続・相対性理論への疑念(35)(’17/6)

〜興味深い指摘ASRTには実際には19個の『仮定』あり(2)〜

The Nineteen Postulates of Einstein's Special Relativity Theory と言うウェブ論文からの引用
の続きです。

--------------------------------------------------------------------
postulate11 :「特定の物理空間の複数回測定(multiple measurements)
          の仮説(postulate)

--------------------------------------------------------------------
[observed by]
Valentin Danci−"Plane Geometry in Spacetime". 2009

著者自らの指摘です。

著者が示している関連するEinsteinの言葉:

 "[...] light is always propagated in empty space with a definite
 velocity c
[...]".
 - "Let us in "stationary" space take two systems of co-ordinates,
  [...] to the origin of one of the two systems (k) let a constant
  velocity v be imparted in the direction of the increasing x of
  the other stationary system (K)
[...] We now imagine space
  to be measured from the stationary system K by means of
  the stationary measuring-rod, and also from the moving system
  k by means of the measuring-rod moving with it
"(1905)
 「『[…]光はいつも一定速度で真空を伝搬する』
 −さあ、『静止』空間において二つの座標系をとろう、
[…]二つの系の
 一つ(k)の原点に対して、一定速度vを他の静止系(K)のxの増加する
 方向に与えよう
[…]我々は今、空間を静止した測定棒により静止系K
 から、そしてまた、それと共に動いている測定棒により運動系kから測
 定されると考える


著者は、この記述に対して、この未確認の主張は次のように二重になっているとして指摘されて
います。

 (A)空間は一つの特別の物理的真空である
 (B)空間は異なる慣性(座標)系から異なって測定される


そして、

 Einsteinは、時間の概念に対しては、異なる系で測られた異なる時間があることを
 証明しようと試みたけれども、一方で、空間に対しては、同じような例示の仕方で
 同じこと(異なる系で測定された異なる空間があるということの証明)はできなかっ
 た。


と指摘されています。要するに、Einsteinは「時間は特別の物理的実在ではない」(すなわち、「絶
対時間の否定」のことでしょう)としながら、一方で、「空間を唯一のものとできる」(それを仮定する
必要がある)としていると指摘されていて、それについては、

 彼は初期に、光は真空中を伝搬すると述べたので、彼にとって、空間を互いの運
 動系に対して物理的に静止させるのは困難であった


からとし、更に、

 このように、彼はただ、その測定が異なる系からなされた空間についての測定を
 区別する必要があっただけである


と指摘されています。

う〜ん・・・穿った見方だという気もしますが、そして、Einstein自身はそんなこと考えていなかった
のではないかと思うのですが、確かに、こういう解釈ができてしまうんですよねぇ・・・
私は、Einsteinは、「現実の『測定』」とは何かを十分考慮しないまま、言葉・概念だけの『測定』と
いうのを云わば「ご都合主義的」に論理に盛り込んだだけだと思っているのですけどね。なぜなら、
彼は『具体的な測定方法』については全然言及していなかったからです。そして、『観念』が思考
に先行するEinsteiniansはそのことに気が付かないまま、このEinsteinの奇妙な論法に納得してし
まって、いかにもそれが正しいことであると言う考えを広めてきたわけです。
隅々にまで「論理」の整合性を問われる「数学」の世界とは違い、大変失礼ながら、中途半端に
数学的心を持っていた方々が、都合の良い所だけ「これは『数学』ではなく『物理学』なのだ」と
考えて中途半端な論理で構築されたものを納得してしまっただけではないかと思うのです。その
意味で、SRTの論理のもろさを鋭く指摘しているのではないかと思うのですが如何でしょうか?
早くにSRTに魅せられてしまった「数学的心の強い」Pauliなどがよい例であり、

 "there exist a triply infinite set of reference systems
 moving rectilinearly and uniformly relative to one another
"
 「互いに相対的に等速直線運動する三重の無限の参照系の組が
 存在する


などと書いているそうです(1921)

このpostulate11に対して著者は次の結論を与えています。

 ・1905年の導入テキストそしてその後のテキストにおいて明確に述べているが、
  postulateと表記しなかった
 ・SRTには必須である
 ・論理的には無効である−後述の空間の均一性の第十五postulateと矛盾する
 ・実験的に証明されていない  


--------------------------------------------------------------------
postulate12 :「二つの系のX軸に対して同一の符号を選択(chosen sign)
          る仮定(postulate)

--------------------------------------------------------------------
[observed by]
P.S.C. Bruskiewich − "A Simple Derivation of the Equations of Einstein's Theory of
              Special Relativity". 2003

関連するEinsteinの言葉:

 "Let the axes of X of the two systems coincide"(1905)
二つの系のX軸を一致させよう

このpostulateに対し、P.S.C. Bruskiewichと言う方が、

 "[...] to go from one equation in one frame of reference to an
 equation in the other frame of reference, the prime variables
 become un-primed and vice versa and the velocity merely
 changes sign. The Third of Einstein's postulate is evidently
 a heuristic postulate.
"
 「『[…]一つの参照系における一つの式からもう一つの参照系における
 一つの式に進むと、最も重要な変数が主要なものではなくなりまたその
 逆になり、速度はただ符号が変わるだけである。Einsteinの第三の
 postulateは明らかに試行錯誤的なpostulateである


と述べて、これを「第三のpostulate」としているようですが、著者は符号についてのBruskiewichの
観察は「それ自体」は正しいが、符号変化の存在は異なる要因を持っていると指摘され、「相対
性原理(principle of relativity)」に徹底的に拘ったユニークな論を展開されています。
ここにはさわりしか書かれていませんが、これに関しては、The core mathematical error of
Einstein's Special Relativity
(2016)というところで自らのウェブ論文の概要紹介をされていて、そこ
から同じタイトルの詳細の27ページのpdf版ウェブ論文にリンクされています。
down loadしていますが、ここではそれについては触れません。

私のpostulate1「相対性原理」に対する見解は既に前述しており、Einsteinが1905年時点で考え、
Einsteiniansが今もそれを金科玉条に信じているpostulate1には反対の立場であり、何かこの相
対性原理自体を逆手に取ったようなこの方の論に対する私の賛否は保留にしておきますけど、
面白い指摘だとは思います。尚、著者は本名、顔写真も出されています。

ちょっと前置きが長くなりましたが、ここで書かれていたことを引用紹介しておきます。
Einsteinの「二つのX軸を一致させる」という"postulate"は、ローレンツ変換の標準的な代数的形
式において、一つの系が+vを持ち、他の系が-vを持つこと
を述べていて、このpostulateなしでは
ローレンツ変換の標準形は決定できない
としています。
このローレンツ変換による「標準的な代数的形式」は以下です。
・(x,y,z,t)→(x',y',z'.t')
     (1)
・(x',y',z'.t')→(x,y,z,t)[逆変換]
     (2)
これに対して著者は、真の相対性原理を考えるなら、実験系は下図となるはずであると主張され
ています。その「真の相対性原理」ですが、「全ての系で同じにならねばならない(※11)」という一
般的?(私はEinsteiniansや物理学者がそう信じているだけで、実証証明されたものではないと思
うのですが)な言説に拘ったものです。

  
実験の等価表示は系の原点O、O‘がそれぞれXとX’の正方向に動く必要があるだろう。結果
として、各々の系で他の系について測定された相対速度は同じ符号になると主張されていて、こ
れに従う「非標準代数的形式」は下記となると主張されています。
・(x,y,z,t)→(x',y',z'.t')
     (3)
・(x',y',z'.t')→(x,y,z,t)[逆変換]
     (4)
確かに、この形なら、どちらの系においても全くローレンツ変換は同じとなり(※11)と完全に整合
性があります。しかし著者は、その上で、このとき、数学的矛盾と電気動力学的矛盾が起きると
されています(→それは前述の2016年の論文を見よということです)。
要するに著者の主張は、@Einsteinの置いたpostulate「二つの系のX軸を一致させる」こと自体
が、自分が明示的に置いたpostulate1「相対性原理」に反している上、きちんとpostulate1に従
うときに出てくるものは結局は数学的にも本人の考えた電気動力学的にも矛盾が出てくるので、
STR自体が矛盾しているという指摘です。
このpostulate12に対する著者の結論は以下です。

 ・1905年の導入テキストそしてその後のテキストにおいて明確に述べているが、
  postulateと表記しなかった
 ・SRTには必須である
 ・どのようにしてまたなぜ一つの系が"+"で、他の系が"-"であるかを説明してい
  ないので、論理的には無効である
 ・実証証明されていない


--------------------------------------------------------------------
postulate13 :「二つの系の初期の一致(original coincidence)の仮定(postulate)」           
--------------------------------------------------------------------
[observed by]
Valentin Danci[著者自身:但しpostulateとして述べていない]− "The core mathematical"
          error of Einstein's Special Relativity"(2016)

関連するEinsteinの言葉:

 "Let us in "stationary" space take two systems of co-ordinates
  [...]and issuing from a point"."[...]Let the axes of X of the two
  systems coincide"."
[...] τ(0,0,0,t)
"(1905)
「静止」空間に、二つの座標系を取ろう [...]そして、一つの点『.』を起点とする
 
[...]二つの系のX軸を『.』で合わせよう[...] τ(0,0,0,t)


著者が云っている通り、一世紀以上、特殊相対性理論についての全ての文献で、この二つの座
標系の原点と時間を一致させるというのが使われてきています。そして、著者は、「誰もこのS
RT特有の(pecuiliar)要請−二つの異なる慣性系の時系列において唯一一致している点の存在
−に注意を払っていない」と指摘されています。

 なぜ二つの系が一つ、唯一の一致点だけ持たねばならないのか?
 どのようにしてその一致点を確立するのか?


と。確かにこの指摘は当たっていますね。皆、何も不思議にも考えないでスルーしている・・

で著者のこのpostulate13に対する結論は・・・

 ・1905年の導入テキストそしてその後のテキストにおいて明確に述べているが、
  postulateと表記しなかった
 ・SRTには必須である
 ・実証証明されていない  


--------------------------------------------------------------------
postulate14 :「ガリレイ変換とローレンツ変換が同時に成立する妥当性
(simultaneous validity)
仮定(postulate)

--------------------------------------------------------------------
[observed by]
Valentin Danci[著者自身]

関連するEinsteinの言葉:

 "[...]to the origin of one of the two systems (k) let a constant
 velocity v be imparted in the direction of the increasing x of
 the other stationary system (K)
[...]To any system of values
 x, y, z, t, which completely defines the place and time of an
 event in the stationary system, there belongs a system of
 values ξ,η,ζ,τ, determining that event relatively to the
 system k, and our task is now to find the system of equations
 connecting these quantities.
[...]If we place .x' = x - vt. , it
 is clear that a point at rest in the system k must have a
 system of values x', y, z, independent of time.
"(1905)
[...]二つの系の一つ(k)の原点に対し、一定速度vがもう一つの静止系
 (K)のxの増大する方向に与えよう
[...]静止系において、位置と出来事
 の時間を完全に定義するx,y,z,tの値の任意の系に対して、系kに相
 対的に決められる出来事を決定する値ξ,η,ζ,τの系があり、我々
 の仕事は、今、これらの量を結びつける方程式系を見出すことである
 
[...]もし、x' = x - vtとおくと、k系に静止している点は時間に独立な値
 x',y,zの系をもたねばならない


このpostulateこそ私が最初に「矛盾している」と疑念を抱いたものです。"Einsteinians"は「信者」
ですから当然のこととして、多くの人がこれに何も疑問を抱かないことが私には不思議でなりま
せん。間違いなく多くの人々は「ニュートン力学」が負ってたつ一番の基本的な原点をわかって
いないからだろうと思いますが。そして、1905年のEinsteinも間違いなくわかっていなかったので
す。わかっていたらこんな矛盾に満ちたことをしなかったと思います。

著者は、「明らかに、Einsteinのローレンツ変換の導出において、運動系kに付属する観測者は、
静止系Kは、kの点x'の位置を見積もるのにガイレイ変換が使われる
と信じているようになされて
いる」と指摘されています。

  
著者は上の図で示されていますが、まさに、著者の指摘通りで、

 Einsteinは古典力学を新しい力学で置き換える必要性を示す過程において、
 実際には「新しい」変換を無視し、代わりに「古い」ガリレイ変換を選んでい
 るので自身で矛盾していた


のです!!著者は更に、Einsteinの誤りは明らかに、

 の代りに  とおいたこと
と指摘されています。私の主張と全く同じです。勿論のことですが、

 はK系からk系への最初には知られていない変換です!
著者の指摘通りで、

 Einsteinの論法の目標(goal)はの形を求めることであるので  
 自然の法則として、効果において、古いガリレイ変換よりよりよいと仮定されていると
 主張するならば、立場上、それを無視するのは不合理である


のです。これは論理的帰結です。そして、驚くべきことにEinstein自身は、1910年に

 "If one abandons the ordinary kinematics and builds a new
 kinematics based on new foundations, one arrives at
 transformation equations different from those given
 above.
"(1910)
 「もし人が通常の運動学を捨てて新しい土台に基づく運動学を構築
 するなら、人は、これら上記で与えたのと異なる変換式に到達する


という、自分がしている説明と矛盾する全く寝ぼけたことを述べています。

私に言わせてもらえば、ことは簡単です。
 は実証観測からしか出てこない!
です。それを、Einsteinは何も実証観測もせず、自分の脳内だけで作り上げようとしたわけで、自
分の知見の中にあった「ガリレイ変換」を何も考えないまま使っただけなのです。そしてそれは、
前述のように、彼が「ニュートン力学」がよって立つ「土台」を知らなかったゆえだろうと確信して
います。こんなものは矛盾以前の話です。「数学以前」の話です。子供でも分かる論理です。常
識とかそんな話ではないのです。それなのに、Einsteiniansは論理をまるで見ないで「それでいい
のだ」と信じて言っているんです。彼らには宗教信者を攻撃する権利はありません。

私は、Lorentzが1904年に、あんなillusionのLorentz Ether Theoryを出さなければ、SRTは出て
くることもなかったし、魅せられる人もなかったと強く確信しています。いいですか?γは「アイン
シュタイン変換」と言う名前ではなく、「ローレンツ変換」という名前ですよ。なぜだか考えてくださ
い。そして、ローレンツ変換など金輪際実証されたためしはありません。

--------------------------------------------------------------------
postulate15 :「空間と時間の一様性(homogeneous)の仮定(postulate)」           
--------------------------------------------------------------------
[observed by]
Wolfgang Pauli-""Theory of Relativity"(1958)(1921年の初期の仕事に基づく)
Per-Olov Löwdin -""Some Comments on the Foundations of Physics"(1998)
          (1939年からの初期の仕事に基づく)

私が誤解しているのかもしれませんが、これについてはかなり違和感を感じていますけど、とに
かく著者の主張を紹介しておきます。

関連するEinsteinの言葉:

 "[...]it is clear that the equations must be linear on account
 of the properties of homogeneity which we attribute to
 space and time.
"(1905)
[...]その方程式は、我々が属する空間と時間の均一性の性質のため
 リニアでなければならない


著者によれば、この仮定(assumption)はその後、多くの相対性理論学者によって永続されてきて
いて、たとえば、Pauliは

 "[...]All writers start with the requirement that the transformation
 formulae should be linear. This can be justified by the statement
 that a uniform rectilinear motion in K must also be uniform and
 rectilinear in K'. Furthermore it is to be taken for granted that
 finite coordinates in K remain finite in K'. This also implies the
 validity of Euclidean geometry and the homogeneous nature of
 space and time.
"
 「[...]全ての著者は、変換公式はリニアであるべきという必要条件で開始
 している。このことは、Kにおける均一の直線運動がまた、均一でK’で
 直線であらねばならないということで正当化できる。更に、Kにおける
 有限座標がK’で有限であることは当然のことととられるべきである。
 このことはまた、ユークリッド幾何学と空間・時間の均一な性質の妥当
 性を暗示している


と言っているそうです。著者は、この"postulate"とについて、

 我々は断言できる:空間の性質(物理的存在として)は異なるIRFに位置する
 全ての観測者にとって同じと定義できないので、全ての観測者による測定の一
 致なしでは、空間の均一性は定義できない


としてSTRの説明は誤りであると主張されていますが、私自身ここで触れられていたことだけで
はその主張が理解できませんでしたので、著者が先に出されている関連のウェブ論文で詳細に
述べられていたことについて、先のpostulate12と合わせて別途、別articleとして紹介・考察する
予定です。

--------------------------------------------------------------------
postulate16 :「系の時間のその他の系の時間と空間の依存性(a system's
time dependency on another system's time and space)
の仮定(postulate)

--------------------------------------------------------------------
[observed by]
Valentin Danci[著者自身]

関連するEinsteinの言葉:

 "We first define τ as a function of x', y, z, and t."(1905)
我々は最初に、τをt',x,y,tの関数と定義する

これについて著者は、強烈な批判をされています。まず、

 この、τがx', y, z,tの関数であると言う仮定は完全に不当なものである。
 τが物理的にx'またはyまたはzまたはtまたはそれらの任意の組み合わ
 せと関連することができると言うことを仮定に入れる理由はない


と主張されていて、その理由として、

 電気動力学と力学において、 互いに離れて起きている物理現象は必ず
 しも要因的に関係してはいない、それゆえ、それらを互いの関数である
 として述べているので、強制的にそれらの個々の面を関係づけようと言
 うこころみは不合理である。
 20世紀以前の物理学の数学的関係は、いつも、結果的に関連されるか
 逆に無関係かを考えるために、異なる現象に共通する面は何かを発見
 する目的での実験があったので、強制的に確立されては来なかった


と述べられています。その上で、なぜEinsteinはこのpostulateを入れたかについて、

 このpostulateは、その後彼の多くの他の仮定を支え推測を仮定するために
 望まれた、役立つ整理におけるこれらの変数を関連付けようと言うEinstein
 のただの願望にすぎない


と強烈な皮肉をされています。そして、このpostulateに対する結論として下記とされています。

 ・1905年の導入で明確に述べられ、その後、SRTの全てのテキストでそれとなく
  深くしみこまれてきた
 ・SRTに必要であった
 ・それは異なる量の間の強制的な関係であるので、論理的かつ数学的に無効である
 ・実験的に証明されていない


ま、恐らく「仮定ならいいだろう」と言う方達もおられると思いますが、相対性理論学者は「仮定」
としておらず、あたかも、物理的に当然な風に云って来たという事実は曲げられません。その意
味でこの方がこういう主張されていること自体は正当性はあると思います。
「実証されない」限り、どんなにもっともらしくても人間様が脳内で考え出した「仮定」でしかありま
せん。そしてこれは、Einsteinが考えた「仮定」でしかないのです。そして、自然は時に「人間様」が
考えの及ばないことをするのです!!人間はもっと謙虚になるべきです。

--------------------------------------------------------------------
postulate17 :「慣性系間で測定された慣性速度同一(identical inertial speed)の仮定(postulate)」           
--------------------------------------------------------------------
[observed by]
Per-Olov Löwdin-"Some Comments on the Foundations of Physics". 1998. (Based on
            early works since 1939).
P.S.C. Bruskiewich -"A Simple Derivation of the Equations of Einstein's Theory of
            Special Relativity". 2003

関連するEinsteinの言葉:

 a)"[...] assuming equality of relative motion in the two cases
  discussed
"
  「議論されている二つの場合における相対運動の等価性を仮定する
 b)"[...][...] a is a function φ(v) [...]we introduce a third system
  of co-ordinates K
[...] such that the origin of co-ordinates
  of system K moves with velocity -v on the axis of ξ
"
  「[...]aは関数φ(v)である[...]我々は座標軸Kの第三の系を導入する
  [...]K系の座標の原点がξ軸上で速度-vづ動くような

著者は上の二人の言葉を批判的に引用されています。
Per-Olov Löwdinは、1939年に"space is symmetric with respect to velocities"(空間は
速度に関して対称である
)と言い換え、これをpostulateと宣言しているそうですが、彼は1905年
のEinsteinの記事をはっきりとは引用していないと批判されています。
また、P.S.C. Bruskiewichは、2003年に、これを"Einstein’s Fourth Postulate of Special
Relativity
"(Einsteinの第四postulate)と名付け、

 "It is understandable that the Lorentz transformation involves
 both v and c because these are the only velocities observers
 in the two frames of reference can agree upon.
"
 「ローレンツ変換は、これらが二つの参照系の観測者が合意できる唯一
 の速度であるので、vとcを含むことは理解できる


と述べているようです。

著者は、

 このpostulateにおいては、「空間」は唯一のものであり、また、「空間」は互い
 から運動状態にある両方の系に対する絶対的な性質:速度vを提供している
 ことは明らか


であるとし、このpostulateも他と同様、大部分の相対理論のテキストで、少しも論じないまま、そ
れとなく使われて来ていると批判された上で、更に、

 このような暗黙の採用に対する可能な説明は、Einsteinを含む全ての相対性
 理論物理学者が一つの系から測定した慣性速度の他者に関しての同一性を
 誤解していたということであることである


と言明されています。彼は、それについて、

 このような同一性はただ絶対空間のみで正当化される固定参照系(幾何学的
 性質を有する物理的実体)なしで、「空間は速度に対して対称である」という
 のは無意味である


とし、Einsteinを含む全ての相対性理論物理学者はそれを理解してこなかったと批判されています。

私は著者のpostulate17に対するこの主張は合理的・論理的であると考えますし、逆にEinsteinや、
Einsteniansの考え方・説明は矛盾を含む一貫性に欠けた非合理的なものと感じています。むしろ
そこに考えが至らないことが私には不思議でなりません。論理的・合理的な反論があるなら是非
聞きたいです(そういうのを目にしたことはありません。大抵は「無視」を決め込んでいます)。

著者はこのpostulate17の結論として以下とされています。

 ・1905年に明示的に述べられ、その後、多くのローレンツ変換の相対論的導出で
  使われて来た
 ・SRTに必要であった
 ・それは絶対空間参照と共通時間を含んでいるので、論理的かつ数学的に無効である
 ・実験証明されていない


--------------------------------------------------------------------
postulate18 :「慣性速度の関数としての変換の未知定数(transformation's
unknown constant)
の仮定(postulate)

--------------------------------------------------------------------
[observed by]
Robert J. Buenker -"The Clock Riddle and Einstein's Third Postulate of Special Relativity". 2011

関連するEinsteinの言葉:

 "[...]a is a function φ(v)[...]In the equations of transformation
 which have been developed there enters an unknown function
 φ of v, which we will now determine.
"
 「[...]aは関数φ(v)である[...]展開された変換式に置いて、今決定しようと
 しているvの未知の関数φが入っている


Robert J. Buenkerは、ローレンツ変換に導く自分の計算の中で、Einsteinが未知関数φ(v)を呼
び出した意味合いを詳細に解析したそうです。
著者は、主要な論題は、

 なぜ、Einsteinは関数φを速度のみに依存するとしたかを説明していない

事実であると述べられています。そして、

 このようなφ(v)とτ(x', y, z, t)はEinsteinが発明したものであり、
 論理的な説明も実験実証もなしで、単にローレンツ変換の数学
 的計算をでっちあげるためだけに
相対性理論学者によって当然
 のことととられていることは明白である。


と論文では枠囲いで色字を使って強烈な批判をされています。
これについては我が意を得たりで全面的賛同します。

著者はこのpostulate18に対して次のように結論づけています。

 ・1905年の導入で明示的に述べられ、相対性理論学者の仕事で当然のように採用された
 ・SRTで必要である
 ・それは異なるタイプの量間の強制的関係であるので論理的にも数学的にも無効である
 ・実験的に証明されていない


--------------------------------------------------------------------
postulate19 :「二つの任意の系の加速後の機械的等価性(post-acceleration
          mechanical equivalence)
の仮定(postulate)

--------------------------------------------------------------------
[observed by]
Valentin Danci[著者自身]

関連するEinsteinの言葉:

 "We now imagine the axis of the rod lying along the axis of x
 of the stationary system of co-ordinates, and that a uniform
 motion of parallel translation with velocity v along the axis
 of x in the direction of increasing x is then imparted to the
 rod.
[...] Now to the origin of one of the two systems (k) let
 a constant velocity v be imparted in the direction of the
 increasing x of the other stationary system (K)
"
 「今、静止座標系のx軸に沿っておかれている棒の軸を想定し、その
 とき、x軸に沿ってxの増大方向の速度vでの均一並進運動が棒に与
 えられたと想定しよう。
[...]今、二つの系の一つ(k)の原点に対して
 一定速度vが静止系(K)のxの増大方向に与えられたとしよう。


これについて、著者は、

 Einsteinは、運動の状態は、「均一の並進運動」はその系を加速せずには系に
 与えることはできないと言うことを意味する加速なしでは変化できないという事
 実を無視した。加わる力なしでは加速は可能ではないので、我々は、もし系が
 運動状態にあるなら、それは、その中で最早慣性系ではないフェーズを通って
 進んでいるのである


と「誤り」を指摘し、更に、

 これに関する大きな論点は、第三の静止系からそれぞれ異なる加速度を持って
 離れる運動状態にセットされている同一の系は全ての力学的、光学的、電気動
 力学的実験を同一になすことができることを示す実験的証拠がないということ
 である


と述べ、「むしろ逆に、それぞれが加速フェーズで蓄積された異なる慣性エネルギーにより、物理
学のいくつかの実験は、加速が終わった後、二つの系で異なる」として、このpostulate自体に否
定的見解を示されています。

一方、Einsteinはというと、1910年の記述で、実験的証拠もなしで

 "The laws governing natural phenomena are independent
 of the state of motion of the coordinate system with
 respect to which the phenomena are observed, provided
 that this system is not in accelerated motion
"
 「自然現象を支配する法則は、もしこの系が加速運動していない
 なら、その現象が観測されるものに関する座標系の運動状態には独立である


とし、更に、1910年のテキストの中で、

 "[...]From now on we will consider only coordinate systems
 in nonaccelerated motion
"
 「今後、我々は非加速度運動[状態の]座標系の身を考えるつもりで
 ある


として、彼の論理から加速度運動を含めることを除外してしまっているにも係らず、同じテキスト
内で、

 "One accelerates the motion of an observer furnished with
 a measuring rod until he attains the velocity v
"
 「人は、彼が速度vを得るまで、測定棒を備え付けた観測者の運動を
 加速する


などと矛盾した論法を用いていることを著者は批判されています。そして、

 SRTの数学的関係の最初の例示において加速が考慮される論議は、それが
 複数のパラドックスの発生源であるので重要である


とされ、次の二つを挙げておられます。

kとK系に不均一加速が適用された場合
 両者は等価とならず、それらの一方が特権的になる−「なぜ、一つの慣性系が他の全ての慣
 性系に対して特権的かつ選ばれるのか」についての有効な説明が必要であることを意味する

 これは、物理学の同じ法則が二つの慣性系で有効であると主張する相対性原理に矛盾する非
 対称時計のパラドックス(所謂「双子のパラドックス」)を解くことである

kとK系に均一加速が適用された場合
 ローレンツ変換が派生した後、両方の系は互いの他の空間と時間について同じ値と計算する
 がいずれの値もそれ自身の座標系内でそれぞれ各々が実際に測定するものとは等しくないこ
 とが暗示される

 これは、SRTの例示から無視されることができるけれども、物理的現実性に基づく論理的
 解なしでの数学的には矛盾する対称時計のパラドックスを暗示している

著者はこのpostulate19に対して次の結論を示されています。

 ・1905年の導入テキストそしてその後のテキストにおいて明確に述べているが、
  postulateと表記しなかった
 ・続く相対性理論のテキスト内で再度述べられた
 ・このpostulateの欠落はSRTの第一postulateに矛盾する
 ・このpostulateの存在が対称時計・長さのパラドックスの基本になっている
 ・論理的に無効である
 ・実証証明されていない:不等速加速された二つの系は等価でない一方、等速
  加速された系はローレンツ変換を必要としない。それゆえ、異なる、そして
  特殊相対性理論を正しくなく不要であることを示す物理学が現れる。


綿々と引用してきました。詳細が書かれていなくて、私自身これだけでは理解できていない−そ
れゆえ論評できない−ものも複数ありますが、一部は著者が別のウェブ論文を出されていますの
で読んでみるつもりです。そして、納得できるところがあれば別途引用紹介するつもりです。

尚、最後に「結論」として、EinsteinのSRTは、命令的仮定を要求しているとして、再度、これら19
個のpostulateをそれそれ1センテンスで纏めたものを記載されていますので、引用しておきます
(下手な和訳ですm(__)m)

1.物理学の法則は全ての慣性系で同じでなければならない

2.速度cは不変でなければならない

3.速度vは不変でなければならない

4.長さ単位は静止系の物体に対して時間的に一定でなければならない

5.長さの単位は全ての慣性系で同一であらねばならない

6.時間の単位は全空間を通して同一でなければならない

7.空間の異なる点に対して共通時間があらねばならない

8.時計を同期化するのは唯一の方法だけあらねばならない

9.時計を同期化するため、人はIRFの二点間の光の往復推定時間のみを使わなければならない

10.時計同期化の上記の定義は普遍的に妥当であらねばならない

11.時計同期化の上記の定義は他動的でなければならない

12.空間は複数回測定を許さなければならない

13.空間は一つであり、LTを導出する前は均一、導出後は不均一であらねばならない

14.ローレンツ変換(LT)の任意の計算はX軸に対して同じ符号を仮定しなければならない

15.LTの任意の計算は、空間・時間の同じ原点をただ一つだけもたねばならない

16.LTの任意の計算は、初期はガリレイ変換が妥当であるとし、その後では無視しなければならない

17.EinsteinのLTの導出計算に置いてτはx',y,z,tの関数であらねばならない

18.EinsteinのLTの導出計算に置いてΦはvの関数であらねばならない

19.任意の二つの慣性系は、加速の時系列にも係らず、機械的に等価であらねばならない


そんなこと言っていないというなら、是非、もう一度前述を見てくださいm(__)m
SRT(特殊相対性理論)というのはそういう理論なんです。自ら発明したまたは概念の独自解釈
(多くはあとづも説明)ないしは曖昧なものをその土台として、実証実験なしで自己知識を流用して
作り上げたものであり、そこには十分な論理的綿密さに欠け、かつ大局的な見方をしていないた
めあちこちに矛盾が潜んでいるそういうものであることを洗い出した論文だと思いましたので引用
紹介しました。

 ('17/6)

目次に戻る
次へ