工学の世界では
私は工学とは「工業のための学問」と勝手に定義しています。
ともすると理学の応用学みたいな位置づけで考えられがちですけど、現実に
物の設計で使われている工学の世界でも未だにわかっていないことがいかに
多いかです。
設計の基本は不具合をいかに起さず、そしていかに安くてよいものを作るか
に尽きるのですが(これが製造会社が維持発展するための原点です)、実際
にはわかっていないことが多く極めて難しい命題であるということは設計と
言う業務に携わっている方なら皆さん一様に感じられていることと思います。
まずは理論通りの値にはなりません。理論というものは抽象化・理想化され
たものに対してのものですが、実際のものはそういう理想的なものから程遠
いというのが実情です。
多くの製品は一工学だけでなく多くの異なる工学の結晶みたいな存在です。
そしてそれぞれが密接にお互いに関与して問題をより複雑化しています。
技術の進歩に伴い古くから使われてきたものでも次々に新しい環境下にさら
されこれが思いも寄らぬ未経験の不具合に結びつくことも多々あります。
しかし、自社だけの未経験でなく、過去だれも経験したことがないような
問題というのはその原因と対策を考えるとき本当に大変です。
中には中途半端な対策をしたことで終わってしまっていて要因が多過ぎる
として研究を放棄してしまっている不具合部品業界もあり採用している中
間ユーザが自ら研究せざるを得ない・・・自社設計部品でないのに・・・
ものもあるのが工学の世界です。
機械工学の専門家から聞いた話ですが、機械工学の論文は適用できる範囲
が理想的なごく狭いものになっているとのことでそれを信じて拡大解釈し
てそのまま適用しては駄目とのことです。長い間の色々な試験研究に耐えた
ものだけが標準的に採用できる理論だとか。
工学というのは物理や数学とは基本的に違うんですね。寸法には公差がつき
もので、これが私に言わせると理論と実際の間に乖離が出てくるいわば諸悪
の根源ですが現実的にはどうしようもなく受け入れざるをえない現実です。
結局、必ず評価という作業が伴うのが製品の設計なんですね。
残念ながら理論だけではわからないことが多過ぎるのが現実です。結果をい
かに合理的に理解するかに尽きるんですよね。こういう工学の世界にどっぷ
り浸かっていますと、解釈論だけ、仮定を増やして理論の破綻防止のつじつ
まあわせなどというのは全然合理性が見出せなくて信じられないという気に
なるものです。
ところでおまけですが、これも機械の専門家からの受け売りなんですけど、
鉄道のカーブするところで線路には縞目模様ができることがあるのですが、
そしてこれをJR総研の方が30年以上原因解明研究されているそうですけど
未だ未解明のままだそうです。私は専門外ですけど仕事上門前の小僧でいろ
いろ広く浅く知識を吸収してきたんですが、機械工学ってわかっていない所
が多過ぎる気がしています。
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