ネットに見られる強い「科学者信奉」@

ネットで「正統科学」と「まともな科学者」という言葉を目にしました。
直接そのようなことは言わなくても、間違いなくそういう意識を持ってい
る方々が多数おられるのは間違いないでしょう。
そして、そういう方々に共通なのは、「我こそは『正統科学』を正しく理
解できている」という強い自負心です。ですから、反対論や「誤解してい
る」と彼らが思う言説を提起する方々が「阿呆」に見えて仕方がないの
でしょう。

しかしながら、そういう方には是非、下記についてのご意見を賜りたい
のです。これは前にも触れたことがあったと思いますが。

書評:「背信の科学者たち」
少し引用しますと、まず、冒頭で、
 「伝統的な科学観によれば、科学は厳密に論理的な過程であり、
 客観性こそ科学研究に対する基本的な態度
である。科学者の主
 張は同僚科学者による審査や追試を通じて厳しくチェックされ、
 あらゆる種類の誤りはこの自己検証的な科学の体系から容赦な
 く排除される」と一般には考えられてきた。

とあります。

これこそ、まさに、ネットにおける上記のような言説態度を示されてい
る方々が強く信じている「科学者信仰」そのものの気がします。
実にそのまま言っている方々も多数いらっしゃいますから。

しかしながら、アメリカの二人の科学ジャーナリストが論文捏造事件
に鑑み、この欺瞞がその科学者個人の問題ではなく、科学そのもの
 に内在する一般的な特質ではないかと疑いはじめ、多くの欺瞞が
なぜ科学界になんの疑念もなく受け入れられたのかを検証した。
その結論は、
 「『科学とは通常考えられている姿とはほとんど似ても似つかない
 もの』であり、『新しい知識を獲得するとき、科学者は論理と客観
 性だけによって導かれるのではなく、レトリック・宣伝・個人的偏
 見といった非合理的な要因にも左右されている
』というものであ
 った。」

とのことです。

更にそこで述べられている重大なことを以下に示します。

 @プトレマイオス、ガリレオ、ダーウィン、ニュートン、メンデル。
  科学の各分野における巨星たちも例外ではなかった。
  著名な科学者たちが自己の学説を証明する為に実験データ
  に手を加えてきた。

 A科学における学説の根本的な転換は、論理と客観性に基づ<
  公正な論争によって行われるのではなく、多くの科学者がより
  事実を合理的に説明する新しい学説が世に現れても、旧来の
  学説に固執し、新しい学説を科学的な検証作業によって検討
  する作業すら試みることなく否定するという、極めて思想的な
  偏見に基づいて行動する。

ということなどが実例を示して書かれているようです。
@には驚かされました。他での情報ですが、油滴の実験のミリカ
ンも実験データで採用したデータ数より捨てたデータ数の方が多
かったとのことです。

ネット見てますと、クーンのパラダイム論が誤解されている、そし
て当時反発した科学者は誤解に基づいて反発しただけだと御自
分の解釈が真実であるかのように論じている方がおられますけ
ど(後世のしかも英語を母国語としない東洋の小国の人間がこ
のような断定するのはきちんとした証拠があっての言説なのか
自分だけの思い込みか不明確なんですが)まさにこれこそクー
ンのパラダイム論にも結びついている気がしているのは私だけ
でしょうか?

ちなみに米国の科学ジャーナリストというのは大変失礼ながら
日本のそれとは雲泥の差で、博士号有している方が多数いらっ
しゃるようです(取得自体も日本より厳しいのではないでしょうか
?)。日本での基準で見てはいけないと思います。

こういう話を聞き、最近日本であったCO2温暖化説反対論文の
論文集掲載拒否への訴訟問題を考えれば、冒頭で述べたネット
に溢れる『科学者信仰』がいかに滑稽なものか明白な感がして
います。
こういうのを見れば、ネットで多々見受けられるところの、

 「『正統科学』は多くの学者の切磋琢磨に耐えてきたもので
  正しいのだ」


という、再三指摘しているように「水戸黄門の印篭」みたいに掲
げるだけの論調には反発こそすれ、私にとっては全く説得力は
ゼロです。ネットや本まで出されている反対論者の方々も同じ
でしょうし、それを目にして「自分が間違っていた」と「正統科学」
に戻る人もほとんどいないのではないかと思います。洗脳され
やすい方を除けば。そういう、「専門家が正しいと結論つけた
ものであるから、素人の下々は理解できなくてもそれに従うの
が正しい態度だ」と言う独善的で傲慢な言説は反発を招くだけ
ですから、控えた方がよいと思いますよ。
上には更に、

 科学における新しい発見の多くは、その分野の権威者や
 その系列に属する科学者の中から現れるのではなく、そ
 の学問分野における他分野からの新参者や、主流の学
 説の信奉者ではない、学会の傍流から生まれると言う事
 実

も例を上げて示されているそうですよ。こういう方々は前述の
ネットで云う所の「まともな科学者」の範疇には入れてもらえな
い方々何でしょうね。「まともな科学者」というのはその「正統
理論」に忠実な専門家を指しているのでしょうから。

私は別に「素人」が正しいと主張しているわけではありません。
私にとって、納得できるか否か(正しいかどうかは別です)は、
「正統科学」かそうでないか、「まともな科学者」が正しいとして
いるか否かではなく


 私自身が自分の考える意味で「論理的」「合理的」であると
 納得できるか否か


につきます。だからこそ、「正統科学」のうちの『量子力学』
(場の量子論は除く)はある程度説得力があるゆえに今のとこ
ろ反対をしていない(解釈が不十分な気はしていますが)ので
す。教科書で詳しく勉強して余計その感を強くしています。


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