『Yの悲劇』(’13/9)(’14/6)
日本の『推理小説』を読む前は所謂『探偵小説』というジャンルが好みで、海外の
ミステリーは主に創元文庫の文庫本も色々と読みました。
海外ミステリーとして、私が面白く印象に強く残ったのは、映画化もされたかの有
名なエルキュール・ポアロ名探偵が出てくる『オリエント急行殺人事件』(鉄道好き
ですのでそれもありますが、『青列車の謎』は私的にはあまり面白くなかった)と、
エラリー・クイーンの表題の『Yの悲劇』でした。
これは、元々はエラリーがバーナビー・ロスという名義で書いた4部作(Xの悲劇、
Yの悲劇、Zの悲劇、ドリルレーン最後の事件)の一つです。
これはドリルレーンという老俳優が名探偵。分析力いまでいうプロファイリングに優
れた人と言う設定。この中で、私がピカイチ面白かったのは表題の『Yの悲劇』でし
た。最も最初に読んだのは『Xの悲劇』でしたが。それ以上に衝撃的でした。
犯人、動機(?)、犯行状況、そして衝撃のラスト。
ちなみにこの『Y』連続雑人が起きるのがヨーク家であったことから付けられた名前
でしょう。4部作の中では最高傑作ではないでしょうか?
もともと、エラリー・クイーン作品はそれほど面白いとは思わず、あまり読んではい
ませんでしたので、別名義のこの作品は驚きでした。
ちなみに『Zの悲劇』はあまり面白くなかったです。エラリーぽくて。
「エラリー・クイーン」というのはいとこ同士の二人の合作だそうですが、こういう
のは藤子不二夫さんもそうですけど、片ほうが亡くなると辛いでしょうね。
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(追記、’14/6)
ひょっとすると、この小説の内容に反感を持たれる方がいるかもしれません。
改めて読み返し、更に、後ろの解説を見ました。とりあえずは解説ではそこまでは
触れていませんが、リアリティ云々という評価をしていた作家もいるようです。
ただ、これを単なる「荒唐無稽な創作」とは思えない自分がいます。
それゆえ、この小説の「怖さ」を感じ、強烈な印象を私に与えた作品なのです。
すなわち、こういうことは現実に起りうる恐れはあるのだと・・・
人間の多くは、人間自体の本質から目をそらしたい、そんな馬鹿なことはあるは
ずがないと考えたりすると思います。だから、「理由」を求めて安心したいという
思いがあるのではないでしょうか?
しかしながら、この小説はそういう思いを打ち砕く結果になっています。
エラリークイーン(実は2人)がどういう意図で書いたかはわかりませんけどね。
私自身の勝手な独断と偏見ですけど、20歳過ぎたとき、日本の所謂「社会派推
理小説」を読んで、それまでの単なる「エンターテイメント」的な、ある意味「荒唐
無稽」な「超人探偵小説」に飽き足らなくなってしまった私にとって、この小説は、
単なる一探偵小説ではないと言う感じ方をしています。その意味で、解説者との
意識のずれを感じました。なぜなら、私にとってはエラリークイーンの他の物は、
超人探偵小説という感がしてきましたから。
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(追記 '18/4)
実は私はずっと以前にこの小説の早川書房版の文庫本を読んだのですが、どこかに
紛れ込んでしまい、この記事を書いた時、再度買いなおしたものです。ですから、
前も同じだったかどうか記憶がないのですが、私の中でこの作品はバーナードロス
名義のものということだけが残っていたのに、エラリークイーン著になっていて、
「あれっ?!」という思いがしたのでした。で、なぜかそのとき読み飛ばしたのか
今更、冒頭にある「再度の読者への公開状」というのを読んでいて、それに関して
書かれているのに気が付きました。いまさらと思って読み飛ばしたのかもしれませ
んが、前に読んだ時も同じだったのかとんと記憶の彼方です。
そこに「『読者への公開状』を読み落とされた場合」の後に()付きで訳者注があり
「本書の初版には、もちろんのことであるが、ここに言う小文『読者への公開状』
は載っていない」とありました。
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