寺田寅彦さんのこと
ネットに「科学者とあたま」という科学者でありかつ有名な随筆家の寺田寅彦
さんの言葉がありました
(ここ)。
寺田寅彦さんは随筆家として有名ですが、実は東大理学部物理学科主席卒業の秀才
で優れた科学者であることはあまり知られていないような気がしています。
わずか3カ月の差でノーベル賞受賞を逃しているそうですが、戦前にX線に関する優
れた研究をされていたとか。
で、かく言う私自身もそんなことはつい最近知っただけで、むしろこの方ほど、私が主
張している「自然科学」というものの意義を真に御理解されていた方と尊敬していたの
ですから、むしろそういう秀才であったことに逆に驚いています(^_^;)。
そういう方の思考ですから、この言葉は重みが違いますね。
自分で自分を一流学者だと公言し、科学が万能だと思っている傲慢不遜なかの方達と
その支持者の方達に是非反論していただきたいものですなぁ。
-----(色、アンダーラインは私がつけました)
●頭のいい人は、言わば富士のすそ野まで来て、そこから頂上をながめただけで、
それで富士の全体をのみ込んで東京へ引き返すという心配がある。富士はやはり
登ってみなければわからない。
●頭のよい人は、あまりに多く頭の力を過信する恐れがある。その結果として、
自然がわれわれに表示する現象が自分の頭で考えたことと一致しない場合に、
「自然のほうが間違っている」かのように考える恐れがある。まさかそれほど
でなくても、そういったような傾向になる恐れがある。
これでは自然科学は自然の科学でなくなる。
一方でまた自分の思ったような結果が出たときに、それが実は思ったとは別の原因
のために生じた偶然の結果でありはしないかという可能性を吟味するというだいじ
な仕事を忘れる恐れがある。
●頭のいい人は批評家に適するが行為の人にはなりにくい。すべての行為には危険が
伴なうからである。けがを恐れる人は大工にはなれない。失敗をこわがる人は科学者
にはなれない
●頭がよくて、そうして、自分を頭がいいと思い利口だと思う人は先生にはなれても
科学者にはなれない。人間の頭の力の限界を自覚して大自然の前に愚かな赤裸の
自分を投げ出し、そうしてただ大自然の直接の教えにのみ傾聴する覚悟があって、
初めて科学者にはなれるのである。
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まだまだありますがちょこっとだけ引用しました。勿論、寺田は「科学者はあたまが
よくなくてはならない」と言っています。しかし一方で「科学者は頭が悪くなくては
いけない」という一見矛盾したことを述べていて、その神髄を読むと前述のようなこ
とを述べられているのです。
寺田さんに従えば「科学者でない『先生』に過ぎないのに『科学者』だとふんぞり返っ
ている」人がいかに多いかがよくわかりますねぇ。「正統」知識を披露しているだけ
ですからねぇ。
寺田寅彦さんの研究に『金平糖の原理』に関する有名な話があり、私はこれを目に
したときに既にこの方のすごさを感じていました。かなり以前の話です。そういう
思想の方ゆえの研究だったんですねぇ。まさに身近なことへの疑問に正直に真剣に
取り込もうとされた真の『自然科学者』だった方だと思います。単なる秀才じゃなかっ
たんですねぇ。
今のようになかなか実証試験がなされないことをいいことにして、高等数学をいじくり
回して脳内つじつま合わせで「真理だ」と断言したりして悦に入っている現代学者には
是非考えて欲しい名言の数々ですね。
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