『知ることの最大の障害』

ネットサーフィンしていましたら、名言集というのがあり、そこに、

 「知ることへの最大の障害は、無知ではなく知っている
 という思いこみである」

 〜ダニエル・J・ブアスティン(米国の歴史家・法学者・弁護士、1914〜)

というのがありました。

本コーナーで手変え品変え批判してきた「科学界」のあり方・考え方を形の上で痛切に揶揄
しているものであり、文字通り「名言」だと思います。
実は、この名言は名言集から見つけてきたわけではなく、ネットサーフィンしていましたら、
例の「ピロリ菌」(実は、私はかつて十二指腸潰瘍が高じて胃潰瘍になったことがあり、ひと
昔なら手術だったらしいのですが、いい薬ができたということで薬で治した経験があり、そ
の延長上でピロリ菌退治の投薬治療をしたことで、この菌の名前を知ったのでした)の発見
でノーベル生理学・医学賞を受賞されたバリー・マーシャルという方の講演内容とそれに対
する賛助コメントを目にし、その賛助コメントに上記の名言が引用されていたのでした。

最初、論文は常識に反するという当時の科学者の思い込みでリジェクトされてしまったよう
です。「酸性の「胃酸」のある胃の中でそんな菌が生きておれるはずがない」という常識・思
い込みからのことだったようです。

まさに、「酸の中で生きられるはずがない」という知見(「知っていること」)が論文を間違い扱
いしてリジェクトしたことに繋がったのでしょうが、マーシャル博士は、そういうことを知らな
かったわけではなく、ご自分たちでその存在を実証観測されたからこそ、論文化されたわけ
です。

色々と内外サイトを当たりますと、こうやって、「既存の知見に反する」としてリジェクトされて
しまい、場合によっては、研究自体抑圧(suppressed)されてしまって日の目を見ずに終わっ
ているのも多々あるのがよくわかります。「幸運にも日の目を見たものだけが残れている」

ネット見てましたら、「常識」は理由があって「常識」になったのだというような言い訳みたい
なことを反論か何かか知りませんが書いているのを目にしましたが(googleのabstract見た
だけ(^^;)そういう発想自体に私は大きな反発を覚えてしまいます。もし、この方が科学者な
ら、一生画期的・独創的な発見などできない方だろうと失礼ながら思ってしまいます。「無
知」を攻撃している方もいました。
そういう方には、前にも引用しました寺田寅彦さん(科学随筆家で有名ですけど、東大物理
学科金時計組の立派な科学者でした)の言葉を再び捧げておきます。

 頭がよくて、そうして、自分を頭がいいと思い利口だと
 思う人は先生にはなれても科学者にはなれない。


そして、もう一つ、知識人とエセ知識人(Intellectuals And Pseudo-Intellectuals)で紹介した
海外サイトにあった主張の一部

 The intellectual is willing to admit that what he does not know
  is far greater than what he knows;the pseudo claims to know
  as much as can be known about the subject under consideration.

 (賢者は、彼が知っていることより知らないことの方が多いことを認めるのに
 やぶさかでない;エセは考慮中の課題について知ることができる限り知って
 いると主張する)


も進呈しておきます。
 ('16/10)

目次に戻る