C.J.ボックス「震える山」(’17/6)
実はずっと前に読んだ小説で、記事を書いたつもりでしたが書いていなかったので・・・
本屋に行けば大抵は何かを買ってくるという輩なのに、リタイヤ後、すっかり出不精になり近隣の
大きくない本屋にしか出かけなくなったため、買わないで帰ることも増え、ま、そんな中であまり読
むことがなかった海外ミステリーも読むようになりました。実は、再び図書館通いを始めて本屋か
らの足も遠のいていますが(^^;
そういう海外ミステリーで、そこの地域への興味も相まって私的には面白かった一冊がこれです。
主人公は、ジョー・ビケットというアメリカ・ワイオミング州猟区管理官。
ちなみに、作者のC.J.ボックス氏は、このワイオミング州で生まれ育ち、自身が狩猟、釣り、乗馬を
好むと言うワイオミング州の州都シャイアン在住で、デビュー作「沈黙の森」(私はまだ読んでいま
せん(^^;)で主要新人賞を独占された方だそうです(読んだ講談社文庫の解説による)。これは彼のシ
リーズ第四弾だそうです。
地図と鉄道線路が好きな私は現在、google map/google earth/street view/YouTubeなどでその
路線を辿ると言う遊びをずっとしてきている(「鉄道がおもしろい」コーナーで紹介してきています)
のですが、その過程でワイオミング州に関しても地図やYouTube映像を見ていて、州都シャイア
ンとか、小学生時代にテレビでやっていた「ララミー牧場」の名と同じララミーという街などを先に
見ていましたので、このワイオミング州と言う州には興味があったのと題名に「山」とあったため
(55歳ころから突然興味が湧いて、山歩きを数年していた−膝を痛めて残念ながらやめてしまっ
ていますが−「山」という単語が出てくると未だに興味が湧きます)この本を手に取ったといういき
さつがありました。
この本を読んで、ワイオミング州について地図とかWikipediaとかYouTubeとかで色々と調べてみ
ました。自然が残るという意味ではすごく素敵な地なんですね。人口はすごく少ない州だそうです。
有名なイエローストーンはこの州にあるんですねぇ。とにかく、ワイオミング州のドライブ展望を、
YouTube映像で見ますと、小説の中に出てくるティートン山脈などは素晴らしい景観ですねぇ。
行けそうもありませんが、とにかく行けなくても今はインターネットで居ながらにしてそういう映像
を楽しめるので私的にはとても楽しいです(^◇^)
さて、主人公の「猟区管理官」という組織はちょろっとネットで調べてみましたが実在組織かどうか
わかりませんでした。どうやら、C.J.ボックスのミステリーシリーズの主人公のようですが。
主人公ジョービケットはトェルヴ・スリープ郡担当の猟区管理官ですが、ずっと大きな担当地域であ
るティトン郡担当の優秀で彼が尊敬していた先輩猟区管理官ウィル・ジョンセンが、彼が最初耳にし
たときとても信じられなかったのですが、なぜか、猟銃で自殺してしまったこと−小説のプロローグ
はそのウィルが大量の肉料理を食べウィスキーをがぶ飲みした後、猟銃を口にくわえるところまで−
自殺は間違いのない事実でした。
彼は、現在、ビッグホーン山脈の東にあるトェルヴ・スリープ郡のサドルストリングという街(実在)
から13kmほど離れた道沿いの州所有の一軒家に、妻・メアリーベスと長女シェリダン、次女ルー
シーとの4人家族で暮らしています。家庭が事務所兼になっていてメアリーベスが助手的に支えて
いる・・・
元々、色々なことがあって、前年度に新しい地区担当希望を出していた・・・彼は、55人いる猟区管
理官の中ではまだNO.44、で、出世のためには転任が必要・・・妻はそれは理解済み。
夫婦仲は良好ですが、たた、妻メアリーベスの母親メッシーは、上昇志向が強く、よりよい条件の夫
―裕福な夫−を求めていて離婚歴3回、そして60代なのに、今回4回目の結婚−裕福で州の与党
議員リーダのパドと−を迎える人で、娘がしがない猟区管理官のジョーと結婚したことが気に入ら
ない。その結婚式において、ジョーは、保安官・マクラナハンからウィル自殺の話を聞かされた・・・
メアリーベスもウィル夫妻とは知り合いの中であり共に「信じられない・・・」
ここで、「保安官」というのが出てくるのですが、私は以前、「保安官」というのは昔の西部劇時代
のものかと長く思っていたのですが、郡警察というのがあり−アメリカは州の下に「郡」がおかれて
いるんですね。日本でいうと「県」のような存在?、大都市は郡には属していないのですが、小都
市は郡所属ですから、郡警察と言うのがあるんですね。−で、そのトップが「保安官」、そして、そ
れは、地方検事と同様、「選挙」で選ばれるようです。トェルヴ・スリープ郡の保安官はバーナム
という人物が長く君臨していましたが、不手際があって新聞に叩かれ、失脚し、マクラハンは前保
安官助手、人物的にはバーナムと変わらない・・・。しかし、このマクラハン、保安官になった途端、
失脚した、元上司のバーナムに冷淡な態度を取り、元々失脚した事件にジョーが絡んでいたため、
そのこともジョー一家への彼の恨みに火を注いだ・・・。正義感溢れるジョーゆえに厄介な人物が
周辺にいて大変ですねぇ。ことあればジョーを首にしたいと直接口にまで出す、局長の後釜を狙っ
ている副局長とか、観察なしで釣りをしていたのをジョーに摘発されて恨みを抱く市長とか(もっと
も市長はあと二か月で引退で、もう既に心ここにあらずですので問題なしらしいですが)・・・
そんな中でのウィルの自殺があり、その担当地区は一時も放置できないところ。それで、ジョーを
買っていて、ジョーも尊敬している直接の上司、No.4で監督官のトレイ・クランプに推薦(事なかれ
主義の局長は彼しか適任者がいないことにショックを受けたらしいですが)され、とにかく臨時担当
としてジョーは赴任を承諾するが、子供の学校の事情と今度の赴任が臨時措置ということで単身
赴任することになりました。で、変な電話が家にかかってくることもあり、友人になった鷹匠で謎の
人物であるネイト・ロマノウスキに留守中の一家の守護を頼んで−ネイトは「ジャクソンはこことは
違う」とジョーに注意を喚起した・・・
ジャクソンは臨時赴任地の事務所がある街です。地図によれば、これも実在の街なんですね。
google mapで見ましたら、サドルストリングからジャクソンまではかなり遠いんですねぇ。どうも、ワ
イオミング州自体、鉄道網自体貧弱で、定期の旅客列車は走っていないようでし、この間は当然
車でしか行けません。この小説では「当たり前に」車での描写がされていて大変興味深かったです。
ジャクソンはワイオミング州では西の方に位置しています。で、サドルストリングからはまず、西に
そびえるビッグホーン山脈を横断していく必要があります。小説内では「ビッグホーン山脈を超え
て西に旅するものには、三つのルートがある」として、国道16号、国道14号、そして国道14号A線
と書かれています。
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関連地図
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ジョーはスイッチバック路を試したいのと広々と広がる盆地を見晴らしたいため、国道14Aを選択
しています。YouTubeにこの道のドライブ映像がありました。標高3000mの所を通るようです。
地図のように、盆地を横切り、また、山岳地帯に入るようです。そして、Yellow Stone公園から
の道と合流します。
西のTiton山脈−グランドティトン公園はYouTube画像で見るとすごい大迫力の眺めなんですね。
で、今度のジョーの担当地域は、ウィルが担当していたノースジャクソン−北米で最も辺鄙な土地
トレイから「広大なエリアに行くには馬に乗るしかない」と言われる・・・
そして厄介なことに、狩猟成功率98%を誇り名高いが御しにくいアウトフィッタ、スモーク・ヴァン・
ホーンの縄張り。それだけでなく、この地には、動物愛護団体、狼愛護主義者、大物開発業者、
政治家、映画スターなどあらゆる「有象無象」の本拠地・・・大変な地ということ。
さすがのタフなウィルもそれでおかしくなってしまったのか・・・半年前から彼の行動に異変が。そ
して離婚まで。
さて、そんな地の臨時担当になった主人公ジョーに何が起きるか・・・
お国柄の違う私にとっては理解しがたいことも多々あるんですが、最後には、なぜウィルが自殺
に追い込まれたのかが判明、あやうくジョーも同じ目になるのを気が付いて・・・・。それにはある
女性の影ながらの援助がありました。
物語は、スモーク・ヴァン・ホーンとジョーとの絡み(スモークが何をしてきたかをジョーがつきと
めて・・・人間臭さが出ています。ちょっと悲しい結末です)、そしてネイルと元保安官バーナムの
絡み・・・。
とにかく、なんとか臨時仕事を終わり、最後には無事家族がいる元の猟区に戻るという話ですが、
正義感の強さが危機を招く−その正義感が己に不都合な連中は反感を抱くが、彼の性格がファ
ンも作る−も、ある意味マッチョ的な彼ゆえにそれを乗り越えたというお話です。
本項はネタバレはこれ以上やめておきます。
映画化すると面白いなと思える作品でした。
(’17/6)
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