松本清張『砂の器』
これは40年以上前に、それまでの探偵小説から所謂「社会派推理小説」なるもにメイン
を鞍替えして早い時期に光文社カッパノベルズを買って読んだものでもう何回読み返した
かわからないほどお気に入りの小説です。
映画化・ドラマ化がされましたが、私のイメージと違う所も多く、いつもそうなんですが若干
がっかり。ま、でも私的には最初の野村芳太郎監督のものがその中では一番ましでした。
でも、私はこの作品、映画やドラマから入った方達とは全く違う観点でお気に入り小説なん
ですね。映画やドラマはテーマの必然性から、犯人と動機にスポットを当てていますが私は
実は執念で犯人を割り出し追い詰めた今西栄太郎警部補部長刑事に入れ込んでいるのです。
小説では彼の家庭(奥さん、子供、妹など)の話題や庶民的な食卓のおかずまで出てきま
す。初めて読んだ時はまだ20歳になるかなったかの頃で、40歳以上のこの今西刑事は
ずっと年上の人だったんですが、今じゃ私はこの刑事の年よりずっと年寄りになってしまい
ましたけど、私の中ではずっと年上の方として・・・(^_^;)。
小説は長編で分厚い光文社カッパノベルズで1ページが上下二段になっていました。
蒲田の場末のトリスバーからお話が始まります。わくわくしながら読み始めた記憶があり
ます。
それにしても『砂の器』とはぴったりの題名ですね。清張作品の中でも一番、うまく、テーマ
を表している題名じゃないかって私は思うのですが。
映画やドラマでは触れられていませんでしたが、実は、途中まで別に怪しい人物がいて、
なぜか途中から今西刑事は真犯人の方に疑いの目を向けた・・・ある新聞記事を目にして
なぜか今西の手帳には途中から別の名前(結局、真犯人の名前)が記されて。
おっとねたばれになってしまってますねm(__)m。これ以上詳細はやめにしておきますが、
映画を見て自分のイメージと全然違っていたのは秋田県の川でした。あと、有名になり
ましたからいいかなと思いますがJR木次線の「亀嵩」駅はこれで有名になりましたね。今
や、駅舎におさばやさんが併設されているそうです。JR木次線は島根県と岡山県を結ん
でいますが、途中に3段スイッチバックがあってYouTubeに映像がありますね(^◇^)。
「亀嵩」駅は島根県の奥出雲地方です。
ところで、初めて野村芳太郎監督の元で映画化されたときはすごく期待して見ました。
しかし、勿論、私のお気に入りの不要なところ(今西刑事の家庭場面)はばっさりは仕方が
ないものの、丹羽哲郎さんはちょっと「どろくさい」今西警部補部長刑事の役がらには私的にはミス
マッチでした。丹羽さんはすでにキーハンターなどで警視正などもっと上の地位の役をやら
れていましたし、かっこよすぎるんですよね。
そうそう、小説は古い時代の作品ですから、「亀嵩」に行くのに、東京から列車急行「出雲」
(出雲はその後、ブルートレインの寝台特急になり、今や、ルートも異なっている電車寝台
になってしまいましたね)で京都から山陰本線経由で行ってますが、丹羽さんは岡山まで新
幹線で行き、そこから映画化当時あったディーゼル特急の「まつかぜ」で行っているんです
ね。しゃあないといえばしゃぁないのですが、ちょっと残念でした(^_^;)。今ではもう京都から
山陰本線経由で餘部鉄橋通って鳥取・島根まで行く優等列車は昼間にもありませんね。
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