日本の科学ジャーナリズムの限界(2)
〜影響の怖さ〜
ちょっと前に話題をさらった理研の若き女性リーダの手になるSTAP細胞。常識を
破る斬新さゆえ、やっぱり「けちがつけられ」スキャンダル扱い化で葬りさられよ
うとしていますね。確かに我々市井の人間にとっては真偽不明ですし、それを「い
や正しいのを例によって潰されたんだ」と主張しても、それは勝手な「判官びいき」
になる恐れがあるので、推移を見守ってきました。
しかし、あんの常ですね。私が問題視するのは、「手のひら返し」のメディアの/マ
スコミのあり方です。やっぱり、
さんざん持ち上げておいて、たたき落とす
といういつもの手口を露呈しています。
私が「怖い」と思ったのは、4/9に初めてなされた彼女の記者会見の模様報道に
対しての新聞に掲載されていた市民の反応でした。はっきり言って、我々市民は
真相など全くわかりません。どんなものかも皆、報道を通じてしか知りえないわけ
です。そして、最初は「科学報道」であったのが、彼女の生の声の報道などなく、
一方的な「社会部報道」的スキャンダル報道化(真の結論−本当に捏造か論文
が未熟だけだったか−が出ていないうちからすでに「捏造」だろうとか研究とは無
関係な人間関係が週刊誌のスキャンダルネタ化)され、事前にそれが刷り込まれ
ている人達は最初からそういう目−どういう弁明をして逃げようとするのか?−
で見ていますから、当然ながら厳しい意見が出てくるのは必定なのです。「印象
報道」というのはそれだけで市民の考えを誘導する恐れが強いわけで、これも、
同じものだろうと思います。すでに完全に「捏造論文」扱いして「日本の恥」みた
いな勝手な報道までされてきているのです。
なぜ、こうなるのでしょうか?それは、
科学ジャーナリスト/ジャーナリズムが脆弱
だからにほかなりません。すなわち、単に
「官制報道」しかできないから
なのです。
恐らくは、もうこれで、彼女の研究がもし真実であったとしても、御本人自身と共
に歴史の陰に葬り去られてしまうのは間違いないでしょうね。
科学の歴史において、そういうことが多々あったのを知りましたので、そこが一番
私には「怖い」のです。落しこめられてしまった科学者の例もネットで目にしてい
ますし、逆に「権威」のものは大きく報道されないままうやむやにされてしまったの
も目にしていますから。
本コーナーでさんざん批判しているように、「科学者」といえど、「人間」ですので、
その「科学界」がやっている「科学」は綺麗事の世界では無いんですね。ですから、
真の「科学ジャーナリスト」は真実を見る目・きちんと調査する
姿勢が絶対必要
のです。しかしながら、大変失礼ながら、少なくとも日本の科学ジャーナリズムは
ほとんどそういう風にはなっていないとしか思えないのです。
本当に「怖い」です。「出る釘は打たれます」そして、マスコミ/メディアが権威にお
もねてそれを助長しているのです。
これでは、「全く常識からはずれた新発見・研究」は余程の骨太い方でないと制
度的にも社会的にも不可能でしょうね。このことは、
科学の真理を遠ざけてしまう
恐れが十分あるのです。そして、科学の歴史を公平に見ると、そうやって闇に葬
りさられた重要な観測研究結果が多々あるのです。それこそ、地球人類にとって
最大の不幸ですが、多くの一般人はそれを知りません。本当に「怖い」ことです。
('14/4)
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