電磁気学についての自己の不明と教科書説明の混迷(2)(’13/7)

(前にEH対応とEB対応について書いたものを抹消して全面書き換えしてます)
この45年前くらいに購入した古い市販教科書ですが、電界関連では最初の4つの章
で詳述されており、読んでいてやっとこさ磁気に関する第五章に辿りつきました。
タイトルは『静磁界と磁性体』とあります。

古いですけど、どうやら既にE,B対応が本質的という考えがあり、その上で磁気に関
するクーロンの法則(クーロンは電気に関するクーロンの法則に引き続き、細長い磁石
を使っての磁気に関するクーロンの法則を実験観測したそうですが、電気に関する研
究は引き続き進んだのに対し、磁気に関する研究はその後長い間なされなかったそう
です。)を現象論的法則と認め、『静電界』に対応した『静磁界』という概念(磁界は電
流が元とされており、また、未だモノポールは発見されていないので、これはあくまで
現象論を純仮想的な概念で説明したものでしょう)の理論説明がE・B対応の立場から
なされています。ただ、最初、前書きを十分読まずにいたため、この著者の意図が十分
理解できずに出てきた式を見た時、その形にすごく驚いてしまいました(^_^;)。

まず、最初にでてきたクーロンの法則が、

なんと、透磁率μが分子に来ています。
私の記憶では静電界の誘電率と同様、透磁率は分母に入るとあり、ネット上でもやはり
この磁気に関するクーロンの法則は

でした。
そして、そこから出てくる磁界Hが、この教科書では

これも一般的には

ですよね。
電界の学んだ後でこういう式を見せられば、最初は戸惑いを覚えませんか?(私だけ??)
せがれの示唆と小さく書かれた脚注でやっとこさわかりました(^_^;)。
あったり前のこんこんちきなんですけど、mの単位が両者で異なっているんですよね。
ま、このmっていうのも人為的な概念ですが・・・電荷q[C]とは異なり、磁界は単極(モノ
ポール)が今のところ未発見ですから、今のところでは『磁荷』(WORDの漢字変換では
出てきません。一般的用語ではないからでしょうね。私は『磁荷』というより、クーロンの
実験の方法から見て、この本のmは『磁極の強さ』という用語の方がベターな気がしま
すけどね。英語はpole strengthとあります)は人為的仮想的概念ですから単位の統一
性もないのでしょう。この教科書のmの単位は[A・m]であるのに対し、一般的な式は
[Wb]なんですね。
まったく「磁気」についての知識が白紙の方がこの両者を見た時、どのように感じるで
しょうか?形式的なE・H対応の式を見た人は、静電界における電荷の単位が[C]とさ
れているのと同様に、磁荷の単位が[Wb]と名付けられたと気にしないで思うのではな
いでしょうか?私は今更ながら、ここで素朴に「えっ?なんで磁荷の単位が磁束の単位
と同じなの?」と当初は思ってしまいました(^_^;)。物理イメージが結び付かなかったから
です。結果的に単位換算でそうなるというのは静電界であまり出てこない電束の単位が
[C]となるのと同じというのはわかりましたけど・・・これも合わせて未だにぴんとこない
というのが実態です(^_^;)。数式のあやじゃないのかって・・・

ま、静電界ではEの単位は[V/m]、誘電率の単位は[F/m]と電界の式だけ見ていて
は単位系の関係は直接理解できないのと同じと考えれば、E・H対応での磁界Hの式で
Hの単位が[A/m]、透磁率の単位が[H/m]、磁荷の単位が[Wb]というのは直接理
解できないのは同じですから変に悩む事はないでしょうけどね。

実は、昨日まで、上記の式はそのようにうまく現在の説明につなげるために著者が独自
で導入したものだろうと思い込んでいたのですが、ネットで最初の式と背景説明をした
サイトを発見しました。改めて、
  従来のFやHで透磁率を分母に持ってくる式の体系は「形式的に対応させた」
  E・H対応のものであり、この教科書の式の体系はE・B対応のものである

ということを認識しました。せがれの持っている電気学会の教科書はE・B対応を唄って
いて電流から入っていますのでE・B対応というのはそういう構成になっていると思いこ
んでいたための誤解でした。

ま、初めて電磁気学を学んでいて、この磁気についたとき、冒頭から磁界の単位は[A/m]
磁極の単位は[A・m]だなどと言われると、「なんで??」というような疑問が湧くと思い
ますが、電磁気学など知らなくても電流[A]は大抵知っているので、「磁界は電流に起
因」という説明をされれば、「だからここにAが出てくるんだろうな」というくらいは理解で
きます。そして、磁気に関するクーロンの法則の式の係数部分(μ/4π)は磁気の場合
はそういう係数になるのだろうと思ってしまえばあまり疑問は湧いてこないかもしれません。
しかしながら、磁界の強さの式はどうでしょうか?
電界の強さは電荷qが作る電界中に単位電荷を置いた時、この単位電荷に加わる力
と定義されています。

そして、電荷量q[C]の電荷に加わる力は

としています。
一方、形式的に見たEH対応の場合の上記の式は、磁界の強さは磁極の強さmの磁荷
による磁界中に単位磁荷を置いた時、この単位磁荷に加わる力という定義で理解できる
でしょう(勿論、磁荷というのはないじゃないかという話は別にしての話ですが)。
そのときは、磁極の強さm[Wb]の磁荷に加わる力は

となることは容易に理解できます。
しかるに、この本はEB対応系で説明されていて、「クーロン力の1/μを磁界の強さと言う
とさら〜っと書かれています、そして、磁極の強さm[Wb]の磁荷に加わる力は

とこれまたさら〜っと書かれています。確かに単位系を考えればそうなるのですけど、初学
者は「なぜ、磁界の場合は電界と異なり、クーロン力の1/μを磁界の強さと言うのか?」
という疑問を感じる人もいるのではないでしょうか?「そういう定義なんだ」で納得できてしま
う、あまり真剣に考えない人も多いのかもしれませんが。今の私だったら悩むかもしれませ
んね。そもそも透磁率は何?その透磁率でクーロン力を除するってどういうことなの?って
いうわけです。要するにすごく『不自然』な説明になっている感がしてなりません。教科書
執筆者によっては磁場(磁界)と書いているものもあるそうです。しかしながらネットでは
E・H対応でもE・B対応でもH,Bは同じものと言っているサイトもいくつもありました。
けれでも、上の定義を見る限り、E・H対応ののHとE・B対応のHは定義自体が異なってい
のです。mの単位が違うからという弁解があるかもしれませんが、定義自体にはそういう
単位は示されておらず、共に[N]という単位のクーロン力を基準にした定義であり、H自体
の単位は共に[A/m]なのです。一体全体、E・B対応主張の方達にとってHって何ものなん
でしょうか??補助的な概念にすぎないからつじつまわせで説明しておけばそれでよいと
いう程度の代物なのでしょうか?少なくとも私は「クーロン力の1/μ」ということの物理的
イメージを描くことが全くできません。できなくてもよい、単なる定義にすぎないということな
のでしょうか?もしそうであればそういう風に書いて貰いたいですね。それでも納得できま
せんけどね(;一_一)


さて、この教科書では、静磁界という概念から静電界同様、電位に対応した『磁位』とい
う概念を導入しています。記号としてはΦに右上添え字「*」を付けて表しています。

そして、電位同様、磁荷の体積分布密度という概念を導入してポアソン方程式、ラプラス
方程式を導いています。
非常におもしろいのはその単位で、[A]なんですね。電位の単位は[V]でした。

さて、磁界はN,S極があり、まさに双極子を考えるにふさわしいですから、当然ながら、
電気双極子の概念を敷衍して『磁気双極子』を定義しています。drは+mと-mの間の
微小距離です。単位は[A/m]でHの単位と同一となります。

そして、この教科書では続いて更に、『帯磁の強さ(intensity of magnetization)』という
概念が導入されています。あまりなじみのない用語ですよね。英語の直訳かな?

誘電体における(分極ベクトル/単位体積当たりの電気双極子モーメントベクトル)
に対応するもので、単位体積当たりの磁気双極子モーメントベクトルです。

ところで、この教科書、以上の基礎的な事項の説明の項までにはあの『』は全く出て
きません。出てくるのは5.5項「磁性体と磁気誘導」というところの途中なんですね。
この教科書では透磁率が真空の透磁率と異なるものを磁性体と定義していて、元から
有している永久磁化と外部磁界の中においたときに生ずる誘導磁界が合成されるとい
う説明がなされていて、具体的には前述の帯磁の強さを用いて、合成の帯磁の強さ


としています。
このによる任意の点(x,y,z)における磁位は

となります。ここで、

磁性体内ではポアソン方程式が成立し、

となります。一方、外部磁界に対してはラプラス方程式から

となり、磁性体内の合成磁界に対して、

              ・・・@
となります。ここまでは理解できました。で、問題は次です。
ここで、突然、

が出てくるのです。そして、磁気誘導(magnetic induction)と称するとあります。
しかし、@式から出てくるのは、

だけですよね?それなのに、なんの前触れも補足説明も無く、突然真空中の透磁率μ0を
付けた上式が記載されているのです。
確かに真空の透磁率μ0は一定ですし、磁性体を外部磁界のある真空中に置いた時、この
磁性体の存在は、真空中の磁性体に相当する部分の閉曲面Sで囲まれた体積Vのところ
がS上で面密度ω*、V内で体積密度ρ*となっていることに相当するため真空中の透磁率
というのは納得でき、上記より最後の式(の発散が0)は当然導出されます。
ですが、ここにはどういういきさつでという概念が出てきたのかの説明がなく有る意味、唐
突の飛躍的な説明となっているんです。

(1)で述べましたように、(誘)電束のときは、そこまでの式の展開の中で、

が導出され、ここには既に真空中の誘電率ε0が入っているのに対し、前述の式の中には
どこにもμ0は入っていないのです。

結局、E・B対応で説明し尽くそうというところでこういう不自然な飛躍的説明が必要になっ
てしまっているのではないでしょうか?
旧来のE・H対応で理論展開したとき、単位系から見ますと、上記[A/m]は[Wb/m2]とな
ります。そして、磁性体内でのポアソン方程式から

となりますので、合成磁界に対しては

となり、変形すれば

となるわけです。この( )内の

の単位は[Wb/m2]となるのです。これなら、これを例えば

のように置くのは自然の流れですよね。のときと同様ですから。
尚、[Wb/m2]単位のときの上記Mi+M0は一般には磁化力で表されています。
ところで、これもなぜを『磁気誘導』などと称するのでしょうか?(1)で触れましたよ
うにを『電気変位』と呼称するときのε0の物理的意義が理解できなかったように
μ0の物理的意義が理解できません。

こちらも力線を考えてそれを磁束と称し、磁束密度と称していて、 が『電気変位』
より『(誘)電束密度』の呼称の方が一般的であるのと同様、は『磁気誘導』よりもこ
の『磁束密度』の呼称の方が一般的ですね。

さて、電束とは違い、こちら『磁束』は記号Φがよく数式的にも用いられ、単位[Wb]ま
で与えられていて電界の場合と様相を異にしています。
そして、電束密度は仮想的なものという説明をネットで多く目にしますが、磁気の場合
はHよりBが本質的とされて現在の主流はE・B対応とされています。そして、それが
教科書執筆者の思考による混乱を招いていると思うのです。

前述のように、形式的なE・H対応での数式展開においては磁性体内で

となるのは前述のように

とおいたときです。そして、磁性体の外でははこの式の磁化力の項を0とおいた
μ0となるだけで前述のの発散が0というのはそのまま成立します。
その意味で、という思想が出てきたのは理解できます。
いずれにしろ、そもそもは形式的なE・H対応での静磁界の論理展開から、HやB
が定義され、の関係式

が今でも使われているわけです。
ここで、

です。

しかし、私はここで一つ、E・B対応を強調される方々(ネット見ていると温度差が感じ
られますけど)に問いたいのは、強磁性体の存在なんですね。
上のBとHの関係式は強磁性体では一価の関係式では無いということです。
透磁率μ(すなわち比透磁率、結局は比磁化率)がHの関数であり、それは一律の
式があるわけではなく、物質によりまた温度により全然異なるわけです。

だからこそ、物性論の方ではHが排除できないのだと思うのです。そして電気機械の
設計ではこの関係の図が使用されているのです。

ただ、このBとHの間を結ぶμというのをなぜ「透磁率」と称するのか調べたのですが
よくわかりませんでした。ひょっとすると、

という式からの対応でしょうか?これは電流密度導電率σと電界の積で与えら
れるのに対応して、磁束密度と磁界を結ぶものであり、σは電流の通しやすさで
すから、これに式的に対応するμを磁束の通しやすさという意味で透磁率と称してい
るのでしょうか?誘電率と透磁率では物理的概念が異なるので気になりました。
要するに、磁束密度は電流密度に対応した概念という考え方ですが・・・。電束密度
に対応させると、「透磁率」という呼称には違和感を感じてしまうのです。

ま、以上は磁性体内部のミクロな状態がどうかというのではなく、マクロ的な静磁界
での考え方に基づく論理ではありますが。

一方、磁界は電流と関係している事が実験で見出され、そちらからの研究も進められ
たことと、未だモノポールというのが発見されていないことがE・B対応が主流派に
なっている理由ですけど、元を忘れてBを基本に説明しようとするから不自然な飛躍
の説明になってしまっているのではないでしょうか?
私はHって何なのかをきちんと明確にしなければいけないと思います。物性論ではH
が捨てられないというのはE・B対応派のHのどこからも異論が出ないきちんとした
整合性のある概念を示さないからだろうと思います。単に補正的だからという限り、
BH特性は無くならないでしょう。そして、ネットには別の立場の方の考え方が提示
されていました。その方によれば、なんと、あのMaxwellは「EとHは極性ベクトル、
DとBは軸性ベクトル」だと主張していたそうです。こういう分類をするなら、HはBの
補完的概念ではなくBと独立した物理量になりますよね。

いずれにしろ、1985年に直接実証試験で量子力学からの推論のAB効果の実証試
験の中で永年、計算の便利さのためだけの仮想的なものと思われてきたベクトルポ
テンシャルの実在性が証明された今、より本質的なものはこのベクトルポテンシャ
ルということになります。直接このベクトルポテンシャルの値を測定することはで
きませんが、このベクトルポテンシャルから、その時間的変化が電界Eに、回転
(rotation)が磁束密度Bという形の現象として顕現している(19世紀に既にMaxwell
が考えていたイメージ)ものというだけということになります。
そして、Hは上記式で透磁率を介してBと関係しているのみならず、変位電流という
考え方で電束密度したがって電界とも関係している存在なわけです。

そう言う意味で、あまり、E・B対応を強調し過ぎるのは真の本質を忘れているので
はないかと思います。だから、そればかり強調してこの本のような論理展開すると、
と不自然な飛躍が入り込み、初学者は戸惑うばかりです。


ところで、一般には電気力線、電束線、磁力線、磁束線は仮想的なものとされてい
るようで、ネット見てますと、多くの人がどや顔でそう書いています。

しかしながら、一方で、電子の二重スリット実験や前述のベクトルポテンシャル実証
観測を電子顕微鏡写真で示された故・外村博士のネットにある論文には、磁力線
写真というのが出てきます。そして、そこには「目に見えない磁力線の可視化を行っ
た」と書かれていました。「仮想線をシュミレーションした」という説明ではありません。
で、調べたのですが、この外村博士の電子ホログラフィ技術による磁力線の電子
顕微鏡写真って一体全体何なのかと調べてみたのですが、明確な説明は見つかり
ませんでした。驚くことに、超電導体におけるピン止め効果に係わる量子化磁束の
写真までアップされていましたが。

以前ネット漁っていた時、どこかの大学の学生の質問と先生のコメント集があり、
その中で、先生のコメントにこの外村博士の磁力線写真のことをちょっと触れていて、
やはりあれはなんだろうか?磁力線は実在するものなのか?というコメントがありま
した。どや顔で「仮想線だ」と断言されている方々に是非あれは何か教えていただき
たいものです。習った事をそのまま真実見たいにどや顔でとうとうとネットで書いてい
る人が多いのですが本当に御自分で考え、調べたのでしょうか?Q&Aの回答でも
そういうのを多々目にしますが、ちょっと本を読めば出てくるような内容をそのままし
たり顔で書かれても質問者がどうしてそういう質問をしたのか理解していないため
結構、質問者が納得されていないのも目にしています。
中にはそれが理解できず、回答者が逆切れしているのを目にしますと馬鹿馬鹿しく
てなりませんね。習った事をそのまま書くだけだから納得されていないのに説得力
0を棚に上げて御自分が科学界の代表みたいな顔して「侮辱している」と逆切れして
いるのも目にしてます。ですから、最近はQ&Aの回答など信用しないことにして
います。

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