ジャッカルの日(’13/10)


ミステリーでなく、「ドキュメントスリラー」とある小説ですが、ここにいれます。
ねたばれモリモリですので、未読の方はご注意くださいm(__)m。

すごく以前に買って読み、また、テレビで映画も見ました、フレデリック・
フォーサイスの『ジャッカルの日
本棚に眠っていたのを再び読みました。私の所有しているのは1980年再版
(初版は1979年発行)の角川文庫の文庫本(購入時定価¥540)です。

表紙
                表紙
表紙
                裏表紙


写真のように表・裏とも赤色の表紙。絵はそれがトレードマークのようになっ
ていた帽子(ドゴールキャップって言われているようですね)の人物=フラン
ス・第五共和制時代の独裁者・ドゴール大統領を表しています。

フレデリック・フォーサイスの作品はあと、『オデッサファイル』というのを読ん
でいます(これも映画化されましたね)が、この『ジャッカルの日』の方が私に
は数段面白かったです。


(以下、ネタバレですm(__)m)

話は、当時、第五共和制を引いてフランス大統領に就任したドゴール将軍が、
仏領だったらしいアルジェリアの民族軍との戦いをやめ、撤退を指向したた
め、反発する軍部内の勢力が作ったOASという過激組織が何回か裏切り者
としてドゴール暗殺を謀ったが失敗したという史実をベースに、最後の手段
としてOASが雇った謎のプロの政治関係殺し屋=コードネーム『ジャッカル』
と暗殺を阻止すべく追うフランス警察のルベル警視との戦いという作者創作
の物語です。

OSAという組織は、小説の中にも書かれていたように、政府のエージェント
が沢山潜り込んでいて、全部ばればれになっていたそうです。最初の方では、
史実である暗殺失敗とその時の実行犯リーダが銃殺刑を受ける話が出てく
るのですが、哀れと言うか、その銃殺刑で死刑にされたリーダ、ジャン=マリ・
バスチャン・チリー中佐は、「フランス人ならこの私に向かって銃を上げるはず
がない」と固く信じていたのに、あっさりと銃殺されてしまった場面がありまし
た。この人は実在の人物だったらしいのですが、狂信的だったんでしょうね。

その後、ドイツに逃げていた組織の幹部であった元大佐のアントーヌ・アルグー
が、フランス政府の秘密組織(アクションサービス)によりドイツ政府の許可な
くドイツからフランスに連れだされて拘束されてしまい、新たに、たたき上げの
ロダン大佐が、OASの作戦主任につきます。

彼は、最早、顔が知られている組織内メンバーでの暗殺は不可能と考え、国
内当局に顔が知られていない外国のプロの殺し屋を雇うことを計画します。
そして、ボディーガードのコワルスキーと滞在していた隠れ家であるオーストリ
アのペンションにモンクレアとカッソンというOSAのメンバーを呼び、計画の説
明と、三人の候補から選ぶ一人の候補を出させます。三人の意見は一致、そ
こにイギリスから候補の殺し屋を呼び、受諾意思と費用を確認するのでした。

要求額は50万ドル(←当時、1$≒¥300くらいでしたから、1億5千万くらい
なんですね。OASメンバーが驚いたくらいですから、もっと高いかと思ってし
まいましたけどね))、前金で25万ドルの要求。この仕事を終えたらもう引退
しなければならないくらいの大仕事だとして。

話はまとまり、計画GO。計画は全て殺し屋一人で決めることになり、OASは
資金調達で次々に銀行強盗。
しかし、OASメンバー4人だけの秘密が、たまたま単独行動したコワルツキー
がアクションサービスの拷問により死の直前に「謳って」しまい、ジャッカルの
存在が当局の知るところとなって、指名されたルベル警視が唯一カロン警部
と共に隠密捜査に乗り出します。個人的なつきあいで数カ国の警察に殺し屋
に関する調査を依頼して・・・。そして、公式記録調査では該当者なしであった
イギリスで、ちょっとした噂話から該当者らしき人間の情報が入ります。そのイ
ギリスではこの隠密捜査が首相の耳に入り、協力もあってジャッカルが企てた
ニセのパスポートの名前が判明してしまいました。既に死んでいるダッカン、
空港で選んでホテルで盗んだデンマーク神父、そして空港でバックごと盗んだ
アメリカ青年のもの。

ところが、最高会議に獅子中の虫あり。ルベル警視を敵視したサンクレア大佐
にOAS組織の女性が命令により近づき、毎日、最高会議で行われたルベル
警視の報告をこのバカ大佐がそれとは知らず怒りでばらしてしまいます。その
情報は速攻でジャッカルに伝えられ、既にフランス領に入り込んだジャッカル
の足取りを追う警察の裏をかき、次々に変装して名前を変えてするりと逃げな
がら、暗殺決行日を待つジャッカル。

欲をかいたパスポート偽造屋、途中で取り行って邸宅に宿泊した夫人などを殺
害します。

結局、盗聴で本人気がつかないまま、サンクレア大佐ルートで情報漏れが起き
ていたことがわかりましたが、ルベル警視らはとうとう決行日までに逮捕できず。
決行日は、毎年何があってもドゴール大統領が国民の前に姿をさらけ出す日。
しかし、ジャッカルは老いた傷痍軍人に化け、松葉つえの筒の中に特別あつら
えのライフルを隠し、厳戒態勢の中、事情を知らない警備の警官をちょろまかし
て、前に一度来て調べておいたおあつらえ向きのアパート最上階の部屋に。
ライフルを組み立て、ドゴールに向けて一発。ところが奇跡か・・・発射直前に
ドゴールが前に立つ国民に口づけするために頭をひょいと下げたため失敗。
寸法制約で連発にできず単発式のため、2発目の玉を込めている所に、たまた
ま警官から傷痍軍人の話を聞きぴ〜んと来てその警官を連れて、ルベル警視
が飛び込んで・・・サブマシンガンを持つ警官はジャッカルに撃ち殺されてしまい
ましたが、ルベル警視はそのサブマシンガンであわやのところでジャッカルを撃
ち、ジャッカルはあえなく一巻の終わり。

で、これで話は終わりません。イギリスではこの殺し屋をカルスロップだとして
住居を調べていたところ、その住居の住民であるカルスロップ本人が出現。
結局、ジャッカルの正体は不明のままということで終わっています。


ドゴール大統領というのは実在の人物でしたし、暗殺などされず引退・大往生
してますから、ジャッカルによる暗殺が失敗に終わることは最初からわかって
いますけど、それでもこれまで大仕事してきたプロの殺し屋という設定ですか
ら、フランス内をルベル警視の追跡から逃げながらパリに向かう道程でハラハ
ラドキドキさせますね(笑)。
そして、著者フォーサイスがどこまで真実でどこからが虚構かについて説明を
していないため、何か、隠匿されているだけで、実際のモデルがあったのでは
ないかなどと思ってしまいます。そう言う意味も含めて初めて読んだときも、
今回、読み直して見ても楽しめた作品でした。



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