Maxwellの方程式(2)
〜オリジナル式に戻るべきでは?〜(’13/3)
製品設計者であるなら皆、世の中にある装置の設計において理論計算値と実
際と間に差が歴然とあることは御承知と思います。要するに、理論計算は元に
はしていても、最後は技術者の技術で製品化しているわけです。
したがって、極端な言い方するならば、理論計算値はあくまで「設計参考値」で
あり、理想形での厳密値でなくて近似値であっても一般的な製品設計に関する
限りにおいては「大勢には影響がない」ということです。
しかしながら、『物の理(ことわり)』を追求する学問である『物理学』では『近似』
では簡単なイメージ把握にはなっても本質面ではまずいのではないかと思う訳
です。
こんな前置きをしたのは、綿々と我々が『Maxwellの方程式』という名称で教
えられてきたものが実はMaxwell自身の提示したオリジナル式とは完全等価で
はないということをネット調べていてわかったからです。Googleのアブストラクト
見ていたら「完全等価」みたいなことを書いている人をみかけましたが、大変失
礼ながらこの方は恐らく事実を御存知ないとしか思えません。
既に(1)でも書きましたが、今、教科書で習うMaxwellの方程式はHeavisideが書
き換えてしまった
Maxwell-Heaviside方程式
であり、Maxwellのオリジナル方程式ではなく、Maxwellの考え方が十分反映さ
れたものではないのです。
「わかりにくいオリジナル式をわかりやすくした」と功績を称える意見が綿々と語
り継がれてきているようですけど、確かに技術者が「イメージ把握と参考理論値
を得られやすい」というメリットは認めるものの、「その程度の存在価値」であり、
真実を見ると、むしろ、重大な物理学の側面を曖昧にしてしまったというかはずし
てしまった、悪く言えば「改ざんした」ものではないでしょうか?
そういう批判がネットにはやはりありました。
Maxwell自身のオリジナルの方程式は『非線形方程式』であるのに対して、現在
「Maxwellの方程式」とされている実は「Maxwell-Heaviside方程式」は『線形方程
式』です。このことは何を意味しているか一目瞭然ですよね。
明らかに両者は対等ではないのです。
Maxwellは数学に長じていたそうですが、また、物理的イメージを描くことにもたけ
ていた方だそうで、天才的発想と深い思索に基づいてMaxwellの方程式を提示し、
更には自ら四元数(クオータニアン)を用いて拡張していたそうですけど、当時の
学者は理解できなかったらしく、ネットで揶揄している方の言葉を用いるとどうやら
物理学には詳しくなかった在野(アマチュア)数学家のHeavisideが特に近年まで
「単なる計算を簡単にしているだけの仮想的存在」と信じられてきたベクトルポテ
ンシャルを毛嫌いしてただ単に「数学的手法」だけで書き直してしまった代物とい
うのが真相でしょう。米国のGibsなどの支持があって、結局、今に至るまで、
「Maxwellの方程式」という名前で綿々と教え続けられ、これから色々な解釈がさ
れてきていますが本当にそれでいいのでしょうか?
Maxwell-Heaviside方程式には本家本元のMaxwellの思想が欠けているの
です。変位電流の思考だけは受け継がれていますが。
ネット見てましたら、今や、Maxwell-Heaviside方程式では説明できず、オリジナル
式で考える必要がある実験観測事実の存在が示されていました。
逆ファラデー現象と言うもので、右からの円偏光と左からの円偏光が合成され
た先に静磁場ができる(ただし、電場はできない)というものだそうです。
すくなくともHevisideが書き換えた理由の一つの「仮想的な存在のベクトルポテン
シャル」を除くということに対しては、(1)でも述べたように、最早、当のベクトル
ポテンシャルが計算のための仮想的な存在ではなく実在していることが実証され
ていますので、これは今になってみれば無意味な行為としか言えません。
ベクトルポテンシャルはスカラーポーテンシャルのように座標変換で消すことはで
きないそうですから、Maxwellのオリジナル式が正しいとするならばそれからする
と、Maxwellが述べていたらしい?
磁束密度はベクトルポテンシャルの渦から生じ、
電場はベクトルポテンシャルの時間変化から
生じる
というのが出てくる結論でしょう。
式を変換したMaxwell-Heviside方程式を見て、
電場から磁場が生じ、磁場から電場が生ずる
などという考え・説明は実は、全くナンセンスなのです。
同じ「数式」でも「数学」と「物理学」は基本的に意味するところが異なるということ
を考えるべきと思うのですが、どうやら、一旦「数式」になると、勝手に「数学」みた
いに一人歩きして「何か深い意味があるのだろう」という解釈論に陥ってしまう傾
向を感じてしまっています。
本質と違う「誤った説明」を書く人がいて、それで「わかったつもり」になっている人
が多い気がしてならないのですね<電磁波。本質的ではないMaxwell-Heaviside方
程式をMaxwellの方程式と思ってそんなもので考えて来たゆえなんでしょうが。
ちなみに、私は部外者で不案内ですが、ネットによりますと、近年の量子力学研究
の世界では場(filed)ではなくポテンシャル(A,φ)がメインとなっているそうです。
元々、『場』というのは見えるわけではなく「作用」からその存在を仮定すると色々な
ことがうまく説明できるという事由でその存在を真理と考えてきたものですけど、ポテ
ンシャルがより本質的なものと実証された今、もしかしたら、説明に使える「解釈論」
の中だけの存在なのかもしれませんね。
今の電磁気学の説明・解釈は例えばB=∇×Aという式を左辺が数学のベクトル解
析手法で右辺の形で表されるという風になっていますけど、右辺のAが実在するとわ
かった今、逆に考えるべきではないかと思います。ローレンツ条件というのもその概
念の変更が必要ではないかと。
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