されている
と述べ、

 Thus, modeling of the ether by various media with rotational degrees
 of freedom is an area of research where one can hope to obtain new
 interesting results.

 (このように、回転自由度での種々の媒体によるエーテルのモデル化は新しい
 興味ある結果を得ることが望められる研究分野である
)

とまで述べています。

どうですか?「何かがなにもないところに作用する」とか「何もない『真空』が物理的性状を示す」
などという不合理・非論理的説明で納得したりうやむやなごまかし説明を良しとしないアカデミア
物理学者が欧米にはいらっしゃって本とかウェブでそれを積極的に発信されているという事実を
どう思われるでしょうか?私が素朴に感じたことがド素人の私ゆえのものではなかったというこ
とです。

 ('17/7)

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